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COP26で涙ぐんだ議長役のシャーマ氏、あの涙は何を意味していたのだろうか ~ 論語の教え #12

 COP26が閉幕しました。期日内に成果文書をまとめ上げることができず、1日延長してようやく、最終成果文書「グラスゴー気候協定」を採択できたといいます。

 この会議の議長役を務めたのは、前ビジネス相でもあるアロク・シャーマ氏。最終日の全体会議で、会議の合意プロセスについて謝罪し、「本当に申し訳ない」と述べていました。そして、「合意全体を守るためには、不可欠な対応だった」と説明すると、声を詰まらせて涙ぐんだといいます。

イギリスが提出した最終合意案には当初、石炭の使用を「段階的に廃止」するという表現が含まれていた。しかし、合意採択を協議する最後の全体会議でインド代表がこれに反対。「まだ開発目標や飢餓削減に取り組まなくてはならない」発展途上国が、石炭使用や化石燃料への助成金を段階的に廃止すると約束するなどできないと主張した。

インドのこの主張を中国も支持し、各国は最終的に「段階的廃止」ではなく「段階的削減」という表現で合意した。これには、多くの関係者や環境活動家が落胆を示している。(出所:BBC

 会議に参加する人は、それぞれに違う事情と思惑を持っているのでしょう。この会議で合意を得ることの困難さは始まる前から分かっていたのかもしれません。覚悟をもって臨んでも、参加する全員の期待に応えることができないこともあるのでしょう。

 

 

四を絶つ

「子 四(し)を絶つ。意なる毋(なか)れ、必(ひつ)なる毋れ、固なる毋れ、我(が)なる毋れ」と、論語「子罕第九」4 にあります。  

 孔子は、「己の意ばかりになるな」、「決めたことにこだわるな」、「執着するな」、「利己的になるな」、この四つを絶つといいます。

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 渋沢栄一によれば、「意」「必」「固」「我」、この四つが「私」に根ざすと、不道理に働くといいます。言い換えれば、何事を行うにしても必ず道理に適い、徳義に反せず、至公至平であれと諭したといいます。

 COP26で議長役を務めたシャーマ氏は、この四つを見事に絶つことができていたのでしょうか。

 

 

さらに栄一は、「人間には喜、怒、哀、楽、愛、悪、慾の七情があるが、この七情の発動が総てちょうどいい塩梅に叶ふ様にしなければならない」といいます。

世の中には哀しい事があつても悲しい顔をせず、嬉しい事があつても喜んだ顔を見せない人もあるが、これは虚偽である。

聖人は喜ぶ時には悦び、悲しい時には悲しんで、七情の発動が理に適っている。(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

 議長役のシャーマ氏は、あの涙ぐんだ時、どんな感情を抱いていたのでしょうか。

 至公至平、ほんの少しのかたよりもなく、公平を貫き通せたことに誇りを感じたのでしょうか。それとも、悔し涙だったのでしょうか。各国代表は、そんな議長の姿を見て大きな拍手を送ったそうです。

 旅行会社の「ワールド航空サービス」が、「雇用調整助成金」を不正受給していた疑いがあるといいます。第三者委員会での調査が続いているようですが、不正の証拠を示すような報道もあります。

 いつ何時も、不正はあるものですが、なぜ不正に手を染めることになってしまうのでしょうか。不正してまで何かを手に入れたとしても、そこには後ろめたさが残ります。

 それよりはシャーマ氏の公平無私の態度に見習いたい、そう感じます。