「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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メルケル独首相の引退近づく、その人道主義と鉄の意志、現実主義 ~ 炉辺閑話 #45

 

 ドイツで総選挙が行われた。まだどのような結果になるかは判明していないようだ。選挙結果を問わず、メルケル首相が政界を引退する。

 16年もの間、首相を職を務めたのだから、間違いなく偉大な政治家といっていいのだろう。メディアがさかんにその功績を報じている。

「鉄の意志」と現実主義、長く指導者としてあり続けることができた理由とも言われる、

メルケル首相が去る~奇跡の在任16年をもたらした政治家としての特質 - 宇野重規|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

 東西ドイツを統一に導いたコール元首相に見いだされ、コール氏の下で政治経験を積んだまな弟子で、「コール氏の娘」とまで呼ばれた。旧西ドイツ生まれの旧東ドイツ育ちの物理学者という経歴をもつ。

コール氏の功績を最後にもう一つ挙げるなら、アンゲラ・メルケルという強力なリーダーを見出したことである。ぶれない信念に基づいた行動と言動で今や揺れ動くEUの守護神にさえなっている。

西ドイツのハンブルクに生まれながら、牧師だった父親の関係で東ドイツ育ち。物理学者だったメルケル氏はベルリンの壁崩壊を契機に政治家に転身、統一前に西ドイツで行われたCDUの党大会でコール氏と出会っている。 (出所:プレジデント) 

 

 

 多くの難民が中東から欧州に押しかけてきたとき、寛容な姿勢を貫き通した。あくまでもナチス時代のユダヤ人迫害の歴史的事実から目をそらさず、人権を重視したその対応に驚いた。同じ敗戦国の日本も見習うべきところがあるのではないかと痛切に感じた。

「鉄の女」を超えたメルケル独首相:日経ビジネス電子版

 このコロナ渦においても、その姿勢は変わらなかった。

 国民に行動制限を求めた会見では「移動の自由が苦難の末に勝ち取られた権利だと経験してきた私のような人間には、絶対的な必要性がなければ正当化し得ない」と述べ、多くの人々に感動を与えた。

論語の教え

「政を為すは徳を以てす。譬(たと)うれば北辰の其の所に居りて衆星(しゅうせい)之と共にするが如し」と、論語「為政第二」1 にある。  

「為政者は民衆の模範となる有徳者でなくてはならない。そうであれば、その徳を慕って人々が集まってくる。比喩的に言えば、北辰がその位置に定まり、その他の星がそれを尊びつつ共に動くように」と訳される。

dsupplying.hatenadiary.jp

 天空の中心である「北辰」に衆星が取り巻き回転するさまから、その状態を政治組織に見立てると、中心にいる為政者は無の状態であり、その行為は、私心なく自然にして適切な対応となるので、いわば「無為にして静清」と加地伸行は解説する。

 

 

 プーチン ロシア大統領やトランプ元米大統領と対峙し、少し中国よりで、日本が軽視されていたような印象もある。

(社説)メルケル引退へ 協調築く外交、継承を:朝日新聞デジタル

米国第一主義のトランプ政権や、欧州連合から離脱した英国に対し、メルケル氏は毅然とした交渉姿勢を続けた。米国の保護主義を戒め、欧州では地域統合の流れを守った。ウクライナ紛争など危機対応の国際会議では、各国指導者が互いに譲らないなか、辛抱強く落着点を探る姿が報道陣にも際立って見えた。

議論を重ねて溝を埋め、妥協を探る。いまの国連安保理などで見失われた外交交渉こそが、メルケル氏の真骨頂だった。 (出所:朝日新聞

 それは外交ばかりでなく、内政においてもそうだったのだろう。脱原発や脱石炭などが印象に残る。なかなか結論を導き出せないことでも粘り強く、ひとつひとつ交渉する姿には心打たれるものがあった。

人道主義を貫き、現実を踏まえて理想を追及する」、それがアンゲラ・メルケル首相ということだったのだろう。