auブランドを展開するKDDIが、イーロン・マスクのSpace X(スペースX)の衛星ブロードバンド事業「Starlink(スターリンク)」と業務提携すると発表した。
KKDIによれば、これまで利用が困難とされていた山間部や島嶼地域でも高速通信サービスが可能になるという。2022年をめどに、まず全国約1,200カ所から順次導入を開始するそうだ。
SpaceXの衛星ブロードバンド「Starlink」と業務提携、au通信網に採用する契約に合意 | 2021年 | KDDI株式会社
その「Starlink(スターリンク)」は、高度560kmの周回軌道上に約1万2000基の人工衛星を打ち上げ、世界全体をカバーする通信網をつくろうとしている。
その通信衛星は、低軌道上に配置されるため、従来の静止軌道衛星に比べて地表からの距離が65分の1程度と大きく近づき、大幅な低遅延と高速伝送が可能になるそうだ。
約1500基の人工衛星が打ち上げ済みで、既に10万人以上のユーザーに2021年2月から、ベータ版のサービスが提供され、世界の人口の多い地域をカバーするように拡大を続けているという。
スターリンクが特に重視するのが、地上インフラでは到達が難しい僻地へのインターネット接続サービス提供だという。
フォトログ:マスク氏の通信衛星、チリの寒村にネット接続の恩恵 | ロイター
ロイターによれば、チリの寒村でもスターリンクの高速インターネットが利用できるようになったそうだ。
多数の競合が存在する中で、今やスターリンクは、この低軌道を周回する人工衛星を使った通信サービスにおいては、世界の先頭を走る存在になっている。
論語の教え
「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼(おそ)れず」と、論語「子罕第九」29にある。
知者は学問をしてその目が明らかに冴えているから惑うことがない。仁者は人間を愛し、究極において善意の勝利を信じているから憂えることがない。勇者はおのれ一個のためではなく、天下のためによき決意をしたのだから、いかなることがあっても恐れない。 (引用:論語 桑原武夫)
この三つの属性が君子には不可欠であるという。
君子は、まず知を磨き、仁においてそれを完成し、正しい道を勇気をもって実践する。
デジタルデバイド
スターリンクは、世界における「デジタル・デバイド」の解消を目論んでいるのだろうか。まだ世界中にインターネットにアクセスできない人たちが多くいる。
「デジタル・デバイド」とは、コンピュータやインターネットなどの恩恵を利用できる人と、そうでない人の間に生じる、貧富や機会、社会的地位などの格差のことをいう。
ロイターによれば、デジタル・デバイドの問題は新型コロナによるロックダウンで表面化したという。
良好なインターネット接続を得られない人々は仕事や学習で困難に見舞われてしまうからだ。
「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼れず」とは、スターリンク事業を始めたイーロンマスクのことを言っているのだろうか。
利に走ったネット企業
中国では、インターネット関連企業に対する管理、監督が強化され、株式市場を震撼させた。
中国のネット企業、社会的価値の創造を=国営メディア | ロイター
一方、規制当局は、新たな発展・イノベーションの手段を追求すべきだと主張、社会的な責任を担い、社会的な価値を生み出す必要があると、その規制強化を正当化している。
「インターネットの監督が強化される中、『産みの苦しみ』は避けられないが、チャンスにもつながる」と指摘。「本当に競争力があり、企業文化が良好で、絶えず経済的・社会的な価値を生み出す企業は今後も繁栄する」。(出所:ロイター)
ロイターによれば、「健全な資本市場を支援し、起業家精神を促し、対外開放を堅持するという中国の信念は揺るがない」とし、「プラットフォーム経済の監督強化は、デジタル経済を精力的に発展させる中国の決意を示している」と指摘しているそうだ。
正論を言っているだけにも聞こえるが、「利」にばかり走るネット企業が蔓延り、国内に存在する格差解消に目もくれていなければ、監督されて仕方ないのかもしれない。何もそれは中国だけの問題ではないのだろう。
「参考文献」