子 斉衰者(しさいしゃ)を見るとき、冕衣(べんい) 裳者(しょうしゃ)と瞽者(こしゃ)と、之を見るとき、少(わか)しと雖(いえど)も、必ず作(た)つ。之を過ぐるとき、必ず趨(わし)る。(「子罕第九」10)
(解説)
孔子は、喪服を着ている人に出会うとき、あるいは、冕衣裳という貴人の盛服(正服)を着ている人や盲目の音楽官にであうとき、その人が若くとも必ず起立され、そしてその側を通られるときは疾行(しっこう)され、ともに敬意を表された。(論語 加地伸行)
加地の補足
「斉衰」は、喪に服する形の一種。期間は3年、1年、5か月、3か月と各種あり、家族関係によって異なる。喪服は哀しみが深いければ深いほど、すなわち、血縁関係が近くなればなるほど、手を加えず、より単純な仕立てかたとなる。衣服の端を折り返して縫う斉衰の喪服よりも、斬衰(ざんさい)の喪服は折り返すという人為を加えないので、より単純。素材は麻。これも粗末、単純を意味する。
斉衰の例を挙げていることは、その上位の斬衰の時を含む意であろうという。
「斉衰者」「冕衣裳者」「瞽者」についての文章が「郷党第十」19にもあり、同様に敬意を表されている。
(参考文献)