「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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【憤せずんば啓かず、悱せざれば発さず】 Vol.159

 

子曰わく、憤せずんば啓(ひら)かず、悱(ひ)せざれば発さず。一隅を挙げて、三隅を以て反せずんば、則(すなわ)ち復(ふたた)びせず。(「述而第七」8)

  

(解説)

孔子の教え。心に求めるものがあっても、まだそれがはっきりしないときは、それをこうだと示してやらない。求めるものが分かっても表現できないときには、それをこうだと引き起こしてやらない。一部を示してやって、それで全体をつかもうとしないときは、それを二度と教えることをしない。」論語 加地伸行

    

 桑原の解説。

 孔子が教育者としての自分の基本的態度を表明した章であるという。詰め込み反対、被教育者の内発性の必要性を説いているという。

「憤する」とは、いきどおることではなく、心がいっぱいに膨れ上がることを意味し、そうなって悩んでいるときに始めて「啓く」、つまり導いてやる。「悱」とは、いいたいことが口に出かかっていて出ないこと、そのときになって始めて「発する」、つまり教えてやる。

 ものには四つの隅があるが、その一つだけを示してやると、あとの三つの隅にも反応して答えてくるはずだが、もしそうならない場合は、相手がこちらの教示をまとまって受け取る準備ができていないのだから、しばらく見捨てて、同じ教えを繰り返しはしない、というのである。

 のどのかわいていない馬に水を飲ますことの不可能なことは、洋の東西を問わず、知られたことである。問題を持たないものに、問題の解き方を教えることはできない。ソクラテスの産婆説と同じだという。教育論として考えるべき章であるという。 

 

 

 「衛霊公第十五」16に「之を如何、之を如何と曰わざる者は、吾れ之を如何ともする末(な)きのみ」とある。この章と同じ意味ではないかと桑原はいう。

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 「関連文書」 

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(参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  
論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫