子曰わく、仁なるに里(お)れば美を為さん。択んで仁に処(お)らざれば、焉(いずく)んぞ知たるを得ん。(「里仁第四」1)
(意味)
「情愛の厚いところに住めば、美(よ)いことをするようになるだろう。探して、仁風(じんぷう 情愛が厚い)の土地に住むのでなければ、賢者ではない。」(論語 加地伸行)
桑原は、この章は難解であるという。「里仁為美」の解釈が難しいようだ。徂徠は「仁に里るを美と為す」と読み、朱子は、「里は仁を美(よ)しと為す」と読んだそうだ。
「仁に安住するのは立派だ」という昔からの言葉があるが、仁を択びとってそこに安住できないよう者は、どうして知者と言うことができようか」と桑原は読む。
「選択するということがすでに知的行為であり、到達しそこに安住するところの仁は穏やかな高い境地だが、それを択びとる決断は知性にもとづかなければならない。学問の必要な所以である」という。
台風19号を通り過ぎ、東日本各地に甚大な被害を残したことは記憶に新しい。災害ボランティアが活躍し、地域で支え合い、各地で復興へ向けて動き出している。
激甚災害が増加の一途にある現代では、防災に強い街を選ぶことも重要な要素になっていくのであろうか。いざ災害が発生した時は、地域、コミュニティでの支えあいが何よりの助けになることを今回の災害から学ぶことが出来る。そうしたコミュニティは、人への思いやり「仁」が根底にあるのだろう。徂徠がいう「仁に里るを美と為す」との意味がよくわかる。
東洋経済の「武蔵小杉をあざ笑う人々に映る深刻な社会分断」という記事に興味が引かれた。武蔵小杉の惨状を嘲る人々がSNS上に存在したようだ。安住の地の選択は実に難しい。
(参考文献)