「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【本立ちて道生ず。孝弟は其れ仁の本為るか】働き方改革 変わる組織のあり方 Vol. 7

 

有子曰く、その人と為りや孝弟にして、上を犯すを好む者は鮮(すく)なし。上を犯すを好まずして、乱を作(な)すを好む者は、未だ之れ有らざるなり。

君子は本を務む。本立ちて道生ず。孝弟は其れ仁の本為るか。  (「学而第一」2)

  

(解説)

有子の教え。その人柄が、父母に尽くし兄など年長者を敬うような場合、反逆を好むというような人間は少ない。反逆を好まない人柄であって、にもかかわらず叛乱をしたがるというようなことは絶対にない。

教養人は、人間としての根本の修養に努力する。なぜなら、根本が確立すると、生き方としての道がわかるからだ。父母に尽くし目上を敬うこと、すなわち孝悌が、「仁」すなわち人間愛という生き方の根本なのだ。 (論語 加地伸行

 

「有子」、孔子の13歳年少の弟子。有若の尊称が有子。記憶力に優れ、その容貌は孔子に似ていたため、師の没後弟子たちによって孔子の身代りとして仕えられたという。

 また、勇気があったといも言われる。攻めてきた呉軍が魯軍に夜襲をしかけたとき、魯軍は志願兵を募ったという。この志願兵には、士が700人、卒が300人にいたという。有子は、卒300人の内の一人といわれる。

 孔子亡き後、有子が孔子学団を率いることになる。

 

  

 桑原武夫は、学而の二番目にこの文章があることに疑問を投げかける。前段の上についての文章が、何か意図的にものではないかと指摘する。桑原は、空想としながら、乱世に道義を唱える孔子学団が、時の権力者たちからは反体制的な危険なグループと見られたのではないかという。墨家儒家を反体制的だとして批判していると指摘する。

 桑原は、凡庸な儒者としての有子が、学団を無事に守り通すため、自分たちは「仁」を求めるものである、その仁の基礎には家族道徳があり、自分たちはまず「孝悌」の涵養に尽力している。世間を観察すると、家族内で上位者に奉仕することを好む人間は、必ず政治的にも上位者に柔順で、反体制的にはならないものである、自分たちを誤解しないでもらいたい、という含みがあったのではないかと読む。

 

  桑原説に従えば、有子が「礼の用は、和を以て貴しと為す。先王の道は斯(これ)を美と為す」(「学而第一」12)ということも理解できる。

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 政府主導で、働き方改革労働生産性の向上などが進められている。  

欲のある人々が、ストレスなく働ける会社をつくる。

 従来のヒエラルキー型の組織はフラット型へ、ティール組織という概念も登場している。 forbesjapan.com

 

 そんな中で、この論語のことばを生き抜く知恵にできるのではと思う。

 

【本立ちて道生ず。孝弟は其れ仁の本為るか】

 人と組織の関係性を変えることができるのは、自分自身であるということでもあるのかもしれない。   

 桑原は、仁を最高の徳においた孔子の集団でさえ、時の体制からは異端とされていたという。そうした誤解を払拭しようとこの章があったのではないかとみている。 

 組織で何か誤解が生じた場合などは、この文を参考にしてみるのがよいということかもしれません。 

 

(参考文献)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

 
ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 

 

人に取入ることなかれ 【君子は諸れを己に求む、小人は諸れを人に求む】 Vol.6

  

子曰わく、君子は諸れを己に求む、小人は諸れを人に求む (「衛霊公第十五」21)

(意味)

「君子は何事も自己の責任に帰し、小人は責任を他人に求める。」 (出所:「論語加地伸行

  

○○興業騒動で騒がしいですね。

あまり興味はありないのですが、どうも目に入ってしまいます。

事実がどこにあるかはわかりませんが、その言動はみることはできます。

 金銭授受について偽りがあって、謝罪会見したはずでしたが、最後はパワハラの被害者のような振る舞っているようにみえました。 

 

前回で書きました、

 巧言令色、鮮(すく)なし仁 

(意味)

巧みな言葉を用い、表情をとりつくろって人に気に入られようとする者には、仁の心が欠けている。

 

みなさんはどうお感じになるでしょうか

  

(参考文献) 

論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

 

 

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【巧言令色、鮮なし仁】日韓関係を憂いて Vol.4 & 5

 

子曰く、巧言令色、鮮なし仁 (「学而第一」3)

 


日韓関係が悪化しているようです。 

茂木先生ではありませんが、日韓の政治家、メディアをみていると、この言葉を思い出します。

 

 

 巧言令色、鮮(すく)なし仁 

(解説)

孔子の教え。「言葉を巧みに飾り立てたり、外見を善人らしく装うのは、「仁」すなわち他者を愛する気持ちは少ない。 (出所:「論語加地伸行

 

 まさに、今の政治家やマスコミを言い表しているのかもしれません。 

 私も何度も韓国を訪問していますが、マスコミで報道するような、関係悪化を感じることはほとんどありません。たまたま、お会いする人が、日本に対して悪い感情を抱いていないだけなのかもしれません。 否、2人で日本語で会話しながら歩いても、街の中から何か妙なことを感じることもありませんでした。

 長い時間を一緒に過ごせば、お互い心が打ち解けてくるもの。何か悪い感情をもっていれば、色々と表情に現れるものです。今までそうした人にあったこともなく、私自身もいい国だとの印象を強く持っています。 

『韓国語と日本語は実は近いんですよ。同じ発音する言葉もありますから』

なんて会話もしたりしていました。

 

 

 この章は人生一般について言われたのではなく、官界、政界などにおいて下位者が上位の権力者に対する際の態度について述べたのであろうと桑原はみる。

 ここでの仁は公の徳、つまり人民の幸福を願う心というほどの意味である。私的な愛情を媒介とせず、真実ないし誠実が問題がされる領域での話であるという。

君主などに言葉巧みに、顔色をやわらげて取り入るような人物に人民の心などわかるものではない、との訓戒だという。

 

巧言令色、巧みな言葉を用い、表情をとりつくろって人に気に入られようとする者には、仁の心が欠けている。

 

「巧言令色、鮮なし仁」の反対語と言われるのが、

剛毅木訥は仁に近し 

子曰く、剛毅木訥は仁に近し (「子路第十三」27)

 意思が強く強固で、素朴で口数が少ない人物が、仁に最も近い者であるということ。

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 2018年の冬のオリンピック平昌大会、スピードスケート女子500mでの小平奈緒さんとライバルの李相花(イ・サンファ)さんの友情には多くの人が感動したのではないであろうか。

レース後に、2位に終わり泣き崩れる李さんに、小平さんが韓国語で「よくやったね」とねぎらい抱擁したシーンが感動的だと日韓両国で話題になった。 

このお二人の姿が、政治世界から離れた両国の本当の姿ではないのかと思います。

 お二人とも、特にうわべを取り繕ったようなもなく、ごく自然にふるまわれていたように見えました。  

 

 

(参考文献)

論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

 
論語 増補版 (講談社学術文庫)

論語 増補版 (講談社学術文庫)

  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 

 

【友遠方より来る】 vol.3 思想のイノベーター 孔子

 

孔子は中国 春秋時代の思想家であり哲学者。そして、儒家の始祖。「論語」は孔子と彼の高弟の言行を孔子の死後、弟子達が記録した書物。

孔子の生まれは、なんと紀元前552年、今から2500年前の人。弟子が3000人程度いたといわれる。

有力な諸侯国が領域国家の形成へと向かい、人口の流動化と実力主義が横行して旧来の氏族共同体を基礎とする身分制秩序が解体されつつあった周末、魯国に生まれ、周初への復古を理想として身分制秩序の再編と仁道政治を掲げた。孔子の弟子たちは孔子の思想を奉じて教団を作り、戦国時代儒家となって諸子百家の一家をなした。孔子と弟子たちの語録は『論語』にまとめられた。 (出展:Wikipedia)  

 

 

 

孔子は中国思想界のイノベーター

私たちがこうして「論語」を読めるということは、孔子の存在抜きにしては語れない。イノベーターの定義は、繰り返しになるが、「革新者」、「新技術などの導入者」。当時の思想を一気に進めた孔子はイノベーターと言っても過言ではないのであろうか。

 

論語は、「友遠方より来る」で始まる。

 

『子曰わく、学んで時に之を習う、亦た説ばしからず乎(またよろこばしからずや)。

有朋遠方より来たる、亦た楽しからず乎。人知らずして慍らず(いからず)、亦た君子ならず乎。』 (「学而第一」1)

 

 一般的な現代語訳は、

習ったことを機会があるごとに復習し身につけていくことは、なんと喜ばしいことではないか。

友人が遠方からわざわざ私のために訪ねてきてくれることは、なんと嬉しいことでではないか。

他人が自分を認めてくれないからといって不平不満を言うことはありません。なんと徳のある人ではないか。

 この『論語』開巻第1章は、「学問の喜びについて述べたもので、学問を共に志すものは孤独ではない。必ず友が遠くからもやってきて、同じ道にいそしむ喜びが味わえるのだ」との解説もある。

学びとはまねること、習うとは繰り返し行うこと。

 一つの学説を知り、それにもとづいて他の本を読んでみたり、自然や社会の現象を解いてみたりする。そうしたことを繰り返していると、必ず友となる人もやってきて、同じ道を営む仲間となり、喜びを分かち合える。

 歴史的に見て、天才的な学者や芸術家があまりの独創性ですぐに社会に認められないこともあるように、自分の能力が早々に社会に認められないこともある。そうしたことに耐えて、はじめて独創性の芽が育っていく。

とは、私の解釈で、この文は孔子自身のことではないかと想像します。

 

 孔子は、詩や古典を読み、その専門家になり、それをもとに想像力(創造力)を働かせて、儒教というビジョンを得て、その道の専門家となっていった。

  

 孔子が生きた春秋時代と、現在のイスラエル地政学的にみて、同じ状況ではないでしょうか。周囲からの外圧を感じ、自分たちが生き残る術を自分たちで見出さなければならなかった。

 

環境が必然を生み、人を育て、人を集める。

そこからイノベーションが萌芽していく。

 

どんなに優れたアイデアであっても、それが実用化され、生活の中で利用されなければ、シーズのままでイノベーションになり得ません。

論語

この章を「小論語」と呼んだのは伊藤仁斎。この一章に「論語」の全精神が集約されているという。

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 孔子生きた時代を考慮し「学」を歴史的に読めば、学ぶとは「詩経」や「書経」などの古典を先生から読み聞かせられ、それを覚えこむこと、つまりまねびであり、「習」とはおそわった礼儀作法の実習であったのだろうかと、文学者の桑原武夫はいう。

 現代の私たちとしては、学ぶとは何かを知ることであり、習うとは知ったことを実際にやってみることという程度によんでおいてよかろう。 (引用:論語 桑原武夫 P8) 

 桑原はスキーを例えに、こうすれば回転できるということを学び知り、それを実際にやってみる、やってみて回転することに成功すれば、ああ、そうかと理解し喜びも生まれる。そうしたよろこびは、何かを本気で、うちこんでやってみたことのない人にはわからない境地であり、しかし、それはなんとも楽しいことではなかろうかと桑原はいう。

 

友遠方より来る

 孔子は、密室でひとりで学問する人ではなかった。そのことがこの章で明らかにされてるのかもしれない。

 勉強をしていると自ずと仲間ができる。その学友が遠いところからやって来る、そして談笑のうちに真実を探る。なんと楽しいことではないかと孔子がいったということなのかもしれない。

 

 

 孔子は思想にイノベーションを興し、彼のもとに3000人の弟子、同志を引き寄せた。そして、2500年の間、脈々と読み継がれる『論語』というムーブメントを作った。

新しい中心地 イスラエル

 かつて、シリコンバレーイノベーションの中心でありましたが、ここ最近は、イスラエル、深圳など世界各地に分散しはじまている。 

イスラエルがスタートアップの密度世界一で、ナスダックに上場している企業数で、ヨーロッパからの上場総数よりはるかに上回っている。

そして、多くのテクノロジー企業や世界的投資家がイスラエルに引き寄せられている。

 

アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?

アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?

 

 原題は、『Start up Nation -The Story of  ISRAEL's Economic Miracle.』 

 

 簡単にこの本を紹介すると、

この本の主題は、テクノロジーイノベーションそのものではありません。むしろ、イノベーションを生み出す風土、人材、教育や文化といった側面、そして、イノベーションを事業として、産業として育成していくうえでの諸条件について、イスラエルの多くのハイテク企業を例に多面的・多角的に紹介している。(本書 P341より抜粋)

 

 

専門家とは、例外なく過去の事実を語る専門家だ。これから起こる事象を語れる専門家はひとりもいない。』 

イスラエル初代首相 ダビッド・ベングリオン

これから生まれる未来についての専門家になるためには、経験に取って代われるビジョンが不可欠だ。  

(出所:アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか)

 

 今、多くの人がイスラエルに引き寄せられている。  

『アップルやグーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』で、イノベーションの秘密をつぶさに感じることができる。

 

(参考文献)

論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

 

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【温故知新】イノベーターたちの素養 vol.2

 子ども時代、中学生のころかと思うのですが、将来の夢を実業家と分不相応なことを言っていました。その影響もあってかでしょうか、いつまでも「イノベーター」ということが頭に引っかかっていました。

 

人それぞれでイノベーターと思う人は異なると思いますが、私が思うイノベーターは、

トーマス A エジソン (発明家、起業家、GE創業者)

ルイス V ガースナー Jr (元IBM最高経営責任者

ジェフベゾス (Amazon.com 共同創業者兼CEO)

ムハマド ユヌス (経済学者、実業家、グラミン銀行創設者) 

 

イノベーターの定義は「革新者」、「新技術などの導入者」

 

 彼らの功績からそう考えるのはもちろんのことですが、私のその後に大きな影響を与えてくれた人たちでもあります。イノベーションという言葉に輪郭を与えてくれ、自分が目指すべきもののイメージを与えてくれました。

 

 

 イノベーションという言葉の解釈もまた、人それぞれで異なるかと思います。先ごろまでは、P F ドラッカーのイノベーショ理論が盛り上がりを見せていました。その正しさはわかるのですが、私個人としてはどうしてしっくりせずに、どちらかと言えば、米国の経営学者クレイトン・クリステンセンの「一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考」に正しさを感じていました。

 

『知らずして之を作る者有らん。~多く聞きてその善き者を択びてこれに従う。~』

(述而第七 27)

イノベーターたちはみな、知っているものの組み合わせで、新しいものを生み出すのではと思う。どんなに革新的なことであれ、脈々と積み重ねられてきた過去の延長でしかない。

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「故きを温めて新しさを知る」 温故知新。イノベーターの素養なのかもしれない。

 

温故知新 (「為政第二」11) 

『 子曰く、故(ふる)きを温めて新しきを知る、以って師と為るべし。』

 (一般的な現代語訳)

「古くからの伝えを大切にして、新しい知識を得て行くことができれば、人を教える師となることができる。」

  

 桑原武夫は、『過去の伝統を冷えきったそのままで固守するのではなく、それを現代の火にかけて新しい味わいを問いなおす』と訳した。

また、「伝統を墨守するのではなく、永遠の真理の今日的意味をさぐる。」そうした知的訓練を重ねることによってのみ、目前の複雑で混沌とした、しかし、私たちにとっても切実な現実を鋭くまた筋道をたててとらえることができるとした。 

「不易流行」松尾芭蕉は言った。

 「古にして時に乖(そむ)かず、今にして弊に同せず」という古語もあるという。

 

 

ニコラス・G・カーは著作『クラウド化する世界』で、現代のネット社会を1世紀前の電気の普及に準え、解説している。この本に、エジソン、アマゾンなどが登場、たしかガースナーの名もあったような気がします(記憶が曖昧です)。

なかなか面白い本だと思います。 

クラウド化する世界~ビジネスモデル構築の大転換

クラウド化する世界~ビジネスモデル構築の大転換

 
論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

 

 

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新紙幣1万円の渋沢栄一はどんな人?


新紙幣のデザインが新しくなり、新1万円紙幣の肖像は渋沢栄一に代わります。

 

 

では、渋沢栄一とはどんな人だったのでしょうか?

 

電機メーカに勤めていた私と渋沢栄一との出会いは、取引する企業を調べたことからはじまりました。 

伊藤忠商事の営業マンが城山三郎を愛読されていることを聞いて、私も城山の作品をいくつか読み、その中でたびたび登場したのが渋沢栄一でした。城山の作品に描かれる渋沢に興味をもち、渋沢栄一の伝記文学である『雄気堂々』へと読み進めていきました。

 

その中で描かれる古河、三井、浅野(現大平洋セメント)などとは取引関係にあったこともあり、新鮮な気持ちで読み進め、当時の仕事であった取引先調査の一助にもなりました。

 

私がよくお会いし、一緒にゴルフした浅野さんは、あとになって知ったことですが、この雄気堂々に登場する浅野総一郎さんの孫かひ孫の方でした。もう少し早く知っていれば、おじいさまの印象などを聞けたらと悔やまれます。(また、会いに行ってもいいのでけどね) 

雄気堂々(上) (新潮文庫)

雄気堂々(上) (新潮文庫)

 

 

雄気堂々 (下) (新潮文庫)

雄気堂々 (下) (新潮文庫)

 

 

 

前置きが長くなりましたが、渋沢栄一について。

 

栄一本人は、自分のことを『武州血洗島の一農夫』と称していた

論語をこよなく愛した栄一、彼の口述をまとめた『論語と算盤』で、彼の行動の源泉を顧みることができます。

 

ソロバンは『論語』によってできている。『論語』もまた、ソロバンの働きによって、本当の経済活動と結びついてくる。だからこそ『論語』とソロバンは、とてもかけ離れているように見えて、実にとても近いものである。 (論語と算盤 第一章 処世と信条)

 

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

 

 

論語とは孔子の教えを説いた道徳

論語はもとは中国の古典。実に日本人とのなじみは深く、武田信玄上杉謙信などの戦国武将にも読まれ、江戸期には家康が国学として採用(朱子学)、荻生徂徠伊藤仁斎などの多くの儒学者がこの論語について研究していたことは歴史でも勉強し、私たちも知っていることと思います。新渡戸稲造の武士道の骨格になっているのも論語

四文字熟語や格言の多くが論語を原典にしているので、実は私たちになじみ深いものかと思います。

 

昭和期の経営者がオススメ本に論語をあげることが多く、私もならば読んでみようと論語に挑戦しました。なんど再読したことか。

 

論語を小難しくとらえようとする学者は)口やかましい玄関番のようなもので、孔子には邪魔ものなのだ。こんな玄関番を頼んでみても、孔子に面会することはできない。 

 とは、栄一のことば。論語が彼の根っこにあったことが想像できます。

 

後年の栄一の逸話。栄一の人間臭さも

こうした夫渋沢栄一について、兼子夫人は晩年、子供たちによくつぶやいていた。

「お父さんも論語とはうまいものを見つけなさったよ。あれが聖書だったら、てんで守れっこないものね」

渋沢は生涯、論語を愛し、論語の文献を集め、講読会を開き、儒教倫理を説いた。ただし、論語には、夫人の指摘する通り、女性に対する戒めはない。 (雄気堂々 序曲 流産祝)

 

そんな渋沢栄一の生涯を簡単に紹介するとしたら、

 

江戸末期から昭和初期に活躍した「時代の児」

1.尊王攘夷の志士として活躍した時期

2.一橋慶喜の家来になった時期

3.幕臣としてフランスに渡った時期

4.明治政府の官僚となった時期

5.実業家となった時期

そんな経験をもつ栄一。近代日本の設計者の一人と言われ、日本の資本主義黎明期において、「利潤と道徳を調和させる」という道を示しました。

 

 昭和期の経営者たちが『論語』をオススメ本としたことも頷けます。

論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

 

 

 

この先も論語とビジネスとの関わりを具体的にご紹介していきたいと思います。

 

 

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 日本郵船の子会社が運営する飛鳥Ⅱ。 日本郵船渋沢栄一の存在がなければ生まれていませんでした。