「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

新紙幣1万円の渋沢栄一はどんな人?


新紙幣のデザインが新しくなり、新1万円紙幣の肖像は渋沢栄一に代わります。

 

 

では、渋沢栄一とはどんな人だったのでしょうか?

 

電機メーカに勤めていた私と渋沢栄一との出会いは、取引する企業を調べたことからはじまりました。 

伊藤忠商事の営業マンが城山三郎を愛読されていることを聞いて、私も城山の作品をいくつか読み、その中でたびたび登場したのが渋沢栄一でした。城山の作品に描かれる渋沢に興味をもち、渋沢栄一の伝記文学である『雄気堂々』へと読み進めていきました。

 

その中で描かれる古河、三井、浅野(現大平洋セメント)などとは取引関係にあったこともあり、新鮮な気持ちで読み進め、当時の仕事であった取引先調査の一助にもなりました。

 

私がよくお会いし、一緒にゴルフした浅野さんは、あとになって知ったことですが、この雄気堂々に登場する浅野総一郎さんの孫かひ孫の方でした。もう少し早く知っていれば、おじいさまの印象などを聞けたらと悔やまれます。(また、会いに行ってもいいのでけどね) 

雄気堂々(上) (新潮文庫)

雄気堂々(上) (新潮文庫)

 

 

雄気堂々 (下) (新潮文庫)

雄気堂々 (下) (新潮文庫)

 

 

 

前置きが長くなりましたが、渋沢栄一について。

 

栄一本人は、自分のことを『武州血洗島の一農夫』と称していた

論語をこよなく愛した栄一、彼の口述をまとめた『論語と算盤』で、彼の行動の源泉を顧みることができます。

 

ソロバンは『論語』によってできている。『論語』もまた、ソロバンの働きによって、本当の経済活動と結びついてくる。だからこそ『論語』とソロバンは、とてもかけ離れているように見えて、実にとても近いものである。 (論語と算盤 第一章 処世と信条)

 

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

 

 

論語とは孔子の教えを説いた道徳

論語はもとは中国の古典。実に日本人とのなじみは深く、武田信玄上杉謙信などの戦国武将にも読まれ、江戸期には家康が国学として採用(朱子学)、荻生徂徠伊藤仁斎などの多くの儒学者がこの論語について研究していたことは歴史でも勉強し、私たちも知っていることと思います。新渡戸稲造の武士道の骨格になっているのも論語

四文字熟語や格言の多くが論語を原典にしているので、実は私たちになじみ深いものかと思います。

 

昭和期の経営者がオススメ本に論語をあげることが多く、私もならば読んでみようと論語に挑戦しました。なんど再読したことか。

 

論語を小難しくとらえようとする学者は)口やかましい玄関番のようなもので、孔子には邪魔ものなのだ。こんな玄関番を頼んでみても、孔子に面会することはできない。 

 とは、栄一のことば。論語が彼の根っこにあったことが想像できます。

 

後年の栄一の逸話。栄一の人間臭さも

こうした夫渋沢栄一について、兼子夫人は晩年、子供たちによくつぶやいていた。

「お父さんも論語とはうまいものを見つけなさったよ。あれが聖書だったら、てんで守れっこないものね」

渋沢は生涯、論語を愛し、論語の文献を集め、講読会を開き、儒教倫理を説いた。ただし、論語には、夫人の指摘する通り、女性に対する戒めはない。 (雄気堂々 序曲 流産祝)

 

そんな渋沢栄一の生涯を簡単に紹介するとしたら、

 

江戸末期から昭和初期に活躍した「時代の児」

1.尊王攘夷の志士として活躍した時期

2.一橋慶喜の家来になった時期

3.幕臣としてフランスに渡った時期

4.明治政府の官僚となった時期

5.実業家となった時期

そんな経験をもつ栄一。近代日本の設計者の一人と言われ、日本の資本主義黎明期において、「利潤と道徳を調和させる」という道を示しました。

 

 昭和期の経営者たちが『論語』をオススメ本としたことも頷けます。

論語 (ちくま文庫)

論語 (ちくま文庫)

 

 

 

この先も論語とビジネスとの関わりを具体的にご紹介していきたいと思います。

 

 

f:id:dsupplying:20190707095038j:plain

 日本郵船の子会社が運営する飛鳥Ⅱ。 日本郵船渋沢栄一の存在がなければ生まれていませんでした。