「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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【人能く道を弘む。道 人を弘むに非ず】マイルストーンと道徳 Vol.407

 

子曰わく、人能(よ)く道を弘(ひろ)む。道 人を弘むに非(あら)ず(「衛霊公第十五」29)

 

(解説)

孔子の教え。「人間が道徳を実質化してゆくのであって、道徳が人間を高めてゆくわけではない」。論語 加地伸行

   

朝(あした)に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。(「里仁第四」8)

この章は現代語訳をするよりも、原文そのままに訓(よ)むほうが胸に響くと加地はいう。

「道」の意味は読者によって様々であろう。人の世の真実、人間として大切なもの、生きることの意味、あるいは死への覚悟・・・・読者の心に響くものが「道」であると。 

dsupplying.hatenadiary.jp

 

 

 その「道」の行き着く先に何があるのだろうか。

 詩人高村光太郎の「僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる」という「道程」という詩を思い出す。

 この有名な「道程」という詩は、雑誌『美の廃墟』にある102行の詩が圧縮されたものだといわれる。その原文には、

どこかに通じてる大道を僕は步いてゐるのぢやない
僕の前に道はない 僕の後ろに道は出來る
道は僕のふみしだいて來た足あとだ
だから
道の最端にいつでも僕は立つてゐる
何といふ曲りくねり
迷ひまよつた道だらう

高村がいう「道の最端にいつでも僕は立ってゐる」という言葉に心を動かされる。

ja.wikisource.org

 

 何の目標を持たずに、とぼとぼと道を歩くこともできるし、何かのゴールに向かって歩いていく道もあるのだろう。

 『美の廃墟』にある「道程」はと、その後に短縮された「道程」では受け取る感情が異なる。

 この詩の改訂には、妻 長沼智恵子との出会いの影響があるとの解説もあるようだ。妻との出会いが高村の転機になったのだろうか。

 

 ビートルズの名曲「The Long and Winding Road」(John Lennon & Paul McCartney作)、

 The long and winding road that leads to your door 

 長く曲がりくねった道、それは君のドアへと導く
 Will never disappear

 決して見失うことはないだろう
 I’ve seen that road before it always leads me here

 その道がここへといつも私を導いてきたことがわかる
 Leads me to your door

  君へと私を導いていく

で始まる。

The Long And Winding Road (Remastered 2009)

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  • 発売日: 2015/12/24
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 今、道の先端にいることで、歩いてきた道に意味が生まれるのだろう。

 その道の先には何が見えるだろうか。長い長い坂道で、その先が見通すことができないのかもしれないが。

人能く道を弘む。道 人を弘むに非ず

 道徳は、人が歩く「道」のマイルストーンなのかもしれない。

 道標 マイルストーンがあれば、迷わずに歩くことができるかもしれない。

 

  (参考文献)  

論語 増補版 (講談社学術文庫)

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  • 作者:加地 伸行
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫
 
論語 (ちくま文庫)

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  • 作者:桑原 武夫
  • 発売日: 1985/12/01
  • メディア: 文庫
 

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