蘧伯玉(きょはくぎょく) 人を孔子に使わす。孔子 之と坐して問う。曰わく、夫子(ふうし)何をか為す、と。対(こた)えて曰わく、夫子は其の過ちを寡(すく)なくせんと欲して、未だ能(あた)わざるなり、と。使者出づ。子曰わく、使(し)なるかな、使なるかな、と。(「憲問第十四」25)
(解説)
蘧伯玉が孔子のもとに使者をよこしてきた。孔子は使者と対面し、尋ねた。「大夫の近況は」と。使者が答えた。「大夫は過ちなきようにと努めておりますが、まだまだできない」と。その使者が退出したあと、孔子はこう言った。「できる使者だ。立派な使者だ」と。(論語 加地伸行)
「蘧伯玉」、衛国の大夫。孔子が衛国に滞在のとき、蘧伯玉の家に宿していたという。その縁もあってか、互いに親しかった。
孔子は、謙遜しながらも主人を褒める「蘧伯玉」の使者のその態度を褒めつつ、「蘧伯玉」をも褒めたのであろうか。
(参考文献)