1. 「にわか」の熱狂と、市場の冷や水
第2次高市政権が始まりました。地滑り的な勝利で幕を開けた。「日本列島を強く豊かに」「挑戦しない国に未来はありません」。という力強いスローガンに沸き立ち、「にわかファン」の熱狂が総選挙での自民党の地滑り的勝利をもたらしました。
漂流する円「もう安全通貨じゃない」 根強い下落圧力、財務官も警戒 - 日本経済新聞
しかし、市場という審判は冷徹である。「安全通貨」の座を滑り落ち、下落圧力を受け続ける円。そして「借金大国の日本は財政が持つのか」という投資家たちの警戒。ナラティブが強ければ強いほど、その「実(実態)」の空疎さが露呈したときの反動は大きい。
2. ノア・スミスが説く「世界中にいる味方」
ここで、日本大好きエコノミストとして知られるノア・スミスの言葉を引用したい。彼は著書『ウィーブが日本を救う』の中で、こう主張している。
「世界中のウィーブ(日本オタク)が、今か今かと日本の成功を助けようとしている」 「日本はウィーブの文化を利用して、もっとグリーンフィールド投資を呼び込むべきだ」(「ウィーブが日本を救う」ノア・スミス)
世界中に「日本に成功してほしい」と願うファン層が厚く存在することは、巨大な無形資産だ。だが、この「愛」というプレミアムには、有効期限と限界がある。
3. 「電気代」という、おもてなしの欠如
どれだけ日本を愛する投資家でも、ビジネスの算盤(そろばん)が合わなければ、日本に拠点を置くことはできない。その最大の障壁が、世界的に見ても高騰し続けている「電力コスト」だ。
高市政権は原発再稼働や新設を「強い日本」の象徴に据えるが、現実は未解決のコストの山である。 テロ対策施設の設置猶予見直しによる工事費の増大だけではない。
原発のテロ対策施設、5年間の猶予措置見直しへ 規制委 - 日本経済新聞
動かす原子炉がないのに電力会社の資金で存命する日本原電、日本原燃の迷走、そして最終処分場や中間貯蔵施設の目処さえ立たない「バックエンド問題」は、文字通り未来へのツケだ。
原発に税金投入で電気料金値上げ?高市政権の公的融資の実情 | 環境エネルギー最前線 | 川口雅浩 | 毎日新聞「経済プレミア」
毎日新聞が報じる「公的融資」による救済議論は、原発がもはや安価な電源ではなく、国家的な「コストセンター」と化している証左だ。このコストを「積極財政」という言葉で包み隠し、結局は国民や投資家に電気代という形で転嫁し続ける構造に、不誠実さを感じざるを得ない。
4. 積極財政の「正」とは何か
市場が警戒しているのは、借金の額そのものではない。その借金が「将来の稼ぐ力」に繋がらない「死に金」になることだ。
真の「積極」とは、特定業界の救済や負債の先送りではなく、世界で最も安いエネルギーインフラを再定義し、海外の「味方」たちが「日本で戦いたい」と思える物理的な条件を整えることに予算を集中投下することではないか。
まとめ:譎(けつ)か、正(せい)か
『論語』憲問第十四に、こうある。
晉(しん)の文公(ぶんこう)は譎(けつ)にして正(せい)ならず、齊(せい)の桓公(かんこう)は正(せい)にして譎(けつ)ならず。(「憲問第十四」15)
目先の支持を求めて巧妙なナラティブ(譎)で国民を酔わせるのか。それとも、エネルギーコストの劇的な圧縮という、地味だが困難な「正」を歩むのか。
日本中を熱狂の渦に巻き込んだ「りくりゅう」がカナダに拠点を移したのは、そこに「勝てる環境」があったからだ。 世界中のウィーブたちが日本へ投資しようとする今、私たちがなすべきは、熱狂を煽るスローガンではなく、電気代という足元のコストを根本から見直す「実務家としての執念」ではないのか。
「日本大好き」という世界中の善意を、本物の経済成長へと変換できるか。 高市政権に求められているのは、権謀術数ではなく、インフラという「正道」の再建である。
「参考文書」
借金大国の日本、財政は持つの? 増える支出を市場警戒 - 日本経済新聞
世界中の日本好きウィーブが日本を救うか 直接投資と高度人材を呼び込む新戦略 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

