「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

「旧世界」の終焉、消えゆく国際秩序。漂う不穏な空気と「銃声」の足音

「国際的な秩序は、もはや存在しない」、ミュンヘン安全保障会議でのドイツのメルツ首相の発言だ。

旧世界秩序は「もはや存在せず」、欧米の指導者らが見解一致(1/2) - CNN.co.jp

 米国のルビオ国務長官も「世界は急速に変化している。私が育ったような古き世界は消え去り、われわれは地政学的に新たな時代に生きている。皆が役割を再検討する必要がある」という。この冷たい空気は、いったい何であろうか。かつて私たちが信じていた、ルールに基づく国際社会。それが遺物となってしまったようだ。

 人類滅亡まで、あと85秒。時計の針は史上最も危険な場所を指し示している。

人類滅亡まで「あと85秒」 核軍拡懸念、史上最も危険―米誌:時事ドットコム

華やかな外交の影で、私たちが失っているもの

「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」 高市首相の言葉は、勇ましく、どこか華麗だ。しかし、その華やかさの裏で、私たちは危うい賭けに身を投じてはいないだろうか。

トランプ氏の米国が問う普遍的道徳 人種差別から政治とカネまで - 日本経済新聞

「旧世界秩序はもはや存在しない」と欧米が一致し、トランプ政権下の米国が「普遍的道徳」よりも「国家資本主義」的なディールを優先し始めた今、日米協力という「最強ナラティブ」に盲従することは、かつての無謬性の神話を繰り返すことにはならないか。

トランプ政権の「国家資本主義」 米CEOらが憂う自由市場の危機 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

自由市場の危機を憂うCEOたちや、カナダ首相が説く「ルールに基づく秩序の崩壊」への警鐘を、私たちは「対岸の火事」として聞き流していいはずがない。

戦争博物館の静寂、そしてZ世代の眼差し

かつて私が訪れたシンガポールベトナム戦争博物館。あの場所に漂う、言葉にならないほどの沈黙。 並べられた展示物は単なる「過去の記録」ではなく、「今の私たち」への痛烈な警告であったことに、今さらながら気づかされる。

元中国大使・丹羽宇一郎氏が最後に残した、「Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない」というメッセージ。それは決して誇張ではない。秩序が消え、力が正義を定義する時代、私たちは再び「銃」を解決の手段として選ぼうとしている。

「対決より解決」という言葉で批判を去勢し、権力の「ナビ役」に熱狂するこの国で、私たちは再び、若者たちを「名誉ある戦い」という名の絶望へと追いやってはいないだろうか。

結び:文を以て友を会し、友を以て仁を助く

秩序が死んだといわれる荒野で、私たちは何を拠り所にすべきなのか。 特定の陣営に取り入り、銃を手に取る準備をすることだろうか。それとも、再びあの博物館の展示を増やさないための、執念の「対話」を続けることなのだろうか。

論語』顔淵第十二 24に、このような言葉がある。

「君子は文(ぶん)を以て友を会(あつ)め、友を以て仁(じん)を助く」(「顔淵第十二」 24)

君子は、力や利害ではなく、教養や文化(文)を通じて友と交わり、その交流を通じて、人間として最も大切な誠実さ(仁)を互いに高め合っていく。

旧世界が消え去った今だからこそ、私たちはこの「文」の力を信じるべきではないのか。 国と国、人と人とが、共通の「言葉」と「教養」を持って繋がり、互いの暴走を食い止め、「仁」を支え合う。それこそが、銃声が支配する時代に対する、唯一の、そして最も強靭な抵抗となるはずだ。

 

 

「参考文書」

ミュンヘン安保会議が開幕 欧米関係やウクライナ議論―独:時事ドットコム

カナダ首相のダボス演説が日本に求める新外交 ルールに基づく秩序の崩壊:日経ビジネス電子版

日米協力という最強ナラティブ|唐鎌大輔(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)