「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

選挙の後に届く「請求書」:私たちが読み飛ばした、シビアな現実

 選挙戦を通じて、私たちは「消費税減税」や「積極財政」という魅力的な公約を繰り返し耳にしてきました。しかし、投票というプロセスが終わった瞬間に、これらの言葉は「市場」と「国際政治」という冷酷なフィルターにかけられることになります。

【衆院選の焦点⑩】衆院選後の金融市場:高市トレードは変容を迫られる | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

 早くもエコノミストたちが選挙後、月曜日に私たちが目にすることを語り始めています。それは公約とは質の異なる「現実」です。

高市トレード」の変質と、沙汰やみになる減税

 市場は選挙後の「豹変」を予測しています。

  • 「検討」という名の棚上げ: 「消費税減税」は、社会保障の基礎的財源との整合性から、選挙後すぐに「中長期的な検討課題」へとトーンダウンする可能性があります。甘い公約は、票を得るための一時しのぎに過ぎなかったのか。その誠実さが問われることになります。
  • 変節するマーケット: これまでは「積極財政への期待」が円安・株高を支えてきました。しかし、ひとたび選挙が終われば、政権も市場と向き合わなければならなくなります。野村総合研究所NRI)の木内登英氏によれば、市場は、高市政権が選挙後に積極財政を修正する可能性があるといいます。木内氏は、高市トレードの「円安」、「債券安」、「株高」は変容し、「株安」と予測しています。

凍結解除される「防衛費5%」とステルス増税

 選挙戦では慎重に伏せられていた「負担」の議論が、週明けから急激に動き出す懸念もあるようです。

【衆院選の焦点⑫】衆院選後の日本経済展望:日中関係悪化がリスクに | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

  • 防衛費GDP比5%の足音: 現在の「2%超」はあくまで入り口に過ぎません。トランプ米政権からの圧力や日中関係の緊迫化を背景に、将来的には「5%(約40兆円規模)」への引き上げが現実味を帯びています。

  • 「減税」の裏で進む「抽出」: 減税のニュースの影で、防衛財源を確保するための「防衛所得税」や社会保険料の上乗せといった、実質的な増税(リソースの抽出)が、国民の知らないところで着々と外堀を埋められています。

■ 「安全運転」の終わりと、加速する不信

 日経新聞が報じるように、選挙期間中は「国論を二分する政策(スパイ防止法や安保)」について慎重な物言い(安全運転)が貫かれてきました。

【衆議院選挙】「安全運転」の高市氏 安保・スパイ防止法…「国論二分」の政策踏み込まず - 日本経済新聞

 しかし、大勝という結果を得れば、それらは「信託を得た」として、十分な議論を経ずに一気に法制化される可能性があります。

 先崎彰容氏が危惧する「言葉の空洞化」は、ここにおいて決定的となります。

  • 知性なき統治: 良い面(減税)だけを見せ、副作用(増税・安保リスク)を隠して票を得る行為は、知的誠実さを欠いた「統治の放棄」です。

  • 日中関係の代償: NRIが予測するように、強硬姿勢による対中関係の悪化は、供給網の寸断や渡航自粛を招き、GDPを数兆円規模で押し下げるリスクがあります。


まとめ

孔子は、覇権を争った二人の指導者をこう評しました。

晋の文公は譎(いつわ)りて正しからず。斉の桓公は正しくして譎らず。 (憲問第十四 20)

 目の前の勝利(票)を得るために、権謀術数(いつわり)を用いて本質的な負担やリスクを隠す。それは晋の文公のやり方であり、孔子が「正しからず」と退けた道です。本当の「知性ある統治」とは、斉の桓公のように、言葉に「正(誠実さ)」を宿らせ、困難な現実であっても国民に偽らずに説くことです。

 高市首相は権謀術数の宰相なのか、それとも公明正大なのか。選挙後、私たちの手元に届く、あるいは副作用の説明を省かれたまま届く「重い請求書」を通じて、私たちはその真実を知ることになるのかもしれません。

 

「参考文書」

自民大勝なら消費税減税は沙汰やみなのか 週明けの高市発言を市場注視:日経ビジネス電子版

【衆議院選挙】消費税減税、「5兆円の請求書」を巡るチキンレース 危うい横並び - 日本経済新聞

防衛費「GDP比2%超に」与党候補の5割回答 衆議院選挙後に議論へ - 日本経済新聞

衆議院選挙で見えた日本の課題は? 誰が首相でも逃げられない5つの責任 - 日本経済新聞