年が明けてまだ間もないというのに、勢いある活気を期待する年頭の所感から一転、「大義なき解散」に日本が大きく揺れています。
高市首相、23日の衆院解散を表明 2月8日投開票 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
「疾風に勁草(けいそう)を知る」という言葉がありますが、解散という激しい風が吹き荒れる今、私たちは政治家の言葉を見極める時を迎えています。
高市首相が発した言葉の数々――。物価高に喘ぐ市民を前にしながら、重要予算の成立よりも政権基盤の安定を優先し、消費税を巡る発言を二転三転させるその姿に、新聞各紙は「働く前に解散か」「不誠実そのもの」と厳しい批判を浴びせています。
消費税減税、高市早苗首相の発言にぶれ 「即効性ない」慎重姿勢から一転 - 日本経済新聞
世界に目を向けても、トランプ氏の「ディール(取引)」の論理が加速し、国際秩序はかつてない不確実性が増しています。何が真実で、誰を信じるべきか。その見通しが立たない不安な時代だからこそ、私たちは今、改めて「言葉の意味」を大切にすべきではないでしょうか。
1. 「情報格差の埋め合わせ」という配慮の欠如
『伝わる言語化』の著者・三宅香帆氏は、伝わる言葉には**「自分と相手の情報格差を埋める」**という配慮が不可欠だと説いています。
今の政治はどうでしょうか。首相や政権中枢は、「なぜ今、この山積する課題を差し置いて解散なのか」という真の理由を隠し、国民には「希望」や「信を問う」といった耳当たりの良い言葉だけを投げつけます。これは情報の格差を埋めるどころか、格差を利用して国民を「煙に巻く」行為です。相手が何を不安に思い、何を知りたいかに向き合わない言葉は、三宅氏の定義によれば、単なる「ノイズ」に過ぎません。
2. 「自分だけの言葉」を失ったテンプレート政治
三宅氏は、借り物の言葉ではなく「自分だけの言葉」の重要性を説いていますが、今の政治に溢れているのは、過去のプロパガンダを模倣したテンプレート(型)ばかりです。物価高や災害に苦しむ国民の疑念に対し、誠実な説明を尽くすことなく投げつけられる「希望」という名のテンプレート。それは「言語化」の放棄であり、国民との対話を絶つ不誠実な態度です。
3. 「隠し合う」中に宿る真実
論語に次のような言葉があります。
父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直きこと其の中に在り。(「子路第十三」18)
羊を盗んだ父を息子が訴え出たことを「正直」と誇る葉公に対し、孔子は、親と子が互いを庇い合う「自然な人情」の中にこそ本当の正直さ(直きこと)がある、と説きました。
今の政治はどうでしょうか。「みそぎは済んだ」と裏金議員を再公認するその姿は、人情による「隠蔽」ではなく、自らの権力を維持するための「隠蔽」に過ぎません。
自民、裏金議員を比例重複へ 方針転換「みそぎ済ませた」:時事ドットコム
孔子が説いた「直きこと」とは、損得を超えた人間としての誠実さのこと。不誠実な嘘を塗り重ねて国民を欺くことは、決して「直きこと」ではないのです。
不誠実な嘘を塗り重ねて国民を欺くことは、決して「直きこと」ではないのです。
論語でまとめ
人の生くるや直なり。これに罔(くら)くして生くるは、幸いにして免るるなり。(「雍也第六」19)
人間がこの世を生きていけるのは、本来「率直」であるからだ。率直さを欠き、人を欺いて生きていられるのは、たまたま天罰を免れているに過ぎない、という意味です。
消費税減税を「武器」として使い、選挙の票のために信念を曲げる。あるいはトランプ氏のような予測不能な力に阿(おもね)り、本質的な課題を先送りにする。そうした「不誠実な言葉」で今を凌いでいる政治家たちは、孔子に言わせれば、ただ「幸運にも災難を免れているだけ」なのです。
私たちは、美しく飾られたレトリックを鵜呑みにするのはもうやめましょう。情報の格差を隠れ蓑にする言葉を排し、私たちの痛みに率直に向き合う「誠実な実行」を求める。 2月8日の投開票日は、私たち国民が、言葉の「誠実さ」を取り戻すための、最初の一歩となるのかもしれません。
「参考文書」
「高市さんは働く前に解散か」 物価高に苦しむ市民から失望の声 | 毎日新聞
高市解散、財政拡張へ一本道 身動き取れぬリフレ派に転機も - 日本経済新聞
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