現代社会で空気のように存在するソーシャルメディア SNS。私たちはその恩恵を享受していますが、その光が強ければ強いほど、影もまた濃くなっています。
2025年12月、世界に衝撃が走りました。オーストラリアで16歳未満の子どものSNS利用を禁止する世界で初めての法律が施行となりました。
オーストラリアが16歳未満のSNS利用を禁止、世界初 他国も追随するのか? | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
極めて厳格な措置です。これは、SNSの問題が、もはや個人のリテラシーや親の責任の範疇を超え、国家の安全保障や公衆衛生に関わるレベルに達していることを示しています。
なぜ、国家は「禁止」という劇薬を選ばざるを得なかったのでしょうか? この世界的規制の裏側にある、SNSが抱える**「負の遺産」、すなわち構造的な問題を分析、その深部に迫ります。特に、精神的な健康被害に加え、経済的な被害、そして私たちの社会を分断する「デマの暴走」**のメカニズムを検証します。
精神と社会を蝕む構造的欠陥
「いいね」の数が自己肯定感を左右し、他人のキラキラした投稿を見て自己嫌悪に陥る。このメンタルヘルスへの影響は、もはや広く知られています。しかし、問題は個人の内面だけに留まりません。SNSの設計自体が、社会の健全性を蝕むように作られているからです。
巨大プラットフォームは、ユーザーをサイトに長く留める**「エンゲージメント(関与)」**を至上命題としています。このアルゴリズムは、穏健な情報よりも、過激な主張や感情を煽るコンテンツを優先的に拡散する傾向があります。
【深刻な例:キャンセルカルチャーとデマの暴走】
日本でも近年、この構造の危険性が露呈しました。国際協力機構(JICA)が推進していた**「ホームタウン事業」が、ナイジェリア政府の誤った発表とSNS上の「移民が増える」というデマによって、瞬く間に炎上し、最終的に事業撤回に追い込まれました。本来の事業目的や背景は完全に無視され、集団の正義感と誤情報が暴走し、善意の事業が社会的に「キャンセル」されたのです。これは、「情報の正確性」が「感情的な扇動」**に完敗した恐ろしい事例です。
巧妙化する「経済的」な負の遺産
精神的な被害や社会的な分断と並行して、SNSはユーザーの懐を狙う**「経済的な負の遺産」**も深刻化させています。
1. なりすまし詐欺と違法広告の蔓延
「簡単に儲かる」「特別に教える」といった広告は、著名人や金融機関になりすますことで、信頼性を偽装し、ユーザーを違法な投資やロマンス詐欺に誘導します。巧妙に作られたこれらの広告は、特に判断力が低下しがちな高齢者や、経済的に不安を抱える層を狙い撃ちにし、人生を破壊するほどの金銭的被害を与えています。
2. 違法オンラインカジノへの誘導
さらに深刻なのは、違法なオンラインカジノへの誘導です。インフルエンサーや裏アカウントが**「一攫千金」の夢をちらつかせ、若者を中心に違法ギャンブルへと誘い込みます。
違法オンラインカジノ337万人利用 賭け金競輪超え1兆円 - 日本経済新聞
これは単なる金銭の損失だけでなく、参加者自身が国内法に違反する法的なリスク**を背負わされるという二重の危険性をはらんでいます。
SNSの問題は、人の感情を刺激し(精神的影響)、社会を分断し(デマ・キャンセル)、**財産を奪う(詐欺)**という複合的な構造を持っています。オーストラリアが規制に踏み切ったのは、これらの問題が「放置できない」レベルに達したからです。
引き続きこのSNS問題をテーマに、深堀していきます。次回は、この巨大な問題に対し、EUの「デジタルサービス法(DSA)」を筆頭に、世界各国がどのような**「規制の波」**を起こし、巨大テック企業の責任をどう追及しようとしているのかを徹底検証します。
論語でまとめ
君子は言を以て人を挙げず、人を以て言を廃せず。(「衛霊公第十五」23)
君子は、その人が立派なことを言ったからといって、その言葉だけを理由に人を高く評価したり、登用しない。また、どんなつまらない人の言葉であっても、その内容が道理にかなっていて立派であれば、その人の発言だからという理由で意見を無視したりしないと孔子は言いました。
孔子は、人物評価や意見の採用における公平無私の姿勢を説きます。言葉巧みであることと、実際に能力があることとは別であり、また、発言者が誰であるかということと、その発言内容の正当性・妥当性とは別である、という戒めです。言葉や発言者の属性にとらわれず、物事の本質を見極めることが重要であるといいます。 このSNS時代、気にしておきたい孔子の言葉です。
「参考文書」
マレーシア、16歳未満のSNS登録制限へ 来年導入の可能性 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
クレジットカード不正利用、過去最悪555億円 番号盗用止まらず - 日本経済新聞
(懐メロが流れる近くのスーパーで昨日聴いたのは浜田省吾さんの「J.Boy」。日本が華やいでいたころの歌ですね。そのとき現代はだいぶ異なっているようです。いまでは経済対策で「おこめ券」の配布が検討されるのですから。それにしても、その意義を語る農水大臣のことばに誠実さを感じません。現代をよく表している症状ではないでしょうか。)


