「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

不確実なインフレ時代を生き抜く「エフェクチュエーション思考」【ポイント経済圏疲れとZ世代③】

 前回、ポイント経済圏の熾烈な競争が、いかに企業のリソースと社会の生産性を蝕む「ムダな戦い」であるかを指摘しました。

生産性の敵!日本経済を蝕む「ムダな競争」の正体【ポイント経済圏疲れとZ世代②】 - 「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

 インフレという予測不能な波が押し寄せる現代において、未来の市場を正確に**「予測」し、そのために巨大なムダなコストを投じる**戦略は、もはや通用しません。

 今こそ、ムダな競争から脱却し、自分の手で未来を切り開く思考法が必要です。それが、優れた起業家が実践するエフェクチュエーションです。この思考法は、私たちに**「自分の力で、今をコントロールできる」**という希望を与えてくれます。

 

 

エフェクチュエーションの哲学:手段から始める創造性

 エフェクチュエーションは、従来の戦略論(目標を決めてから手段を探す「因果論」)とは真逆です。不確実な環境下では、遠い未来の目標を予測するより、**「今、手元にあるもの」**から何ができるかを考える方が、はるかに合理的で力強い。これは、ムダを排し、今を最適化するための哲学です。

💎 思考を転換する「5つの原則」

特に、私たちが見直すべきは以下の原則です。

エフェクチュエーションの原則 インフレ時代への応用
手中の鳥の原則 「ムダな投資」を直ちに止め、「確実なリソース(知識、コスト削減余地)」から行動を始める。
許容可能な損失の原則 成功時の「夢の利益」ではなく、失敗しても「許容できるコスト」の範囲で、小さな実験を繰り返す。
レモネードの原則 インフレや経済圏疲れという「ネガティブなレモン」を、「シンプルさ」という新しい価値(レモネード)に変えるテコとして利用する。

 

「ムダの排除」を成長のエンジンに変える

 エフェクチュエーションを適用すれば、前回の記事で問題視した**「決済手数料」や「ポイント販促費」**という巨額のムダなコストは、**成長のための「手段」**に生まれ変わります。

  • 還元率競争からの卒業: 「ポイントをどこまで増やすか」という他社依存の予測ゲームから降り、「どれだけ手数料を削減できるか」という自社でコントロール可能なコスト構造の最適化に集中します。
  • 「シンプルさ」の価値創造: 「経済圏疲れ」という負の現象を、Z世代・α世代が求める**「タイパ(時間の節約)」を最大化する「ストレスフリーな決済体験」**の創造へと転換します。現金のみスーパーは、まさに「シンプルさ」という価値に特化した、小さなエフェクチュエーションです。

パイロットのように未来をコントロールする

 最も有効な原則が、「飛行機のパイロットの原則」です。優秀なパイロットが天候(市場)をただ予測するのではなく、操縦桿(自社の行動)を握って目的地へ向かうように、私たちも未来を自らコントロールすべきです。

 巨大なコストを投じた「還元率競争」は、他社の行動に振り回される「受動的な戦略」でした。しかし、エフェクチュエーションは、自社のコスト構造、提供価格、パートナーシップを自ら決定し、市場を能動的に形成していくことを促します。

 

 

ムダな競争に終止符を打ち、前へ進もう

 インフレと不確実性に満ちた時代は、私たちに「ムダな戦い」をやめる勇気を求めています。

 エフェクチュエーション思考を手に、私たちは過去の因習に縛られた競争から脱却し、手持ちの手段とコントロールできる行動に集中することで、新しい価値と持続的な成長という名のブルー・オーシャンを自ら切り開くことができるのです。

ブルーオーシャン (Blue Ocean)」とは、競争相手のいない(あるいは非常に少ない)未開拓の市場や分野を指します。 競争の激しい既存市場から抜け出し、新たな市場や需要を創造することで、競争のない世界を目指します。 
対照的に、レッドオーシャン (Red Ocean) は、多くの競合企業がひしめき合い、血みどろの競争(価格競争など)を繰り広げている既存市場を指します。 

ブルーオーシャンでは、競争を回避し、自社で価格を決定でき、価格競争に巻き込まれにくいとされ、低コストで高い売上を目指せる可能性があります。また、業界の常識や慣習にとらわれず、独自の価値を提供することに集中できるというメリットがあります。

論語でまとめ

仁に里(お)るを美と為す。択(えら)んで仁に処(お)らずんば、焉(いずく)んぞ知たるを得ん。(「里仁第四」1)    

「仁」思いやりの心、人としての正しい道を拠り所(心の故郷)とすることが、最もすばらしいことである。もし、あれこれ選んで、その「仁」のあるところに身を置かないならば、どうして物事の根本が分かる「知者」と言えようかと孔子は言いました。

 様々な選択をする際に、「仁」という基準を無視して目先の利益や利便性を優先するような生き方では、真の道理を理解した「知者」とは言えない、と孔子は戒めます。 

 次回は、この思考法を具体化し、日本の巨大インフラを持つJR東日本Suicaが、いかにしてこのムダを排し、日本経済の「再生」をリードし得るかを考察します。

 

「参考文書」

キャッシュレスはつらいよ 人気ラーメン店「店にとって良いことが一つもない」:日経ビジネス電子版

 


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(今日の中国の歌ではなく、日本の歌。徳永英明さんの「最後の言い訳」1988年リリース。シンガポール駐在時に、知り合いのシンガポール人にこの曲の入ったアルバムを日本出張のおみやげに渡したことを思い出します。政権が変わったことによる高揚感が薄れ、現実を直視しなければならないことがおきています。首相発言を端にした外交問題(株価も影響をうけているようです)、6期ぶりにマイナスに転じたGDP。問題解決が進んでいないのですから、こんなものなのかもしれません。うん~)