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【トランプ大統領来日を振り返る】その「高揚感」の裏側—私たち世代に跳ね返る3つのジレンマ

 トランプさんが来日しました。政府は歓待し、一連の行事が滞りなく進み、成功裏に終わったようです。高市新政権の発足もあって、「日本、変わるかも?」という高揚感と期待感が生まれました。特に私たち若い世代は、長引くデフレや閉塞感から抜け出す「強いリーダーシップ」を求めています。

トランプ大統領 韓国に到着 3日間の訪日を終える

トランプさんは韓国に向かう大統領専用機「エアフォースワン」機内で記者団の質問に対し「日本への訪問は素晴らしかった」と述べ、高市総理について「聡明でエネルギッシュ」と賞賛しましたそうです。(参考:テレ朝NEWS)

 しかし、政治の成功は「ムード」だけでは測れません。この高揚感の裏で、日本は構造的な3つのジレンマに直面しています。これは、将来の私たちの生活に直結する「宿題」です。

 

 

希望の「ムード」と、その先の現実

 高市政権が目指す「強い日本」の道のりには、乗り越えなければならない3つの大きな矛盾(ジレンマ)があります。

  • 安全保障 vs 経済の自律性: 同盟強化のために米国製装備を買うほど、日本の技術育成が遅れ、お金が海外へ流出するというジレンマ。これは下手をすれば、中国を利するとリスクが伴います。
  • 成長の期待 vs 財政の現実: 新たな成長戦略のもと、景気回復を待つ間に、国債発行と円安でコストが膨らみ、投資効果が薄れてしまうというジレンマ。(👈 本題)
  • 外交の成功 vs 世論の関心: 派手な外交に世論の関心が集まり、地味な財源確保の議論が深まらないジレンマ。

「成長の期待」と「財政の現実」のジレンマ

 私たちが最も期待する「経済成長」ですが、これが実現する前に、「財政の罠」が待ち構えています。

💸 なぜ「積極財政」が裏目に出るのか?

 高市首相の「責任ある積極財政」は、まず国債(国の借金)を発行して投資し、その投資で景気が良くなって税収が増えれば返せる、というシナリオです。しかし、足元では二つの大きなコスト増がこのシナリオを脅かしています。

① 円安によるコスト増の増幅

 多くの公共事業の工事費が増大しています。その影響で、工事の遅延や見送りとなっています。円安による資材費の高騰の影響といわれます。防衛装備品もまた同じです。その多くを米国から調達しています。円安が進むと、その輸入コストが急騰します。

例: リニア新幹線の工事費が4兆円も増額したそうです。その大きな要因の一つは、資材費の高騰です(この他にも人件費の増加も要因とされています)。

リニア総工費上振れ、物価高と難工事が直撃 JR東海は追加資金調達も - 日本経済新聞

政府が「未来への投資」としてお金を使おうとしても、その多くが高くなった輸入コストとして海外に流れてしまうのです。これは、私たちの「投資のパンチ力」を弱めています。

 円安が進行すると、外貨建てで取引される輸入資材の円換算価格が急騰します。海外で10%値上がりした資材が、円安によって国内では15%~20%の価格上昇として現れる「増幅効果」も働いているといわれます。

📉 財政が厳しくなる懸念

 この工事費の増大は、国の財政を圧迫し、高市首相が目指す「責任ある積極財政」の前提を崩しかねません。既存の公共事業は、物価高騰を想定しない当初の予算では賄いきれなくなり、予算の追加措置や工事の中断・着工見送りを余儀なくされます。

 これは、予定していたインフラ整備の遅れにつながるだけでなく、追加の財政支出(国費)が必要となるため、財政負担が純増します。

 防衛費の増額に加え、公共事業費の高騰により「モノを買う費用」が増大すると、財政支出全体が膨張し、社会保障費など他の重要な分野への予算配分が圧迫され、財政の硬直化が進みます。

成長戦略への影響

 高市首相の「積極財政」は、防衛力強化やインフラ投資を「未来への投資」と位置づけ、成長による税収増を期待するものですが、コスト高で投資効率が低下し、プロジェクト自体が停滞すれば、期待した経済成長効果や税収増が得られにくくなります。

 したがって、現在の円安水準は、歳入増(輸出企業などの法人税増)というプラス面がある一方で、歳出増(公共事業費高騰、エネルギー関連支援の増加など)というマイナス面を同時に生み出しており、財政規律を大きく緩めれば、財政の厳しさはさらに増すことが懸念されます。

 

 

② 借金(国債)の利払い費増大

 防衛費などのために国債発行が増え、さらに景気が回復に向かえば、金利が上昇するリスクがあります。金利が少しでも上がると、日本が抱える巨額の借金に対する利払い費が雪だるま式に膨らみ、増えた税収(成長の果実)が利払いに消えてしまう恐れがあります。これは、将来、私たち世代が使えるはずだった予算が奪われることを意味します。

📉 若い世代が負う「コスト」

 つまり、成長が実現するまでの「橋渡し」として始めた国債発行が、円安によってコストが増幅し、利払いでさらに財政を圧迫するという「財政の悪循環」に陥る危険性があるのです。

 このリスクは、「成長が実現すればラッキー」という楽観論に頼るのではなく、増えた借金とコスト増を将来的に負担する私たち若い世代が、最も真剣に議論すべき問題なのです。

高揚感の次に必要なこと

 高市政権への期待は理解できますが、支持する私たちだからこそ、「本当にその投資は国内の成長につながっているのか?」と冷静に問い続ける必要があります。

 私たちは、トランプさんとの会談のムードに流されず、「防衛費増額の財源がどうなるのか」「コスト高をどう抑えるのか」という地味で重要な議論にこそ目を向けるべきなのです。それが、未来の自分たちの首を絞めないための「責任」ではないでしょうか。

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論語でまとめ

君に事(つか)うるに礼を尽くせば、人以て諂(へつらい)と為すなり。(「八佾第三」18)

 君主に仕える際に、礼儀の全てを尽くすと、世間の人は、それを媚び諂いと受け取るものだと孔子は言いました。 

 礼を尽くして行動することが、必ずしも正しく評価されるとは限らないという現実を孔子は指摘しています。孔子が説く「礼」とは、相手への敬意を表す正しい作法のことです。しかし、礼儀を重んじすぎるほど徹底すると、見る人によっては、媚びへつらっているように見えてしまうことがあります。表面的な振る舞いだけを見て本質を見抜けない人々の存在を孔子は示唆しています。君主への礼儀は、あくまで自分の主体的な意思から発するものであり、他者からの評価を目的とするものではないという、孔子の倫理観を読み取ることができます。

王冠

 韓国の李在明大統領が、トランプさんに慶州の国宝「天馬塚金冠」のレプリカを贈呈し、韓国の最高勲章「無窮花(ムグンファ)大勲章」も授与したといいます。

韓国、トランプ氏に「金の王冠」贈呈 韓国最高勲章も授与 - 日本経済新聞

 トランプ氏に贈った金冠は新羅時代の都だった慶州の古墳から1973年に出土した王冠の複製だそうです。儀礼、外交辞令は求められるのでしょうが、度が過ぎると媚び諂いにも見えます。失礼なく、敬意を表していればよいのではないでしょうか。

 先日もトランプさんは米国内で巻き起こる「王はいらない」デモを嘲笑するような投稿をしていました。

「王はいらない」デモに対抗、トランプ氏が動画を共有 - CNN.co.jp

 生成AIで作られた見られる動画には、トランプさんが王冠を戴いて戦闘機に乗る姿が映っていました。どうなんでしょうかね。

 


www.youtube.com

(今日の中国の歌:Alex Toの「無心傷害」。1996年リリース。Alexは香港生まれですが、香港と台湾を拠点しているといわれます。私より先にマレーシアペナンに赴任した先輩の得意の歌です。その先輩とはその後色々あってあまりより印象が残っていませんが、歌の方は良い印象で心に残っています。)

 

「参考文書」

日米同盟、「中国の軍事侵略抑止」に極めて重要 ヘグセス米国防長官 写真15枚 国際ニュース:AFPBB News

防衛費増、高まる財源の壁 GDP比5%なら年30兆円規模 - 日本経済新聞

日韓から9000億ドルをしぼり取る、トランプ氏の手法とは-QuickTake - Bloomberg

「米国王」トランプ氏が崩す4つの境界 近代国家の先祖返り招く - 日本経済新聞