なぜ今、転売ヤー問題が深刻なのか? 限定品が買えない、価格が高騰するなど、社会問題になっています。それに加え、対策が後手に回るフリマアプリの健全性が問われています。
スタバ転売騒動で「メルカリ」に殺到する怒りの声…じつは規約違反すら野放しになっている実態【転売ヤー】(川崎 さちえ) | マネー現代 | 講談社
プラットフォーマーであるメルカリがAIを活用しているのに、なぜ有効な対策が実行されないのか、そこには組織的な転売ヤーの存在、また、その問題の裏側には「円安」の問題も絡んでいるようです。いくつもの要因が複雑に絡んで問題解決が困難になっているといわます。
チケットの不正転売など一部を除けば、転売行為の多くは違法ではありません。転売行為は利益を追求する経済活動の一つであり、「高く売ること」自体はフリーマーケットの自由な取引原則の一部といわれます。
転売ヤーの知られざる実態:もはや「個人」ではない
問題視される転売は、単なる個人の小遣い稼ぎではなく、組織化されたグループによる、大規模なビジネスとして行われているそうです。
中国系転売ヤーの活動実態と背景
転売組織は、アルバイトやパートを雇い、店舗の開店前から行列に並ばせたり、フリマアプリで大量に購入させたりする「買い子」や「並び屋」として利用しています。これにより、物理的な買い占めを組織的に実行します。
買い占めた商品は、一時的に集積・梱包し、中国へ向けて発送するための倉庫や物流拠点を国内に設置しているケースが報告されているといいます。これにより、大量の商品を継続的かつ効率的に輸出しています。
主なターゲット商品
転売ヤーが狙うのは、中国市場で需要が高い、あるいは日本でしか手に入りにくい限定品で、「価格差」が取れる商品を狙っているといいます。限定のゲーム機、トレーディングカード、アニメグッズ、日本の有名ブランドの限定コラボ商品などに加え、百貨店などで購入される高級化粧品、限定スニーカー、ハイブランド品などもターゲットになっているといいます。日本の限定品や正規流通品に対する信頼が高く、中国国内で高値で取引されるといいます。この価格差が、転売による大きな利益を生み出す源泉となっています。
転売を助長する構造的要因:円安という「追い風」
近年続いている円安も、中国人転売ヤーにとって大きな追い風となっています。日本国内で正規価格(円建て)で商品を仕入れても、海外、特に中国市場などで自国通貨に換算して売る場合、「為替差益」、円安のおかげで利益率が向上するといわれます。円安が転売活動に参入するインセンティブを強めています。
中国系転売ヤーが日本をターゲットにする最大の理由は、中国国内の巨大な市場と、それによって生じる「価格差(プレミアム)」だそうです。中国は14億人の市場です。たとえ人口のわずかな割合の人が欲しがる商品であっても、その需要は日本の市場規模を遥かに超えるといわれます。
メルカリの反撃:AIの戦略的活用による不正対策
フリマアプリのメルカリは、「AIネイティブカンパニー」という方針のもと、AIをサービスの中核に据え、不正対策を強化しています。
メルカリ、トラブルメーカー「3段階」で判定 AIに託す再起 - 日本経済新聞
組織全体でAI化を推進、この技術革新こそが、常に変化する転売の手口に対抗するための最大の武器と位置づけています。
AIによる不正検知のアプローチ
従来のキーワードや画像認識に加え、AIを用いて、アカウントの行動パターン(異常検知)を分析しているといいます。短時間での大量購入、不自然な取引履歴、支払い方法などを総合的に判断し、転売ヤーの「兆候」をリアルタイムで検出する精度を高めているそうです。これにより、新しい転売のターゲットや実態のない「権利」などを販売する手口が登場しても、人間の監視員がルールを定めて対応するのを待つのではなく、システム側が「これは異常な取引である」と判断し、自動的に購入を制限したり、出品を非表示にしたりする対応を目指しているといいます。
人による監視の効率化と専門化
しかし、AIには誤検知のリスクが残ります。このため、今のところ、完全に人に代わることはできません。しかし、AIが「疑わしい取引」を抽出することで、人の監視チームはより複雑で巧妙なケース(AIが判断できないグレーゾーンや新しい手口)の調査・判断に集中できるようになります。これにより、対応スピードと精度を向上させることができるといいます。
AIで「怪しい取引」を効率的にスクリーニングし、最終的な判断は人の目が行う体制で、誤検知を防ぎつつ、対応スピードを上げていくようです。
転売対策の限界と今後の課題
AIをもってしても、転売ヤーの絶え間ない手法の変化に対応し続ける「いたちごっこ」からは逃れられないことが出来ないのが現状といいます。AI技術は監視の効率を飛躍的に向上させますが、人間の悪意や創造性が生み出す新しい転売の手口を完全に先回りして防ぐのは、さらなる技術の進化が必要といいます。現状でも、AIが「適法な高額出品」と「市場を混乱させる悪質な転売」を区別させるのは非常に難しい課題になっています。どこからを「悪質」と判断するのか、これは技術的な問題というよりは、倫理的な基準に依存するのですから。
転売問題の解決には、プラットフォームの努力だけでなく、ユーザーによる「通報」の協力や、メーカー側の「限定品商法の見直し」なども必要になりそうです。健全なマーケットプレイスを守るためには、メルカリのAI戦略に期待しつつ、消費者自身も賢い行動を心がけなければならないようです。
論語でまとめ
季康子、盗を患(うれ)えて孔子に問う。孔子対(こた)えて曰わく、苟(も)し子の欲せずんば、これを賞すと雖(いえど)も窃(ぬす)まず。(「顔淵第十二」18)
季康子が盗賊がはびこるのを心配して孔子に問いました。「もしあなたが貪欲でなければ、たとえ褒美を出して盗みを奨励しても、民は盗みをしないでしょう」と孔子は言いました。
それにしても、転売ヤー問題にも円安が影響しているとは......
AI活用などによりメルカリなどのプラットフォーマーが健全性を高めていく努力が求められるのは避けられないことにしても、根本的には、過度に進行している「悪い円安」を是正する必要がありそうです。それがインセンティブ 誘因となって様々な不都合が顕在しているのですから。
ようやく「次の総理」が決まりそうです。「悪い円安」など滞っている様々な問題を早急に解決することはできるのでしょうか。兎にも角にも、健全な政権運営に努めてもらいたいものです。
「参考文書」
メルカリが「AI」と「スタートアップ回帰」を推進する理由:山田進太郎 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
メルカリ、生成AIで意思決定速く 年内めどに業務系システム「統合」 - 日本経済新聞
レンタルバッテリー、「メルカリ転売ヤー」の餌食に ChargeSPOT運営元が注意喚起 - ITmedia Mobile
メルカリ、トラブル急増の商品出品禁止 Switch2悪質転売受け - 日本経済新聞


