多くの先進国で政治が混乱しています。米国では政府機関の閉鎖の長期化が危惧され、フランスでは来年度予算の成立が難航しています。
マクロン仏大統領、48時間以内に新首相指名 解散回避へ - 日本経済新聞
民主的なプロセスの機能不全の懸念が高まっています。現代民主主義が直面する問題のようです。この傾向は、日本も同様のようです。
米国では、共和党と民主党のイデオロギー的な隔たりが深まり、妥協が困難になっています。フランスでも、マクロン大統領の少数与党体制下で、議会内の協力が得られにくくなっています。伝統的な政党や政治家に対する不信感が高まり、急進的な左右両極の政治運動が台頭しています。
仏全土でマクロン大統領への抗議デモ、混乱の一日に 写真12枚 国際ニュース:AFPBB News
SNSなどの普及により、人々が自分と似た意見にしか触れない「フィルターバブル」によって、社会全体の合意形成が難しくなっているともいわれています。
反エリート主義が、「善良な一般市民」と「腐敗したエリート(既得権層)」という二項対立の構図を生み出しているともいわれています。長引く経済格差、グローバル化の負の側面、そして度重なる政治スキャンダルにより、有権者の中で「既成の政治家、学者、メディアは自分たちの利益ではなくエリート層の利益のために動いている」という不信感が深まっているといいます。
この不信が、既存のエリートを徹底的に批判するポピュリストの政治家や運動への支持を加速させるそうです。こうしたポピュリストが主導する政治運動では、エリートと見なされる相手との「妥協」は裏切りと見なされるといいます。
日本では、欧米のような強烈な分極化は見えないものの、根底にある反エリート主義や不信感は共通しているのではないかといわれているようです。
論語でまとめ
子貢曰く、管仲は仁者にあらざるか。桓公(かんこう)公子糾(こうしきゅう)を殺すに、死するあたわず、又た之を相(たす)く。子曰く、管仲は桓公を相けて、諸侯に覇たらせ、一たび天下を匡(ただ)し、民は今に到るまで其の賜を受く。管仲微(な)かりせば、吾 其れ被髪左衽(ひはつさじん)せん。豈(あに)匹夫匹婦の諒(まこと)をなす、自ら溝涜(こうとく)に経(くび)れて、之を知るなきが若(ごと)しや。(「憲問第十四」17)
子貢は、個人の信義を重んじる立場から、管仲の行動は道徳的に許されないと考えます。これに対し、孔子は管仲の功績の偉大さを強調します。桓公を補佐して諸侯をまとめ上げ、天下を正しい道に導いたと述べ、もし管仲がいなかったら、中原の国々は異民族に支配され、文化を失っていたかもしれないといいます。個人の信義のために溝に身を投げて死ぬような「匹夫匹婦の諒(つまらない信義)」にこだわるべきではないと説き、天下を安定させた管仲の偉業は、小さな道徳観を超えるものだと評価します。
孔子は、社会全体に幸福をもたらすという大局的な観点から人物を評価しています。
「倉廩実ちて礼節を知る」、管仲の言葉といわれます。人々に精神的な成熟や道徳的な教養を育むためには、まず生活基盤を安定させることが必要であるといいます。言い換えれば、人が精神的にも文化的にも発展するためには、物質的な安定が不可欠であるということです。管仲は、塩と鉄の専売制という経済政策を実施し、斉の財政を安定させたといいます。
管仲の評価から学べる最も重要な点は、道徳的な完璧さよりも、「社会を機能させ、国民を危機から守る実務的な成果」を優先する統治能力、政治的リアリズムです。今を生きる現代の政治家も、理念やイデオロギーの対立に固執するのではなく、経済や安全保障、環境などの眼前の難しい課題に対して、最も効果的で現実的な解決策を打ち出し、実行する責任を果たす必要があります。これは、ポピュリズム的な人気取りではなく、統治能力を証明することです。長期的な視点に立ち、短期的な給付金や減税といった大衆迎合策に頼らず、国家の持続可能な財政基盤を確立し、国民生活を安定させるための構造改革や大胆な経済戦略を実行する勇気を持つべきなのでしょう。
「倉廩実ちて礼節を知る」、財政的な安定がなければ、社会の道徳や秩序も崩壊してしまうのですから。
また、管仲は諸侯間の協調を促し、戦争を抑制しました。共通の目標を設定し、その実現のために、異なる意見を持つ勢力と粘り強く対話し、妥協を通じて、国益という政策を実現させたのです。現代の政治も、これにならうことはできるはずではないでしょうか。
日本においても、政治の混乱が日を追って深刻化しているようです。各党党首が己の信義ばかりを主張しているように見えます。個々をみればそれなりの合理性は認められるものもありますが。
しかし、未来はひとつしかありません。行きつくことのできる未来はひとつなのです。未来を台無しにしない行動が今、求められています。
どんな未来が待っているのか。そのときの政治的リーダーは誰になのしょうか?
「参考文書」
米政権、職員の大量解雇開始 政府閉鎖、終わり見えず:時事ドットコム
立憲民主党・野田佳彦代表、玉木雄一郎氏に首相指名の条件引き下げ要求 会談を打診 - 日本経済新聞
純債務残高「突出して高くない」? 高市氏と財務省で異なる見解 | 毎日新聞
積もる不満、募る焦り 連立協議で強硬◆公明・創価学会【解説委員室から】:時事ドットコム



