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高市トレードと「悪性の円安」:株高の裏で日本をむしばむ円安の正体

 日経平均株価が史上最高値の更新が続いています。その一方で、円安もまた進んでいます。「高市トレード」、高市新総裁が誕生し、リフレ政策復活への期待感から、市場は、円売り・債券売り・株買い一色の地合いといいます。これに、政治不安、与党内の不和が円安を後押ししているそうです。

自民・高市総裁、行き過ぎた円安を誘発するつもりはない - Bloomberg

 心理的節目の155円が視野に入る中、投資家の間では政府・日本銀行が為替介入に踏み切る水準がどこになるのかに注目が集まっている。(出所:ブルームバーグ

 過去に日本当局が円安阻止のために大規模な介入に踏み切った水準が150円台付近にあり、防衛ラインとして意識されているからだといいます。為替介入は、活発な「円キャリートレード」の巻き戻しを誘発します。ひとたび巻き戻しがおきれば、円高に一気にふれるといいます。

 

 

  現在の150円超の歴史的な円安は、メリットが「一部の大企業」に集中する一方、デメリットが「国民生活全般」に広く及び、しばしば「悪い円安」と呼ばれ、経済の二極化を加速させているといいます。

波乱の円安、高市総裁への反応 ~1ドル153~155円台に向かうのか?~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所

 また、現在の円安は、外国から見た日本の資産に「割安感」をもたらす一方で、国内の家計に対しては「購買力の低下」という二面的な影響を与えているともいいます。

 円安が誘発する「資産流出」の動き 📉

 歴史的な円安は、外貨を持つ投資家や企業にとって日本の資産を相対的に安価に取得できる機会となり、外国企業やプライベート・エクイティ(PE)ファンドによる日本企業の買収提案を急増させています。日本企業は、「安くてお買い得な投資対象」と見なされているといいます。また、都心部の高級マンションや、北海道・京都などの観光地・水源地の土地への海外からの資金流入も活発化させています。これによって、都心部や観光地(例:ニセコ)の地価やマンション価格を押し上げ、一般の日本人や地元住民が生活拠点を維持できなくなる「ジェントリフィケーション」を引き起こす懸念が指摘されています。

円安がもたらす「家計の圧迫」と実質賃金の低下 💸

 円安の最も直接的で深刻な影響は、輸入物価の高騰を通じて、国内の消費者の生活を圧迫しています。実質賃金は、8カ月連続でマイナスが継続しており、働く人の実質的な購買力は低下し続け、それを顕著に示しています。

 コメ価格が高止まりしています。生産に必要な肥料、農薬、燃料などの輸入コストが円安により急騰。このコスト上昇分が価格に転嫁されています。コメ価格が高止まりする一因といわれています。

 

 

 現在の円安は、資本を持つ層にとっては「投資機会の拡大」となる一方で、一般の家計にとっては「生活費の増加」と「実質的な貧困化」を招くという、国内における経済格差の拡大要因にもなっているようです。

悪性の円安

  経済学的に円安がすべて悪いわけではありませんが、現在の円安は、多くの人が体感するデメリット(生活苦)が、経済のメリット(賃金上昇)を上回る「悪性の円安」状態といいます。

ガソリン暫定税率廃止で「実質賃金」はまた下がる!?長期低落を食い止める王道は競争力回復 | 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る | ダイヤモンド・オンライン

 本来、「良い円安」とは、輸出産業の利益が国内の設備投資や賃金上昇につながり、国内需要を押し上げるサイクルを生むものですが、現状では物価の上昇スピードに賃金が追いつかず、家計を犠牲にして企業利益を伸ばす構図になっていることが、世論のネガティブな評価に繋がっているといいます。

円の適正水準

専門家は、現在の150円台の円相場が日本の実体経済に対して「過度な円安」であるか、あるいは中長期的な経済の安定に資する水準はどこかを、.「購買力平価(PPP: Purchasing Power Parity)」、企業の「為替想定レート」を参考に議論しているそうです。

購買力平価は、「同じモノやサービスは世界中どこでも同じ価格になるはずだ」という一物一価の法則に基づき、為替レートを算出する理論値で、中長期的な購買力(消費者としての価値)の適正水準を示す目安とされます。これに基づくと、ドル円のレートは1ドル=100円〜120円程度を適正水準とする見解が多く見られるといいます。IMFなどが示す購買力平価は、この水準よりさらに円高の90円前半となっています。現在のレートがこの水準を大きく上回っていることは、円が日本の実質的な購買力以上に「割安に放置されている」ことを示唆しているといいます。

 企業の実務的・構造的安定性から見た中立水準は 130円〜140円 程度。この水準であれば、企業は十分な利益を確保しつつ、コスト増もある程度吸収できるといわれます。現在のレートは企業の想定を上回るため、さらなる増益要因ですが、過度な円安は逆にコスト高や政策介入のリスクを高めるため、一般的には必ずしも企業にとって最良とは言えません。

 また、日本の経済構造の変化(製造業の海外移転、輸入依存度の高まりなど)を考慮すると、適正水準そのものが切り上がったという見解もあるそうです。これまでは、100円前後が適正とされていましたが、日本の輸入依存度が高まり、内需の構造も変化した現代では、120円〜130円程度が新たな中立的な水準であるという議論もあるといいます。

 現在の150円台の円安は、これらの基準から見て「日本の実体経済の力と比べて明らかに円が売られすぎている(過度な円安)」という点で、大半の専門家の意見が一致しています。この「過度な円安」が、輸入インフレや実質賃金の低下というネガティブな影響を及ぼしています。やはり「悪い円安」のようです。

 

 

論語でまとめ

君子は周(あまね)くして比(ひ)せず、小人は比して周からず。(「為政第二」14)

 君子は、誰に対しても公平に分け隔てなく親しくつきあうが、徒党を組むようなことはしない。一方、小人は、利害や感情で特定の仲間とだけ親しくつきあい、広く公平に人と親しむことがないと孔子は言いました。

 

 こんなときだからこそ政府、日銀にあっては、何においても「公平」を旨としもらいたいものです。それが欠けるからトラブルも増えるのでないでしょうか。政治不安の懸念も高まっていそうです。「公平」についてよくよく考えてもらいたいものです。

 

「参考文書」

「高市トレード」で円安加速、注目集める政府・日銀の為替介入ライン - Bloomberg

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