「世界競争力ランキング」、スイスのビジネススクールIMD 国際経営開発研究所が、各国の経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラの4つの分野から競争力を分析し、順位付けして毎年発表しています。このランキングは、各国の経営環境や政策を評価する指標として世界的に注目されています。
2025年版では日本は35位でした。1989年から1993年までの間、日本は1位を獲得し続けましたが、1990年代後半になると順位を大きく落としはじめ、近年では30位台後半で推移する低迷が続いています。日本は、強固なインフラ(19位)を持ちながら、企業活動の「効率性(51位)」と行政の「効率性(38位)」が致命的に低く、この2つが、総合順位を大きく押し下げています。
なぜ、「政府の効率性」と「ビジネスの効率性」が低いのか?どうやらそこには「経営者」と「人材」がかかわっているようです。
「人材の危機」—欠落した二つのスキル
IMDは、世界人材ランキングも発表しています。日本の結果はさらに低い40位でした。日本の「人材力」も国際的に見て極めて低い水準にあります。
「世界人材ランキング」日本は7年ぶり上昇で40位に、集める環境が改善 首位はスイス - 産経ニュース
「国際経験の不足」と「デジタル・技術スキルの不足」。これらが致命的な弱点になっています。上級管理職の国際経験が最下位水準にあり、経営層の「閉鎖性」がグローバルな視点の欠如を生んでいるといいます。
「デジタル・技術スキル」も最下位水準です。これがDXの遅れと組織の非効率性に直結しているとしています。
経営者の質の問題~「内部硬直」の構造
「ビジネス効率性」が低い原因は、経営者層の「アジリティ(俊敏性)」の欠如にあると指摘されています。これは個人の問題ではなく、日本企業が長年培ってきた「安定重視の組織文化」と深く結びついているといいます。その文化が現代のグローバル競争環境においては、もはや競争優位性ではないともしています。外部の知見や変革の視点が入らない内部昇進偏重の選定プロセスが、同質的な経営陣を生み、硬直化を加速させているといいます。
これに対し、欧米では、完全に独立した社外取締役が過半数を占める指名委員会が選定を主導し、内部候補と外部候補(外部招聘、ヘッドハンティング)を同等に評価、国際的な経営経験を最重要視するといいます。変革力、危機対応力(レジリエンス)、長期的な企業価値向上へのコミットメントが評価の視点になっているそうです。これは、日本が安定と協調性を優先して経営層を選定する一方で、グローバルな環境変化に対応するための「変革力」をトップに供給しにくいという点で、国際的な競争力を低下させる構造的な問題とします。現場に権限を与えず、「何をすべきか」の指示に終始するリーダーシップが、組織全体の意思決定の遅延を招いている問題もあるといいます。
「デジタル」を超えた、先端論理の活用へ
繰り返しになりますが、日本の「デジタル・技術スキル」は最下位水準です。高度専門人材が圧倒的に不足していると指摘されています。それは、単なるデジタルスキルだけではなく、「高度な技術応用力」と「論理的・定量的思考の活用」という能力が含まれているといいます。
「デジタル・技術スキル」、政府・行政の効率化へ応用しようとするのであれば、行政手続きのデジタル化を単なる「オンライン申請」とするのではなく、論理的思考に基づき「非効率なプロセスをゼロから再設計する」能力が求められるといいます。
政府効率性の改善事例:エストニアの「e-Government」
日本の「ビジネス効率性」の低さ(51位)の主因は、企業の俊敏性の欠如や、デジタルスキルを持つ人材の不足、硬直化した労働市場にあります。アジアで常にトップクラスにあるシンガポールの事例は、人材とアジリティの面で参考になります。
デジタルを超えた「先端論理の活用」
IMDランキングで高い評価を受ける企業や国が実践しているのは、以下の2つの能力を組織的に実行しているといいます。
1. 先端技術と論理の探索と導入(アジリティの源泉)
これは、時代と共に進化する「最も効率的で合理的な考え方や手法」を迅速に見つけ出し、既存の組織構造やプロセスに組み込む能力です。
この探索能力は、自己満足的な「自前主義」を脱し、世界標準のベストプラクティスや新しいマネジメント哲学を積極的に学ぶ姿勢にも直結します。
2. 既存システムへの応用(変革の実行力)
先端技術や論理は、導入すること自体が目的ではありません。それを自社の組織、プロセス、文化という「コンテキスト」に合わせて応用し、実行する能力が不可欠です。
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先端技術や論理を導入する際、既存の非効率なプロセスをただデジタル化するのではなく、プロセス全体やシステムをゼロベースで再設計する構造的な思考が求められます。
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経営層から現場まで、全員が新しい先端技術や論理を共通言語として理解し、実践することで、組織全体が一貫した方向性を持って動けるようになります。コンテキスト・リーダーシップが求められます。
危機をチャンスに変える新しいリーダーシップ
日本の競争力回復の道筋は、既に示されており、もはや、課題を外部環境や文化のせいにしている猶予はないといいます。
IMDランキングが突きつけた「経営者の質」の低さは、能力の欠如ではなく、変革への意思決定の硬直化を意味します。この構造的な課題を打破できるのは、他ならぬ経営層自身です。真のリーダーシップとは、曖昧な経験則や過去の慣習から決別し、データと先端技術と論理に基づき、組織のコンテキストを再定義しなければなりません。「コンテキスト・リーダーシップ」を導入し、「何をすべきか」の指示から、「なぜ変革が必要か」という目的(コンテキスト)の設定へと役割を転換すべきです。
閉鎖的な選定プロセスを改め、国際性と多様性という先端論理を持つ人材を外部から招き入れ、既存社員のリスキリングを加速させていく必要もありそうです。今、問われているのは、こうしたことの「実行力」です。ここからが、日本の未来を決める正念場のようです。
会社の競争力は、経営者一人の努力では回復できません。全従業員が「変革の当事者」となることも必要です。IMDの示す「デジタル・技術スキル」とは、AIのコードを書くことだけではありません。それは、自身の業務における非効率性や矛盾を「論理的・定量的思考(意識的疑問的・科学的態度)」で見つけ出し、それを改善するために先端技術を使いこなす姿勢です。「論理の共通言語化」、会社が目指す新しいコンテキスト(目的)を理解し、自身の部門の課題をデータで定義し、論理をもって解決策を提案していくことが求められます。
硬直した習慣や「前例主義」こそが、日本の競争力を奪っている最大の敵です。「なぜ、このやり方を続けるのか?」と問い続けることが、あなたの部門から「アジリティ」を生み出します。
日本の競争力回復は、「経営者自身」の課題であり、同時に「全社員の意識と行動の転換」にかかっています。危機をチャンスに変える鍵は、他国を凌駕する技術力ではなく、私たち一人ひとりの「変革への意思」の中にあります。
論語でまとめ
故きを温ねて新しきを知れば、以て師と為るべし。 (「為政第二」11)
古い事柄や学問をよく研究し、そこから新しい知識や道理を見出すことができれば、人々の師となることができるだろうと孔子は言いました。
この言葉は、単に過去の知識を学ぶだけでなく、それを踏まえて新しい発見や創造につなげることの重要性を説いています。 この教えは、現代の私たちの学びや仕事にも通じる考え方です。
学問:過去の偉大な研究や古典を学ぶことで、新たな研究テーマや発想を得る。
技術:既存の技術や先人のノウハウを再検討することで、より革新的な製品やサービスを生み出す。
経験:過去の成功や失敗を振り返り、そこから教訓を得ることで、次の挑戦に活かす。
「昭和レトロ」、昭和時代の文化や雰囲気が再評価されているようです。昭和ブームともいいます。
エモくてカワイイ「昭和レトロ」の世界 高円寺の雑貨店へ行ってみたら…「あの頃」のトキメキが詰まってた:東京新聞デジタル
なんとなく国家の衰退を感じる私たちに「ニッポンすごい」的な喜びを与えてくれるからなのでしょうか。経済的な安定と懐かしさ、多くの人が「夢があった時代」として昭和を懐かしむ傾向があるといいます。懐かしむだけではなく、そこから次の新しさを生み出したいものです。




