トランプさんの米国が気になります。民主党が主導する都市を「軍の訓練場」として活用したいと述べたそうで、物議をかもしています。
トランプ氏、アメリカの都市を「軍の訓練場」にすべきと 将官らに演説 - BBCニュース
国内の都市が戦場と化すのではないかという懸念も上がっているようです。多くの評論家が、こうした発言がアメリカ社会の分断をさらに深めるものだと指摘しています。
他方、欧州ではイタリアが財政赤字の改善を進めて、EU 欧州連合が定める上限のGDP 国内総生産比3%を達成できる見通しになったといいます。EUにおける財政の底辺と見なされたいたイタリアの急速な回復ぶりに注目があつまっているようです。
イタリア、EUの財政赤字基準を今年既に達成へ-関係者 - Bloomberg
イタリアはイメージの好転だけでなく、現実的な恩恵も手にすることになるといいます。
この改革を進めたのがジョルジア・メローニ氏。イタリア発の女性首相です。2022年、彼女が率いる「イタリアの同胞(FdI)」を中心とする右派連合が勝利したときには、ヨーロッパには大きな緊張が走りました。EU懐疑論や極右的な主張を掲げていたため、「イタリアはEUの財政規律から逸脱し、政治的な混乱に陥るのではないか」という懸念が広がりました。しかし、首相に就任したメローニ氏は予想を裏切る「現実路線」を選択しました。
彼女の最大の功績は、就任当初に懸念された財政不安を払拭し、EUとの関係を安定させたことです。特に、今回のEU基準であるGDP比3%以内を達成する見込みとなったことで、国内外で高く評価されることになったようです。
この成功の裏側には、彼女が当初のイデオロギーよりも「国家の利益」と「安定」を優先し、政策を大胆に転換させた手腕があります。
メローニ首相の功績:イデオロギーよりも現実を選んだリーダーシップ
1. 財政規律と市場からの信頼の回復:前述の通り、財政赤字の改善が最たる成果です。巨額の財政負担となっていた前政権の「スーパーボーナス(住宅改修優遇策)」を制限し、歳出にメスを入れました。一方で、低・中所得者向けの減税は継続・強化し、増収と支出削減のバランスをとりました。
この現実的な財政運営の結果、イタリア国債の利回りとドイツ国債の利回りとの差(スプレッド)は安定し、市場からの信頼が回復しました。これは、リーダーが「極端なポピュリズム(大衆迎合主義)」ではなく、「責任ある経済運営」を選んだ証といわれます。
2. EU・NATOとの協調路線の確立:首相就任前はEU批判を展開していましたが、就任後は一転して親EU・親NATOの姿勢を強調。ウクライナ支援や対ロシア制裁においても一貫して西側諸国と足並みを揃え、国際社会におけるイタリアの地位を安定させました。
この「大転換」こそが、彼女が依然として高い国民支持率を維持し、政権を安定させている最大の理由になっているといいます。
高水準の政府債務を抱え、財政健全化と経済成長の両立が長年の課題となっている日本にとって、メローニ首相の成功モデルは重要な教訓を与えてくれます。
日本の政治がメローニ首相から学ぶべきこと
◎イデオロギーよりも「国家財政の現実」を優先する姿勢
「バラマキ」批判や「緊縮財政」批判が常に政治的な争点となります。メローニ氏がEUとの関係改善のために財政規律を重視したように、日本も「国際的な信頼の維持」と「将来世代への責任」という二大目標に基づき、超党派で具体的な財政再建計画を策定し、断行すべきです。
◎政策の「大転換」を恐れない勇気
メローニ氏は「極右」の看板を下ろし「現実主義者」になりました。日本でも、既得権益の打破や長年の慣行に切り込む「構造改革」が求められる場面で、世論の批判を恐れず政策の優先順位を大胆に転換する政治的な勇気が求められます。
◎安定した政策運営による市場信頼の確保
為替や国債市場が不安定な状況にある日本において、最も重要なのは「予見可能性」です。メローニ氏が強硬派の主張を抑制し、安定した政権運営を続けたことで市場の信頼を得たように、日本も一貫性のある経済・財政政策を打ち出し、国際的な信用度を維持することが、経済成長への最短ルートとなるはずです。
メローニ首相の事例は、「極端な主張」よりも「現実的な実行力と安定」こそが、国民の支持と国際的な信頼を得るカギであることを示しています。日本もこの教訓を活かし、真に国益に資する政策運営を期待したいところです。
メローニ氏は連立政権を率いていますが、彼女は連立内の意見をまとめ上げ、予算案や重要政策において政治的な規律を保ちました。これは、メローニ氏が「イデオロギー的な主張」を一旦脇に置き、「国益と安定」という現実的な共通目標を党内・連立内で共有できているからです。政治的リーダーシップにおいて、内部の規律を維持し、機能不全を回避する能力が、メローニ氏の成功を支えているのかもしれません。
論語でまとめ
千乗の国を道びくに、事を敬して信、用を節して人を愛し、民を使うに時を以てす。(「学而第一」5)
「千台の戦車を持つような大国を治めるには、仕事(政治)に敬意を払い、誠実であること、無駄な出費を抑えること、民を愛し、 人々を大切にすること、民衆を労働させるには、時節を選んで、それを実行させる。そして、労苦を労って分に応じて功を授け、彼らが楽しんで協力するように仕向けることが大切であると孔子は言いました。
統治者の誠実な態度が、民からの信頼につながります。財政の引き締めは、民の負担を減らすことになり、民を愛することにつながります。民の力を尊重し、彼らを助け、彼らが自ら進んで協力してくれるような関係性を築くことの重要性を示唆しています。単に権力を行使するだけでなく、民衆の生活や感情を理解し、彼らが幸福に働ける環境を整えるべきであると孔子は言いたいようです。
日本では自民党総裁選が続いています。自民党は誰を次のリーダーに選ぶのでしょうか。トランプさんタイプなのか、それともメローニさんタイプか?賢明な選択をしてもらいたいものです。それによってこの国の未来が左右されるのですから。

