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【JICAホームタウン事業撤回】キャンセルカルチャーとデマが社会を壊すメカニズム

 SNS時代、この情報洪水の中で信頼できる情報の防波堤となることがジャーナリズムに求められているといわれます。そうであるはずなのに、なかなか進歩、発展がないのが日本のジャーナリズム、いわゆるオールドメディアと称される新聞やテレビなのでしょうか。

 JICA 国際協力機構のホームタウン事業が、SNSなどで誤情報が拡散されたため撤回されました。SNSで「移民の受け入れ促進につながる」との誤情報が拡散し、JICAや自治体に苦情や講義が殺到してため、JICAは事業の継続が困難と判断したといいます。

JICAが「アフリカホームタウン構想」撤回へ 「移民受け入れにつながる」と誤情報拡散 - 産経ニュース

「これでよかったのか」、疑問が残ります。JICAの判断がもちろんのこと、メディア報道にも疑問が残ります。SNS上では、事実に基づいた冷静な報道よりも、人々が感情に左右されて判断してしまうことは周知の事実となっています。その危険性も指摘されています。それなのにです。

 

 

なぜ、国レベルの事業がたった数日のデマと抗議で止まってしまったのか?

 SNSの問題のひとつといわれる「キャンセルカルチャー」の一種なのでしょうか。SNSの便利さの裏側にある「怖さ」のようなものを感じます。

「キャンセルカルチャー」のメカニズム

 批判の集中により、社会的地位を失わせる動きを「キャンセルカルチャー」といいます。SNSが、このキャンセルカルチャーを加速・拡大させる主要なプラットフォームとなっているといいます。即座の拡散、匿名性による過激化、「いいね」による正義感のインフレなどが問題として指摘されています。

 JICAの件は、「不適切な言動」ではなく「誤情報」がトリガーでした。本来の事業目的は、アフリカの国々との人的交流の促進でしたが、SNS上で、「移民が増える」「領土を差し出す」といった誤情報が広まり、事業の真意や目的が無視され、その結果、関係者は建設的な議論の機会を得ることなく、一方的な攻撃に晒される状況になりました。真実よりも、感情に訴えたデマの方が早く広まるというSNSの特性との相乗効果もあったのでしょう。「文脈の欠如と一方的な攻撃」、これは極めて危険なことではないでしょうか。

 

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 JICAや自治体は、誤解を解くための説明を試みましたが、殺到する抗議や混乱によって対応が困難になり、最終的に事業の継続は難しいとの判断となり撤回に至りました。これは、批判の集中によって活動を停止せざるを得なくなる典型的なキャンセルカルチャーの事例と言えそうです。しかし、この事例は、単なる不適切な言動に対する批判だけでなく、「誤情報」が原因で発生した点が大きな特徴です。この点が、正当な批判に基づくキャンセルカルチャーとは異なる側面でもあります。

 

 

メディアの「遅れ」と情報の空白

 今回の騒動においては、SNS上で瞬く間に情報が伝播していったのに対し、「正確性」を重視するメディアの報道は遅れ、決定的な時間差が生じました。メディアが取材・確認している間に生じる情報の空白地帯で、デマが「真実」として独り歩きしてしまったようです。この時間差が問題なのかもしれません。メディアは「正確性」を確保するために、 事実確認、裏付け取材、多角的な視点を必要とします。デマを拡散する危険を冒すわけにはいかないのですから。

私たちにできること

 メディアにはスピードと正確性の両立が求められますが、まだスピードがSNS時代の要求に追いついていないようです。こうしたことを踏まえて、私たちも信頼できる情報源を意識して参照すべきなのでしょうし、SNS上における行動を見直す必要もあるのではないでしょうか。

「誰が言っているのか」「一次情報か」、それを確認することを習慣づけ、感情的になった時こそ指を止め、「反射的な拡散」を止める。「情報の空白」を意識して、「まだ結論を出すべきでない」という判断を身につけるのもいいのかもしれません。

 キャンセルカルチャーは『集団の正義感』が生むものであり、私たち一人ひとりの情報との向き合い方を変えなければ、次なる『キャンセル』(=社会的に抹消する、無視する)は私たちの身近な場所で起こるかもしれません。

論語でまとめ

君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず(「子路十三」23)

君子は、自分の考えや主体性を持ちながら、周囲の人々と親しく付き合い、調和をはかるが、 むやみに他人に同調したり、迎合したりしない。思慮が浅い小人は、自分の意見を持たず、安易に他人の言動に同調する。うわべだけの付き合いに終始し、表面上は人と足並みをそろえるが、心から親しくなったり、本当の意味で協調したりすることがないと孔子は言いました。

 若い世代のオールドメディア離れが指摘されています。SNS時代、この混迷の時代だからこそ、オールドメディアが果たす役割があるのではないでしょうか。

 SNSとジャーナリズム、社会における情報のあり方や民主主義のあり方にも関わる重要なテーマです。この業界にもイノベーションが求められているのでしょう。オールドメディアという言葉の裏側にイノベーションのネタがあるはずです。まして、このAI時代、玉石混交の膨大な情報があふれています。こんな時だからこそ、オールドメディアにしかできないものもあるはずですし、やるべきこともあるはずです。取材力や信頼性の高さ、それを最大限に活かす方法を考えてもらいたいものです。

 

「参考文書」

苦境のジャーナリズム、情報洪水の防波堤になれるか 識者に聞く - 日本経済新聞