プロ野球ファンでも長嶋茂雄さんのファンでもありませんでしたが、振り返ってみれば、テレビの野球中継で長嶋監督を見ていたこともあったと思い出します。その後、脳梗塞で倒れ、それでもハードなリハビリをこなし、度々メディアに露出するその姿に感動したりしました。
長嶋茂雄さん死去 89歳、「ミスタープロ野球」元巨人監督 - 日本経済新聞
無類の勝負強さを誇り、「燃える男」として三塁守備でもダイビングキャッチや華麗な送球でファンを魅了した。プロ野球を国民的娯楽にし、高度経済成長期と重なり、社会の活力の象徴と見なされた。「ミスター」「チョーさん」などの愛称で親しまれ、明るい性格やユーモアあふれるコメントでも広く愛された。(出所:日本経済新聞)
「栄光の背番号 3」、「僕らの長嶋茂雄」、「プロフェッショナル」、「不屈」、「愛されキャラ」色々な言葉で語られる長嶋茂雄さん。その独特な口調と言葉でも人々を魅了しました。
メークドラマ 1995年のシーズンに飛び出し…:長嶋さんの「言葉」 写真特集:時事ドットコム
メークドラマ
1995年のシーズンに飛び出した、長嶋さん独特の造語。シーズンの終盤に「劇的な逆転優勝をするぞ」といった意味合いで、低迷するチームにカツを入れようとしたもの。 この年は優勝を逃したが、翌96年には首位との最大11.5ゲーム差を逆転しリーグ制覇。「2年越しのメークドラマ完成」と言われた。「メーク・ミラクル」などの言葉もある。(出所:時事ドットコム)
今では横文字多用は嫌われるのかもしれませんが、当時はそんなことも気にしていなかったように思います。長嶋さんの影響を受けていたのでしょうか。

サードを守っている時、難しい打球を打ってくれて初めて横っ飛び三遊間、なんてプレーができるんです。そんな姿を見て、観客がワッとどよめく。1人じゃできませんよ。仕事になりませんよ。だから、人の悪口は言わない。それがプロとして、見る人を魅了するのに欠かせざるものなのです。決してきれいごとじゃない。
僕は、フライが嫌いなんです。これを言うと、笑われるんですけど。だって、高ーく上がったフライは、グローブを出して捕るだけでしょ。お客さんに見せる要素が全くない。そうでしょ。芸当が入り込めない。僕らはやっぱりプロだから。アーチスト的な芸というものに、いつも磨きをかけている。(出所:日経ビジネス)
現役時代の長嶋さんをよく知りませんが、「絵になる男」と言われたのがよくわかります。

どうして、そこまで魅せる野球にこだわるのか。ファンあってのプロ野球だと心底、思えるからです。長嶋はなぜ野球をやるのか。こう聞かれれば、迷うことなくこう答えます。自分のためじゃない。ファンのためだと。
だって、考えてもごらんなさい。僕が現役の頃ですら、入場料はネット裏で、確か2000円弱くらいした。無料で見せてるわけじゃない。お金より、もっと貴重なのは、ファンの時間をいただいているということです。
球場には、多くのビジネスマンが足を運んでくれます。仕事では、時間をお金で買おうという人たちです。その貴重な時間を、我々のために割いてくれる。1つの試合で3時間から3時間半かかります。これだけの時間を拘束するわけです。
3時間半あれば、ニューヨークのケネディ空港からパリのシャルル・ドゴール空港まで飛べますよ。ぼーんと。最近また飛び始めたコンコルドを使えば。こうやってビッグビジネスを成功させようと時間を惜しむ。それと同じだけの時間を与えられ、さあ面白い野球を見せてくれ、ってスタンドで待ってるわけです。応えなくちゃ、それに。じゃなきゃプロじゃない。
大切な時間には、貴重なプレーでお返しをしたい。それが職業として野球をやっている者の誇りだと思う。そのためにはもう、最高の自分の能力をね、プロとして肉体、あるいは表現において、もう満足いただけるように。全知全能を傾けながら3時間ないしは3時間半、もう没入しなきゃいけません。没入ですよ。集中をはるかに超えて、没入。今の選手は、没入なんて言葉は使わないのかな。野球にのめり込む。職業人として。(出所:日経ビジネス)
「プロフェッショナル」、かくあるべきということでしょうか。
逆境の中で精進はするけど、努力というのとは違うんです。僕の場合。他人に見せちゃいけない。あるいは、努力という言葉は使っちゃいけない。絶対にね。だって、プロですから。努力は醜いものと思ってきた。汚い裏側は見せないからこそ、表舞台が華やかに映る。(出所:日経ビジネス)
追悼 長嶋茂雄氏 [インタビュー]職業は「長嶋茂雄」:日経ビジネス電子版
昔から、天才球児なんて呼ばれもしました。だから、努力している姿を見せるのが許されなかったのかもしれない。プロ、つまり職業野球の道に入ってますます、その傾向は強くなった。
もちろんその裏には、苦悩とか悔しさとかありますよ。言葉、あまりよくないけど怨念なんかもね。ごちゃ混ぜになっていますよ。勝負って、やっぱりすごく過酷なんです。
怨念って、僕に似合わないと言われるかもしれないが、戦いの中にはありますよ。正直言って。あるいはジェラシーとかね。それをバネにしながら、一歩一歩前に進む。
まずいのは、泣き言を言うことね。それ、やっちゃダメ。もっとまずいのはエクスキューズ、言い訳をすること。それを耳にすると僕は厳しいですよ。ユニホームを脱ぎなさいとすぐに言ってきた。プロとして失格ですから。(出所:日経ビジネス)
「職業 長嶋茂雄」。現役時代に宿帳の職業欄に氏名を記したという有名なエピソードがあるそうです。プロである以上、勝負結果にも増して、個人の卓越したスキルによって顧客に満足を与えなければならないと考える長嶋流プロフェッショナリズムからの結論だったのでしょうか。
論語に学ぶ
驥(き)は其の力を称(ほ)めずして、其の徳を称むるなり。(「憲問第十四」33)
名馬の驥は、その速力や体力を褒めているわけではない。その節度ある風格を褒めているのだと孔子はいいました。
「驥」一日に千里を行く名馬といいます。転じて才能ある優れた人物、俊才のたとえだそうです。
訃報に接し、「長嶋茂雄」を知れば知るほど、魅了されていきます。派手なプレーだけでなく、その卓越した人間力が人々を魅了してやまなかったのでしょうか。
「参考文書」
プロ野球:長嶋茂雄さん、サザンは「栄光の男」で描く 時代を超え楽曲・漫画に - 日本経済新聞
《追悼》「我が巨人軍は永久に不滅です!」「ナガシマァ~」涙の引退試合…日本人にとって38歳長嶋茂雄の現役引退はどれほど衝撃だった? - プロ野球 - Number Web - ナンバー
長嶋茂雄「不滅」のリーダーシップ、なぜ人々はミスターに熱狂したか | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
