年の瀬が近づくと1年を振り返り、新しい年を予測するのが毎年の恒例の行事です。「変化の激しい時代」「正解のない時代」になったのですから、予測をしたところであまり意味をなさなくなっているような気もしますが。
徹底予測 10の大転換 エネルギー、M&A、人手不足……:日経ビジネス電子版
中東シリアであっという間に政権が崩壊し、お隣の韓国では大統領が宣布した非常戒厳が6時間余りで解除され、一瞬のうちに大統領が窮地に追い込まれました。変化の激しい時代、正解のない時代、そう感じるばかりです。
こんな環境なのですが、日本は相変わらず緩慢、鈍重です。環境適応できずにいるのだから、じりじり国力が削がれるし、負の側面ばかりが社会に顕在化するのでしょう。
ジム・ロジャーズ「日本の円安が心配でならない」 「日本は大丈夫」という考えは間違いである | 政策 | 東洋経済オンライン
なぜ日本の政治や企業は今ある課題に真摯に取り組むことができなくなってしまったのでしょうか。
中国のEVが瞬く間に世界を席巻しました。EVの先駆者だった日産自動車は苦境に追い込まれ、営業利益が9割減少する事態です。大規模な人員削減や生産能力の調整がさけられなくなりましたが、危機感が乏しく動きがスローだと指摘されます。
「御三家」日産、正念場 北米で赤字、HV不在響く―膨らむ販売奨励金、手元資金減少:時事ドットコム
経営の問題なのでしょうが、お粗末過ぎます。長い間問題が放置されていたようにしか見えません。自分たちの世界観の中では問題ではなかったのかもしれませんが。
セブン&アイ・ホールディングスがカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受け揺れに揺れているようです。
自社買収問われる「大義」 セブン&アイ、沈黙の創業家 | 共同通信
創業家によるMBO自社買収は、カナダ大手への対抗策とみられていますが、そこに「大義」はなく、ただの保身ではないかとの声が上がっているといいます。こちらも同類の問題と言ってよさそうです。
受験勉強に代表されるような「正解探し」をずっと続けて出世してきたような経営者は自らの五感をフルに働かせて社会や未来を全体的に把握しようとする知的格闘を恐れ、目の前の事象を単純化したモデルとしてゲームのように捉え、抽象化された断片的なデータを用いて意思決定することで「経営しているような気になってしまう」傾向があります。
こんなところなのでしょうか。あながち外れていないのかもしれません。こんな人たちが経営トップに昇進できるのが不思議でなりません。どんな基準があるのでしょうか。
論語に学ぶ
子 陳に在りしとき、曰わく、帰らんか、帰らんか。吾が党の小子は、狂簡(きょうかん)にして、斐然(ひぜん)として章を成せども、之を裁する所以を知らず、と。(「公冶長第五」22)
孔子が陳に滞在していた時、「帰ろうか、帰ろうか。わがの若い弟子たちは、やたらと大言壮語し、きれいごとの理屈ばかり達者となっており、それを切り盛りして役立たせる方法がわかっていない」といいました。
誇大妄想して自己陶酔するようなことがあってはならないということでしょうか。変化の激しい時代であればなおさらなのでしょう。
「当たり前」と思ってきたことが突如ひっくり返っていく、それが変化の激しい時代なのでしょう。これまでの常識がまったく通用しないということでもありそうです。限定された見方や考え方、今あるシステムや制度を疑い、物事の本質を見つめ直すことが求められているのでしょう。既存のものを躊躇なくひっくり返せば、案外うまくいくのかもしれません。常識とは「今、ここ」でしか通用しない局所的な習慣に過ぎないのですから。
この時代に通用しない常識を捨て去ることができるか問われていそうです。それができた時、日本に元気さが戻るのではないでしょうか。
年末も押し迫り、ニュースを見て、読んではそんなことを思います。
「参考文書」
苦境の日産、危機感乏しい幹部人事 市場の不信感拭えず - 日本経済新聞
今週の本棚:中島岳志・評 『ひっくり返す人類学 生きづらさの「そもそも」を問う』=奥野克巳・著 | 毎日新聞