データ活用の重要性が説かれています。AIがビジネスの中心に担うようになればなおさらのこといいます。「データドリブン」、経験や勘に頼らずに収集したデータに基づいて判断、アクションしようとするものです。科学的態度の源泉です。客観的な意思決定が可能になるといわれ、業務効率化が進み、リスクが低減され、業績が改善することができるといわれます。しかし、そこに意識的疑問的態度がなければ、宝の持ち腐れ、適切に管理・分析されることがありません。まして完璧にデータがそろうということはないのですから。常にデータの不足はあるもので、追加で取得を試みたり、何かで代用したりします。
森羅万象、すべてをデータ化するに至っていません。人間の内面もまた同様です。それゆえ、データをもとにアクションしても期待通りの結果を得られないこともあるのではないでしょうか。
データで見る強盗件数
闇バイトによる緊縛強盗が横行し、治安の悪化が懸念されます。警察庁の露木長官も「体感治安」への影響について言及する事態です。一方で、「強盗事件なんて実はほとんど起きていない」、データからいえば相対的に安全といえるという意見もあります。
強盗事件なんて実はほとんど起きていないー相対的安全性をデータで見てみようー
ニュース(事件報道)が起きるたびに、その危険性を感じ、エンタメとして楽しむ分にはよいでしょう。ある意味で、とても楽しい日々になりそうです。しかし、それに振り回されること自体が、もったいないです。なぜなら、日本は世界(アメリカ)から見ると「信じられないくらい安全な国」なのですから。(出所:NEWSPICKS)
恣意的にデータが利用されているというのは言い過ぎかもしれませんが、求める結論のためにデータが利用されているようです。強盗事件など凶悪犯罪のあるデータを事例に人が危険と感じる心理メカニズムの紹介というアプローチとしては正しいのかもしれませんが。なおかつそこに客観性と論理性を付与することはできていそうです。
記事の指摘が全面的に正しいとすれば、経済性からいってもう少し警察機構を縮小できるのではとの疑問を持てます。しかし、警察はそんな見方はしていないようです。同じデータであっても異なる立場からすれば見える景色は異なります。
記事筆者がデータのもとにした犯罪白書には「全体として犯罪の脅威が大きくなっていることが懸念される」との指摘があります。
令和4年における児童虐待に係る事件、配偶者からの暴力事案等、サイバー犯罪、特殊詐欺、大麻取締法違反及び危険運転致死傷の検挙件数については、増加傾向又は高止まり状態が継続し、特にサイバー犯罪や特殊詐欺などの比較的新しい犯罪類型の件数が前年よりも増加している。ここで取り上げた以外にも、例えば強制性交等の認知件数は前年より大きく増加するなど、個別の犯罪類型ごとに見ても、我が国における犯罪情勢がいまだ決して安心できる状況にはないことが分かる。(出所:犯罪白書)

諸外国とし比し相対的に見て安全というのは正しい主張なのでしょうけれども、こうしてみれば、違和感を覚えたりもします。「諸外国と比し良好な治安は維持されつつも、一方で私たちの安全が新手の犯罪などにより脅威にさらされつつある」というのが現実のように思えます。また警察が認知している件数以上に暗数(犯罪として認知されていない)が多く存在するともいわれ、これも加味、さらに詳細分析し、適切な対策、対応をしていくことが求められていそうです。科学的態度に加え、意識的疑問的態度をもってデータを見れば、違った景色となり、よりよくしていくヒントが見つかりそうです。
体感治安
刑法犯罪ばかりでなく、現実社会には、SNS上での誹謗中傷があったり、様々なハラスメントが横行、政治は腐敗、企業における不正や不祥事などもあります。こうしたことも体感治安の悪化になんらかの影響を与えてそうな気がします。 しかし、こうした行為すべてが捜査機関の取り締まりの対象になっていないのも現実です。
投資詐欺に闇バイトの募集など、最近ではネット利用が当たり前となり、手口も巧妙化していきます。paypayを使った新手の還付金詐欺も出てきています。
「PayPayで返金」、実は還付金詐欺 QR決済悪用広がる - 日本経済新聞
凶悪犯罪においても同様のようで、SNSの利用が進み、警察庁のまとめによれば、殺人や性犯罪に巻き込まれる小学生は右肩上がりの増加しているといいます。
子ども性被害防止、道半ば 奈良女児誘拐殺人から20年 | 共同通信
日常的に使用するようになったSNSやキャッシュレス決済。こうした場で犯罪行為が横行するようになれば、たとえまだ犯罪数は少なくても不安になるものです。いつ自分や自分の家族が被害者になってしまうかはわからないのですから。取り締まり機関がネットを常時監視してくれていればいいのでしょうが、検閲との兼ね合いもあってそれは今ありえないのですから。
論語に学ぶ
善人 邦を為(おさ)むること百年ならば、亦(また)以て残(ざん)に勝ちて殺を去る可し、と。誠なるかな、是(こ)の言。(「子路第十三」11)
善人が為政者となって百年もの時があれば、残忍な連中も感化し、死刑も不要となることができるとある。本当にそのとおりだと孔子はいいました。
いつの時代でも悪事を働く者はいるものなのでしょう。孔子は徳治政治を理想とし、それによって悪人も感化されて善き社会が実現すると考えていたようです。それが実現すればいいのでしょうが、複雑化した現代においては、そのために技術、テクノロジーの利用があってもよさそうです。
しかし、現実はまだまだ厳しいのでしょうか。犯罪の抑止にテクノロジーが利用されるより、犯罪に悪用されるケースが多いのではないかと感じたりします。いたちごっこになっていそうです。
タイミーの闇バイト掲載疑惑 巧妙化する求人、仲介企業の責任重く:日経ビジネス電子版
タイミー、闇バイト対策で後手 求人内容審査は公開後 - 日本経済新聞
犯罪抑止という使命より、まだ利益追求の使命が優先されているのかもしれません。少し優先順位を操作して犯罪抑止に重点を置くようになれば、プラットフォームの安全・安心が向上しそうな気もします。
それはSNSにおいても同様なのでしょう。こうした状況を鑑みてか、世界の国々ではデジタル規制を強化する動きが強まっているようです。オーストラリアでは、16歳未満のSNS利用を制限し、違反したウェブプラットフォームに制裁を科す法律が制定されるようです。
豪が16歳未満禁止法案提出へ、「SNS年齢制限」時代到来にメタは? | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
英国では、ガーディアン紙が、「X(旧ツイッター)」の公式アカウントへの投稿を停止すると発表したそうです。イーロン・マスク氏率いる「X」を「有害なメディアプラットフォーム」とみなしためといいます。
英紙ガーディアン、Xへの投稿停止 「有害なメディア」 - 日本経済新聞
Xには「極右の陰謀論や人種差別などの不穏なコンテンツがしばしば見られる」と強調。さらに、米大統領選で「マスク氏はその影響力を使って、政治的意見を形成できることが明確に示された」として、「今やXを利用するメリットよりマイナス面が上回っている」。(出所:日本経済新聞)
プラットフォームが現実を直視するようになれば、もう少し違う展開もありそうなものです。折角膨大なデータをもっているのですから、それを上手に活用し、現実を理解してもらいたいものです。またそのデータを適正に分析、有効な対策を打って欲しいものです。それがまたテクノロジーの目的のひとつでもあるのですから。ただ単にデータ活用して科学的だと主張するのでなく、そこに意識的疑問的態度をもって、より良くを目指し「最適(最経済)なシステム」を確立していくことに全力を注いでほしいものです。
「参考文書」
刑法犯が2年連続増、コロナ前水準の70万件…10年間「体感治安」は7割が「悪化」回答 : 読売新聞


