改正政治資金規正法が成立しました。首相が記者会見し、事実上今国会が閉幕になるといいます。
「裏金国会」事実上の閉幕へ 岸田首相、今夕に記者会見 | 共同通信
裏金事件の実態解明は進まず、期待の政治改革も不発で、逆に自民党の思惑通りの法改正といっても過言ではないようです。抜け穴だらけでブラック活動にお墨付きを与えるようなものだとの見方もあるといいます。
「失われた30年」「少子化、老いる日本」「止まらない円安に物価高」など、こうした諸問題も政治とは無関係ではなさそうです。政治によって諸々の利害が調整され、国民のためになることさえすればいいはずなのに、不適切に利害が調整され、しがらみの深みにはまっていく..... そんなことをするから、問題をさらに複雑化させ、解決できない問題を次々と量産してしまう事態に陥っていったのではないでしょうか。
<視点>政治献金やめない経団連 「社会貢献」というカムフラージュ 編集委員・久原穏:東京新聞 TOKYO Web
「間接民主主義にはお金がかかり、そのコストを企業が担うのは社会貢献だ」と経団連の十倉会長は繰り返し発言しているといいます。経団連もまた同じ穴のムジナのようです。経団連は政策要望に応えたか否かを献金の判断材料にしていたそうです。
また業界団体は補助金を求めて献金するケースもあるといいます。それでは政策をカネで買うのと同じで、政治献金は社会貢献ではなく、合法的な賄賂のようなもので民主主義を脅かす反社会的な行為になっていると指摘もあります。これでは政治によって、適正に利権がコントロールされていたことはなさそうです。
裏金事件が発覚し、政治資金パーティが裏金の温床になっていたことが明らかになりました。その政治資金パーティには多くの企業が参加し、企業・団体献金の抜け道になっているともいわれています。しかし、今回の法改正ではこの企業・団体献金の禁止に踏み込めず、今回の政治改革は生煮えのまま終わることになったようです。
政治が真に信頼を回復していくためにも課題解決はさけて通れなくなっているはずなのに、問題の本質に切り込むことができなかったようです。しがらみ、既得権益といってのかもしれませんが、それをもっとライトなものにすることができれば、状況は異なっていきそうです。改革の本丸はそこにあったような気もします。
「今の党首会談は軽くなったなあ」というのが実感である。永田町では「幹事長が動かないから、岸田さんも自分で動くしかない」(自民関係者)との声も聞かれるが、岸田首相と自民党の茂木敏充幹事長との溝を考えると、その通りだろう。今、首相のために汗をかいているのは、ほんの一握りのようだ。(出所:時事ドットコム)
維新だまされた? 一転して反対へ 抜け穴、検討、先送りだらけの規正法改正案(下)【解説委員室から】:時事ドットコム
旧態依然のしきたり、ならわし、慣習が残るのが政治の世界のようです。このままでVUCAといわれる複雑で変化が激しく、なおかつデジタルの時代を生き抜いていくのは困難なのかもしれません。
アンラーニング 学習棄却し、マインドセットを新たにすることが求められていそうです。そのための政治改革でもあるように思います。意識を変えることができなければ、この先も問題を量産し続けて、解決はほんの少しだけ進むことで終わることになりそうです。
論語に学ぶ
君子の天下に於けるや、適も無く、莫もなし。義 之と与(とも)に比す。(「里仁第四」10)
君子 教養人の世におけるあり方は公平であり、一方的な肯定もなければ、一方的な否定もない。「義」筋の通った正しい道理に従うまでだと孔子はいいました。
私利私欲に走るような者たち、ともに語るに値しないということでもありそうです。
裏金事件を巡り、虚偽記入の罪に問われた二階派の元会計責任者 永井被告が初公判の場で、起訴内容を認めたといいます。
二階派元会計責任者「お金残したかった」 裏金事件公判 - 日本経済新聞
収入の一部を計上しなかった理由について「何が起こるか分からない世界でお金を残す必要があると思った」と述べたそうです。これが民主主義下における政治の世界ということなのでしょうか。今の政財界のリーダーたちに云わせれば、これが民主主義のコストということなのでしょうか。
裏金国会が終わり早くも関心は東京都知事選、それに続く自民党総裁選に移っていくようです。今回のゴタゴタ劇を通して首相と党執行部との間に亀裂が走り、首相は今後、党・内閣人事を断行し、麻生、茂木両氏を中枢から外すのでないかとの臆測も飛び交っているといいます。
【点描・永田町】規正法改正で「自公維談合」の〝裏〟:時事ドットコム
孤立した首相が、総裁再選に向けてどんな独断を下すか、政界全体が注視しているそうです。首相の口癖の「先送りできない課題」とはどうやら再選するかの一点なのかもしれません。
政治が変わっていくことはいまのところなさそうです。さっそく次の権力を目指す輩が何の臆面もなく、動き出しているようです。
自民党総裁選、候補者乱立の可能性も 派閥解散の余波 - 日本経済新聞
一方で、首相も何の恥じらいもなく総裁再選に意欲を示しているといいます。
「四面楚歌」の首相、見えぬ再選への戦略 麻生太郎氏に反省の弁 | 毎日新聞
これが「新しい資本主義」の実態ということなのかもしれません。
リーダーとして大切な素養が忘れられているように見えてなりません。成果を自らのものにすることがあってはならないのです。自分ひとりで解決しようとしても大した結果にならないことを知るべきなのでしょう。リーダーとは、変化が生まれ、変化が自律的に継続するような場を生み出すことに注力するものだといいます。
悪いリーダーは、人々から蔑まれる。良いリーダーは、人々から敬われる。最高のリーダーは、人々に「私たちがやった」と言わせる。(出所:プレジデントオンライン)
しかし、現実はまだまだ厳しそうです。
競争のない国は競争力が出てこない。ルールやしきたりを重んずる日本では、至るところに既得権益者のバリケードが設置されている。そのバリケードが壊れない社会的背景として、みんなほどほどに現状に満足していることである。すなわち、目の前の秩序を崩さなくても、「安心」して暮らせるからである。これは「失われた30年」の後遺症でもある。ぬるま湯のなかでのんびり生活して30年。ここで踏ん張って競争しようと思う人が少ない。ごく少数の人は将来の日本を心配して、警鐘を鳴らしているが、ぬるま湯に慣れている大衆はそれに耳を貸さない。(出所:日本経済新聞)
「いま、私たちは岐路に立たされています。テクノロジーには『いい使い方』と『悪い使い方』があります。テクノロジーをうまく使えば、社会がより発展していくのに、フェイクニュースなどの『悪い使い方』のほうがはびこっている。政治の世界でも同じです。リーダーがテクノロジーを理解し、正しく使いこなせなければ、この国の未来は暗い」(出所:クーリエジャポン)
東京都知事選に立候補したAIエンジニアの安野氏はそう語っています。
今しばらくは混乱が続くことになりそうです。この先、新しいタイプのリーダーが登場することはあるのでしょうか。
「参考文書」
改正規正法、抜け穴残し成立 裏金防止、透明性に懸念:東京新聞 TOKYO Web