「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

マンションの高騰、異次元の少子化対策の財源、空気を読まない批判

 

 首都圏ではマンションが高騰し、高嶺の花になりつつあるのでしょうか。その原因とともにその実態が報じられています。

平均2億超え!? 止まらない「都内マンションの高騰」。中古でも1億弱、賃貸価格も値上がり | 日刊SPA!

 政府の経済財政諮問会議では、米プリンストン大学の清滝教授が、「長期金利を低く抑える政策も長く続けると、一方的な投機にさらされて国が損をする、不動産などの資産価値が高くなりすぎる」との意見を述べたといいます。

 また、この会議に参加し、その後、報道各社のインタビューに応じた日銀の植田総裁は、この意見に対して「資産価格が上がりすぎてその後破裂してしまうバブル期のようなリスクも考えてやや早めに金融緩和を解除すべきだという意見だった」と語ったそうです。

 ここ最近のマンション高騰にも日銀の金融政策の影響があるということなのでしょうか。

 

 

空気を読まない批判

経済財政諮問会議に参加した清滝教授の意見が、これまでにない空気を読まない批判だったといいます。正面切ってこれだけ厳しい反論を浴びせた人はいないといいます。

コラム:ノーベル賞に近い清滝氏の挑戦的発言、緩和長期化と低生産性を読み解く=熊野英生氏 | ロイター

金利は生産性の低い投資案件を実行させて、企業の収益体質を脆弱化させる。これは、中長期的にみて、デフレに陥りやすい金融政策ではないかと、清滝教授は緩和を長期化させることに批判の矛先を向けている。(出所:ロイター)

 記事によれば、清滝教授は、過去10年間の量的・質的緩和がデフレを止めて1-2%程度のインフレ達成に効果があったと認めているといいます。また、平時に戻っているのに、これを続けるのは弊害が大きく、経済の脆弱化を促すと訴え、円安によって、インフレ促進を後押しすることは、見かけ上はインフレ率の数字をかさ上げすることになっても、健全な企業の成長を促すことにはならないと批判したそうです。

 政府がなぜ反対意見を述べる識者を会議に召集したのか、その目的は何かと勘ぐってしまいます。

 一方、植田総裁は、参院財政金融委員会に出席し、日銀がバランスシート上に抱える国債ETF 上場投資信託について「これが正常な中央銀行のバランスシートの姿ではない」との認識を示し、「しばらく続くのは仕方がない」とも述べたそうです。

 黒田前総裁の下で進められてきた異次元緩和の点検が進んでいるのでしょうか。

 

 

異次元の少子化対策

 一方、議論が進む異次元の少子化対策の財源として社会保険料や消費税で確保することに、島根県の丸山知事が異議を述べたといいます。

「経団連の会長の言っていることを聞いていたら日本は滅びる」「世も末」 島根県・丸山知事 少子化対策の財源「社会保険料上乗せ」「消費税」議論を批判 | BSSニュース | BSS山陰放送 (1ページ)

申し訳ないけど、島根県の知事だけど、小さな県の知事だけど、そんなことを日本の経済界で一番偉い人が平然と言う時代なんだから、こっちは逆の立場で物言わないと、普通の生活をしている人の生活が成り立たなくなる。怒りを覚える。(出所:BSSニュース)

 この件についての経団連会長の発言についても、「そのまま聞いていたら日本は滅びるぞ。ま、滅びると思いますよ」と批判したそうです。

論語に学ぶ

哀公(あいこう) 有若(ゆうじゃく)に問いて曰わく、年饑(う)えて用足らず。之を如何せん、と。有若対(こた)えて曰わく、盍(なん)ぞ徹せざらんや、と。曰わく、二も吾猶足らず。之を如何ぞ其れ徹せんや、と。対えて曰わく、百姓足らば、君 孰(たれ)と与(とも)にか足らざらん。百姓足らずんば、君 孰と与にか足らん、と。(「顔淵第十二」9)

 魯の国の君主哀公が有若に「近ごろ不作で費用が不足だ。どうすればよかろう」と尋ねました。有若は「どうして税率を十分の一になされませぬか」と答えます。すると哀公は「十分の二の税でも不足なのに、それをどうして十分の一に下げられようか」といいます。有若は「もし民の生活が十分でありますならば、君上はだれと不十分となるのではありましょうか。もし民の生活が不十分でありますならば、君上はだれと十分となるのでありましょうか」と答えたといいます。 

dsupplying.hatenadiary.jp

 余計な支出を考えては何かと費用が不足で増税増税と口にする政府と哀公の姿が重なります。経済がよくなれば自然に税収の増加するのでしょうから、それまでは支出を抑えるべきということでもあるのでしょう。

 改善することがなかった過去を何のわだかまりもなく反省できれば、そこからまた継続的な改善が始まるのでしょう。

 

 

次の予想

 日銀が、YCC イールドカーブコントロールを調整する構えに見えるという報道があります。植田総裁の発言が背景となっているのでしょうか。

円は年末までに15%上昇へ、日銀がYCC調整に動くと予想-UBS - Bloomberg

 記事によれば、もしそうなれば、足下の円安が円高に転じる可能性があるといいます。

 3万円超えた株価には逆風なのかもしれません。しかし、それも健全化に向けては避けられないことでもあるでしょうし、それに負けないことが経済が健全化していくということでもあるのでしょう。

 

 

「参考文書」

日銀のバランスシート、中銀として必ずしも正常な姿でない-植田総裁 - Bloomberg

インタビュー:YCC修正、誘導対象を10年から5年金利に変更も選択肢=日銀総裁 | ロイター

野口悠紀雄『日銀の責任 低金利日本からの脱却』(PHP研究所)【今月の一冊】:時事ドットコム