日経平均株価が高騰を続けていましたが、昨日は9営業日ぶりに反落しました。急ピッチな上昇による過熱感から利益確定売りが出たことが理由のようです。ただ海外投資家の日本株に対する「過小評価」の修正機運は根強く、企業の収益力や資本効率の改善期待を手掛かりにした買いの持続力が焦点になると日本経済新聞は指摘しています。
日本衰退論が囁かれ、政治は混乱暴走し、メディア報道に疑問が投げかけられ、混迷する日本社会ですが、株価には若干改善の兆しが見えてきたということなのでしょうか。
バブル崩壊後30年余り、日本株は何度も偽りの夜明けを迎えてきた。強気相場が到来し世界的に注目を集めたかと思えば、資産運用会社はもっとハイペースでリターンを得ようと他市場に向かい、静かに勢いを失っていった。今もまた、海外からの関心が高まる中で日本株は活況を呈している。たが、今回は本当に変わったのかもしれない。(出所:ブルームバーグ)
「日本について言えば、投資家は「今度こそ」という言い回しを警戒して当然」とブルームバーグが報じています。
【コラム】 バフェット氏が先読み、日本再浮上の物語-リーディー - Bloomberg
アベノミクスの功績と失敗を分析した上で、現在の日本を分析します。
中国の台頭に警鐘を鳴らした故安倍氏の地政学的な考え方は長く影響を与え続いているが、安倍政権下の株高はそう長続きはしなかった。しかし、コーポレートガバナンス(企業統治)改革によって、経営の焦点が着実に変化した。また、東京証券取引所がPBR 株価純資産倍率1倍割れの企業に対し、改善に向けた計画をまとめよう求めているようになり、こうした動向は、日本銀行が正常化に踏み切ろうとしているとのシナリオの修正と重なるといいます。しかし、日銀の新総裁に就任した植田和男氏は現実主義者として、金融緩和継続というメッセージを発し、円安が継続、ドルベースではさらに日本株の割安感が強まっていると指摘します。
そこに投資家の神様ウォーレン・バフェット氏が、投資家たちが必要としていた物語を提供し、変わりつつある世界の中で、資金をとどめておける安全な市場は日本としたといいます。バフェット氏が率いる米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイは、台湾への資本投下よりも日本を好むとし、TSMC 台湾積体電路製造の持ち分をほぼ全て手放したそうです。
安倍氏の功績といっていいのかはわかりませんが、中国を自由主義的な世界秩序に引き入れることは可能という考え方を米国があきらめる中で、日本が再浮上しているといいます。
重要なのは法の支配だ。文化が大きく異なる日米だが、利害はほぼ一致している。
(出所:ブルームバーグ)
ただ、課題も多々あるようです。「賃金上昇の見通し」「高齢化社会と労働力の急速な減少」などなど。これ課題の解決への道筋を明確化していくことが急務のようです。
「たとえ日本株投資の物語が誇張されているとしても、衰退シナリオもまたそうだった。今の株高が定着するかどうかは別として、環境は本当に変化している」と記事は指摘し、「ハイテク企業や自動車メーカーもかつてない急ピッチで変わりつつある環境に対応しなければならない」といいます。
冷静な指摘なのでしょうか。これが現実なら、この好機を企業が活かすべきのような気もします。
論語に学ぶ
甯武士(ねいぶし)は邦に道有れば、則ち知、邦に道無ければ、則ち愚。其の知は及ぶ可(べ)きも、其の愚は及ぶ可からざるなり。(「公冶長第五」21)
衛の政治家 甯武士は、国がきちんと治まっていたときは、賢者として働き、逆に乱れたときは、呆けて過ごして、身を全うした。彼の賢者ぶりは誰でもまねることはできるが、その呆けぶりは、なみの者ではなかなかと意味します。
日本企業は、甯武士のように手練者として振舞えていたのでしょうか。そうであれば、この好機を見逃すこともないように思います。さて株価高騰はいつまで続くことになるのでしょうか。
「参考文書」