「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

かき消されていきそうな平和主義、忘れされていく日本の理想

 

 G7広島サミットが閉幕し、その結果をメディアが総括しています。弱体化し不要論もあったG7の枠組みがヒロシマで再び結束を固めたといいます。今回の結果を礼賛し過ぎてはいないかとの疑問を感じたりもします。

ウクライナ侵攻で揺らぐ国際秩序を立て直す道筋。G7の中心である米国と枠外の中国、その間に立つ新興国とで見える景色は異なる。(出所:日本経済新聞

 世界には多くの国が存在し、異なる価値観があることを浮き彫りにしているようです。

 新興・途上国の一部には「G7の支援がウクライナばかりに向いている」との不満があり、また、中ロとの深い関係を築く国は「価値観の押し付け」と思い、多様性を認め合う傾向があるなかでは、何が正しいかはわかりません。

ゼレンスキー氏来日でG7と結束アピール、岸田首相が得た「推進力」:日経ビジネス電子版

ウクライナのゼレンスキー大統領がサプライズ的に対面で討議に加わる中、G7としてウクライナへの支援を継続・強化し、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するため結束を強化することを確認した。不安定化する世界経済に関しては金融面の動向を注意深く監視し、柔軟な対策を取ることで一致。中国を念頭に「経済的威圧」に連携して対抗するための枠組みの立ち上げや、担当閣僚などが生成AI(人工知能)の利活用や規制のあり方に関する見解を取りまとめることなどでも合意した。(出所:日経ビジネス

 力による現状変更を批判し、「法の支配」に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するのもいいことなのかもしれませんが、それに抵抗する国が存在し、その勢力が拡大しているのもまた事実なのでしょう。だからこそG7で結束強化する必要がある、それはそれで説得力ある言葉です。そして、それが叶ったといえば、このサミットは成功だったといっていいのでしょう。しかし....

 

 

日本そのものは高齢化し、戦後の奇跡の経済成長は失速した。今や中国の経済と軍事の力に、脅かされている。新しい脅威が押し寄せようとするなか、不安な日本の人たちは、守りの強化を求めている。(出所:BBC Japan

「防衛力をひとつ強化しようとするたびに、日本はその平和主義の理想をめぐり、分断を深める」とBBCは指摘します。

揺れる日本の平和主義 中国や北朝鮮の脅威を前に - BBCニュース

「岸田総理は広島の選挙区出身だけど、最近になって軍事予算を引き上げようと言いだした」、「私からしたら、戦争を始める気ですかと。間もなく戦争をする気ですか。戦争に誰が行くんですか」と語る原爆経験者の箕牧さんの声も紹介しています。

 敵対勢力に包囲されるのではないかという恐怖をあおるような、前例のない事態が続き、日本は今や非常に危険な地域にいるのだと、多くの日本人が一般的に認識しているといい、「いきなり攻撃されることも、今の世の中にはあるので、防衛費も必要なのかなと思う。日本が戦争に向かうのではない、自分たちを守るためのものだと捉えて、必要なのかな」と語る広島在住の人の声を紹介します。

 

 

原爆ドームから元安川の光る川面の向こうに目をやると、すぐそこに平和記念公園があり、原爆死没者慰霊碑がある。「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と御影石に刻まれている。「戦争を起こしたがために最後は広島・長崎に原爆が落とされた」と、箕牧さんは慰霊碑に目をやりながら話した。「広島が丸焼きになり、長崎が丸焼きになり。そういう過ちを起こしたのは旧日本軍だから」。(出所:BBC Japan

「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」、何と重い言葉ではないでしょうか。「戦争を経験するということは、二度とあってはいけない」とも箕牧さんは語っていたといいます。

「日本国内の多く、そして中国など近隣諸国は、日本が今後いったいどのような禁忌を破るのかと懸念している」ともBBCは指摘しています。

 そうした諸外国から見れば、かつての日本は侵略国家であったということなのでしょうか。それなのに、軍備拡大を推進し、それによって国の誇りを取り戻そうと主張する保守派政治家がいます。「核共有」についても議論すべきとも主張します。

日本がまたひとつ、そしてまたひとつと一線を越えるたびに、あるいはその一線を越えようか検討し始めるたびに、戦後日本のアイデンティティー、さらには平和主義をどう堅持するのか、日本人は自問自答を重ねる羽目になる。(出所:BBC Japan

 そうなのかもしれません。

 

 

 サミット開催中の21日には、広島でサミットに反対するデモ隊と機動隊が衝突したといいます。

広島でデモ隊と警察が衝突、地面に押さえつけられる参加者も - BBCニュース

 記事によれば、現場で撮影された動画には、小競り合いの後、警官がデモ参加者を地面に押さえつけている様子が写り、手錠をはめられる画像もSNS上に拡散されていました。このデモにはさまざまな左派集団が参加していたといいます。

 サミットが成功裏に終わったという報道の影にもこうした現実があったようです。政府が非難するどこかの国とあまり変わらない光景が日本でも行われています。

論語に学ぶ

辞(じ)は達するのみ。(「衛霊公第十五」41)

 文章を書くなら、達意であれと意味し、言葉はその意味が相手に伝わることが大事こととなります。

dsupplying.hatenadiary.jp

 ウクライナのゼレンスキー大統領がサミットに合わせ来日しました。真に平和を願い、その早期の実現のための行動だったように思われます。それに対して、心をこめ、何の偽りもなく、G7は行動できているのでしょうか。平和を作ろうとの意思はあったのでしょうか。ウクライナを利用しようとはしていないでしょうか。

 

 

ハト派の方がタカ派的に動きやすい。その魂胆を疑われないからだ(出所:BBC Japan

 防衛力増強を追求する中で日本は一部で「越えてはならない一線」とみられてきた一線を安倍政権や岸田政権のもと越えてきたといいます。

 結党以来「現行憲法の自主的改正」を党是とする自民党に、これまで軍事化に否定的な世論がブレーキとなっていたが、今ではそのブレーキもなくなったといいます。このところの世論調査では、以前より広く軍事力強化を支持する国民が増えているといいます。

 なぜなのかと考えてしまいます。今の政治家では平和を守ることができないという諦めということなのでしょうか。それとも報道の影響もあるのでしょうか。

自民党は今また改憲を目指して勢いを増している。自衛隊の存在を憲法で明確に規定し、日本は自衛のための戦闘力を保持しても良いのだと明記するためだ。(出所:BBC Japan

 これでほんとうによいのでしょうか。

 危機を作り出すことは絶対にあってはならないはずです。自衛のためといえば大義名分になるのかもしれませんが、日本人の誰かが銃を手に取らざるを得なくなり、またヒロシマを繰り返すようなことになりかねないのです。

 日本では戦後の平和主義について世論が割れつつあるとBBCは言います。「被爆者がいなくなったら、日本はどうなってしまうのか。日本国内で多くの人が、同じように恐れている」ともいいます。

 解散風が吹いてきたようです。相変わらずです。これ以上悪い方向に進まないことを願うばかりです。

早期解散、自民で観測高まる サミット・株高が好材料―野党不信任提出なら対応焦点:時事ドットコム

 

「参考文書」

国際秩序維持へ「第三極」取り込み 対中ロ、温度差に危機感―岸田首相・広島サミット:時事ドットコム

米国が問われる国の信望 国際秩序「総意」のために - 日本経済新聞