「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

日本に斬新さを切り拓いた人、坂本龍一さんを偲ぶ

 

 坂本龍一さんが亡くなられ、追悼のコメントが相次いでいます。偉大な方であったのだったと改めて感じます。

  好んで作品を視たり聴いたりしたこともなかったので、坂本さんのことはよく知りませんでした。どちらかといえば、流行りもののように見て反発していたかもしれません。

遺したもの

X JAPAN」のYOSHIKIさんが、とある会社の入社式にサプライズで登場し、坂本さんへの追悼の意を込めて映画「戦場のメリークリスマス」のテーマ曲「メリー・クリスマス ミスターローレンス」を即興で演奏をしたそうです。

YOSHIKI、「戦場のメリークリスマス」テーマ曲演奏し坂本龍一さん追悼「彼がいるおかげで僕らもこうやって世界に向かっていられる」:中日スポーツ・東京中日スポーツ

彼がいるおかげで僕らもこうやって世界に向かっていられる。そういう思いを込めて弾かせていただきました」と語ったそうです。

 YOSHIKIさん自身は坂本さんに直接会ったことはなかったといいます。

 もしかしたら、気づいている気づいていないは別にして、多くの人が坂本さんから直接的に、間接的に影響を受けていたのかもしれません。

斬新さ、最先端

 坂本さんの2013年の対談記事を日経ビジネスが紹介しています。

追憶 坂本龍一氏:出会い。原発。デモ。科学技術。社会保障。そして哲学と音楽。:日経ビジネス電子版

たとえば音楽でも、日本の若い人たちから、海外に対するあこがれがなくなっちゃいましたね。外国のものをマネしないっていういいこともあるけれど、反面、國分さんが言うように、引きこもっちゃうというか内向的になってしまって、外に向かっていかないネガティブな傾向もあって、こちらはちょっといただけない。(出所:日経ビジネス

 坂本さんは、先進である西洋の知を学び、そこから自分たちのオリジナリティを作ろうとしていたようです。それがYMOであり、それをもって斬新さを表現されたのでしょう。

 それが当時の風潮となって世の中が形作られていたのかもしれません。記事を読んで、自分自身もそうした風潮から影響を受けた一人だったのかもしれないと、そんな感想を持ちました。

論語に学ぶ

先進の礼楽に於けるは、野人なり。後進の礼楽に於けるは、君子なり。如(も)し之を用いなば、則ち吾は先進に従わん。(「先進第十一」1)

 周王朝のはじめの頃の人たちの礼楽のあり方は、「野人」のように未完成で素朴であった。後世の人たちのそれは、「君子」のように完成し、華やかで整っている。もし礼楽を用いるとあらば、私は素朴なありかたに立ってみようと意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 質(野人)が文(君子)になってゆくのは時の流れとして普通のことであり、孔子は整美を否定しているのではなく、初心を忘れるなといっているといいます。

語録

音楽について

今の日本の音楽の状況を、哲学のたとえでいうなら、いまの日本のバンドの子たちは、欧米の哲学書をいっさい読まないで日本の先輩の本だけでもうわかった気になって、それ以上原典にさかのぼらないというような、そういう、内向というか、はっきりいっちゃうと、けっこう困ったバンドが増えている、というわけですね。(出所:日経ビジネス

会話について

準備しておいて、ジャズのセッションのように「相手がこう来たから、おれはこの場ではこうやるぜ」と。つまり、練習したことしか弾けなかったらだめなんですよね。準備の通りだったら、それは譜面を見ながら弾いているのと同じですから。それなら、自分の日ごろ勉強していることを発表しているだけになる。ぜんぜん、会話になっていない。(出所:日経ビジネス

遺志

「先進」、他より先に学んだものはやがて完成を迎え、そこから衰退が始まり、やがてあとから追ってくる「後進」にとって変わっていく....。

 戦後約30年経って誕生したYMOは斬新であり、当時の最先端だったのでしょう。

 その解散から40年、その間、日本は華やかに発展しました。しかし、今を見れば、いよいよ衰退が始まったように思えてなりません。

 坂本さんの遺志を引き継いで、新しいことにチャレンジするときなのかもしれません。世界は常に進歩し、前に進んでいるのですから。内向きに陥ることなく、目を海外に向けるべきなのでしょう。それがまた今、求められているように思えてなりません。

 ご冥福をお祈り申し上げます。

 

「参考文書」

日本のエリート、世界では「低学歴」。はるかに“学歴社会”が色濃い欧州で直面した劣等感 | Business Insider Japan