「AI」がさらに進化していけば、仕事がAIやロボットにとって代わる、そんな妄想を抱くと不安になりますし、今流行りの「リスキリング」でどんなスキルを身につければよいものかとの悩みが生じるのかもしれません。
しかし、そう容易く「AI」が人間の仕事を担ってくれることはないのではないかとも思えます。
社会に不正が蔓延するようになり、不公平なことも多くなっています。格差は拡大する一方で、賃上げはなかなか進みません。こうした諸課題の解決にもっと「AI」が活用されれば、よい解決策を導き出してくれそうですが、それを活用しようとの機運が高まることはないのでしょうか。
政策立案に「AI」を活用できないのか
国会では2023年度予算案の審議が参議院でも始まりました。予算委員会で質問に立った立憲民主党の辻元議員が、「最初に申し上げたい。総理の口癖は『さまざまな』で、そう言う時はだいたいごまかす時だ」と切り出し「『さまざまな議論』『さまざまな意見』という言葉は封印してほしい」とけん制したそうです。
岸田首相「言っちゃいけなかった」辻元清美氏の封印要求にも「さまざまな」を連発し、自ら訂正 - 社会 : 日刊スポーツ
肝心の子ども・子育て政策について首相は「社会の変化の中でいま求められる政策は何かを厳選し、内容を具体化しようとしている。その内容を踏まえた予算がどうあるべきかを考え、必要とされる予算を倍増しようという大枠を6月に示したい」と答弁し、未だ具体像を示せないでいるといいます。
こうしたことこそ、過去の政策や公正・公平、中立を「AI」に学習させ強化すれば、いとも簡単に、増税に頼らなくともみなが納得することができる政策が立案できそうです。
それを元にみなで議論すれば、もっと建設的になりそうですが、現実にはそうはならないのかもしれません。邪念があるからなのでしょうか。政治ばかりでなく、他においても同じことがいえそうです。
アンラーニングとリスキリング
「アンラーニング」の必要性を、孫泰蔵さんが説いています。
「アンラーニング」とは、学習棄却とも呼ばれ、これまで学んできた知識を捨て、新しく学び直すことを指すといいます。時代遅れになってしまった価値観や行動パターンを修正することが必要との考えといいます。
孫泰蔵「AIと競争なんてして、どうするの?」:日経ビジネス電子版
今の世界だけがすべてじゃないんだと考えることです。今とは違う社会のあり方を考えることはできます。誰でも、考えてみようと思えばね。今の社会が自分にとって絶対的なすべてだとは思わないこと。(出所:日経ビジネス)
このアンラーニングという概念をもとにして、リスキリングを考えると、「スキル」や「能力」、どんなスキルを身につけるのではなく、「どんな生き方、働き方をしていけばいいのか」と考えることが重要になってくると泰蔵氏はいいます。
こうした視座を養えば、「AI」を脅威とみなすのではなく、有効活用しようと気になるのかもしれません。政治家には特に求められる素養なような気もします。
論語に学ぶ
道に志し、徳に拠り、仁に依り、芸に遊ぶ。(「述而第七」6)
天に道を求め、道徳を根底にして、「仁」人の道を身につけ、芸を楽しむと意味します。
「芸」とは、修練して身につけた技能や学問、技術、わざなどを指す言葉で、「芸は身を助ける」といいます。
孔子のことばを借りれば、天に従い自らの好きなものに没頭し、それを極め、楽しむことができるようになれば、それを糧にすることもできるということなのかもしれません。
ただ、人の道は外してはならならず、同時に並行に、美意識や道徳も鍛錬しておく必要があるということなのでしょう。
人の内面
「AI」はこの世に存在するデータを活用することは得意かもしれませんが、人の内面、心や頭脳に侵入してくることはできません。
自分の欲するものは自分の内面にあって「AI」でさえ知ることはできないのでしょう(予測・予想はできるかもしれませんが)。
自分がほんとうに欲するもの、好きなものは何かを知ることは、自分にとって一番難しい問題なのかもしれません。