「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【DX・リスキリング・賃上げ】注目の人的資本経営、何を学び、どうキャリアップに活かすのか

 

「DX」デジタルによる変革、「リスキリング」デジタルスキルの学び直し、そして、「賃上げ」、これらを三位一体で進める。今の社会に求められていることでしょうか。簡単に言えば、こうしたことができる人材が求められていそうです。

 しかし、思い描いた通りに進まないの世の常、現実の社会でもあるのでしょう。

ご用聞きはSIerの基本属性だ、気色の悪い「お客様に寄り添う」がもたらす害悪 | 日経クロステック(xTECH)

「SI」システムインテグレーション、情報システムの企画、設計、開発、構築、導入、保守、運用などを一貫して請け負うことをいいます。「DX」の肝のようなサービスなのでしょうが、それに携わるエンジニアの質が悪すぎると記事は言いたいのでしょうか。

 

 

 しかし、人手不足のこの折、「DX」に携わるエンジニアを育成しなければ、この荒波を乗り越えていけそうにありません。

 IT分野の未経験の人を採用し、最長3カ月の研修を経てITエンジニアに育成、システムを専門に手掛ける会社や、一般の事業会社のシステム部門に派遣する会社が急成長しているといいます。

3カ月の研修でIT人材を育成して派遣、成功事例テコに急成長:日経ビジネス電子版

 文系出身で未経験だったけれど、今や、いっぱしのエンジニアになっている、という人はたくさんいます。(出所:日経ビジネス

 他社よりコストをかけて人材を育成し、それが強みとなったことが成長の要因のようです。

 3か月の研修には100万円のコストをがかかり、なおかつその間も給与を支払わなければなりません。短絡的になれば、長い研修は無駄との見方もでき、短期間での研修で現場に出て戦力になってもらいたいと考えるのもごく普通なことなのかもしれません。

 しかしそれでは継続的な学びがなければ、手厚い研修期間を設けて世に出てくるエンジニアに適いそうにありません。

 また、この会社は派遣したエンジニアが派遣期間を終えると、その派遣先に転職できる制度も設けているといいます。「派遣先の会社と、派遣で行った社員がお互いに望むならば、その会社で活躍してもらう方が、世の中のためではないでしょうか」と、この会社の社長は述べているそうです。ただ「顧客企業に転職した社員は、やがて発注者になることもある」といい、「損して得とれじゃないですけど長期的には、そういう関係性があった方がいいのだろう」と考えるようになったといいます。

 

 

 こうした機会を得て、リスキリングし、自身のキャリア形成を考えてみるのもいいのかもしれません。

 ただ学び直しはこれだけで十分なのかとの疑問がないわけではありません。冒頭の記事筆者の指摘がある通り、中途半端なエンジニアでは「DX」デジタルによる変革は叶わず、もしかしたら永続的な賃上げにもつながらないのかもしれません。

論語に学ぶ

子貢曰わく、斯(ここ)に美玉有らば、匱(とく)に韜(つつ)みて諸(これ)を蔵(おさ)めんか、善賈(ぜんこ)を求めて諸を沽(う)らんか、と。子曰わく、之を沽らんか、之を沽らんか。我は賈(こ)を待つ者なり、と。(「子罕第九」13)

 隠遁している孔子にむかって、子貢が先生ほどの才能を抱きながら、これを現実に用いないのは、宝の持ちぐされではないか、と出仕をすすめる意をもってたとえ話を切り出しました。

 ここに美しい玉があるとしましょう。箱の中に入れてしまいこんでおいたものでしょうか。それともよい買い手をみつけて、売ったものでしょうか。そう聞かれたのにたいして孔子は、売りますとも、売りますとも、私は買い手を待っているのだ、と答えたといいます。自分の学問は決してわが一身のためのものではないとの含みもあるといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 考えさせられる言葉です。博学でなおかる教養豊かな孔子でさえ、思うような就職口を得ることができず、キャリア形成がうまくいっているとは言い難い状況のように見えてしまいます。

 しかし、孔子は変わりゆく時代にあっても学びを止めず、常に新しい時代を切り拓こうとしていたからこそ、後世にまでその名を残すことになったのではないでしょうか。

 そして、孔子が遺した最大の功績は、学び続けることの有用性ということなのかもしれません。それは、どんな時代、どんな時においても通ずる普遍的な価値なのでしょう。

 

 

 理由はともあれ日本が転換期にあるようです。それに気づいた企業はいち早くそれに適応しようとアクションを起こしているようです。

 人的資本経営が説かれ、人事のしくみを見直し、賃上げに対応できるよう改善を進めているようです。また、より専門性を重視するようになり、社員が自主的に学ぶ姿勢を引き出すような取り組みも見受けられるようになってきました。また先駆的な会社は、自律して動く社員をサポートするように変わってきてもいるようです。

 何を選んで学ぶかが重要なことなのかもしれません。

 孔子は若いときにたいへん苦労し、なかなかよい職をえることができずに、博学になり、深い教養を身につけることになったといいます。その孔子の言葉を借りれば、やはり専門性が磨く研究と同時に、自己を磨く教養を学習し、それを活かして、どんな場面でも実践できる学びも必要なのかもしれません。

 個人的に思うことですが、これが仕事であり、それを通じてキャリアップができればいいのではないかと思っています。何事も創意工夫次第ということでもあるのですが。