外部から強い力や刺激を受けて心を動かすことを「衝動」といいます。
衝動を感じるよう出来事が続けば、その「衝動」に支配されるようになってしまうのでしょう。昨年2022年はまさにそんな年でした。
その「衝動」は行動の源泉となります。しかし、同時にそれを抑制する方法を知らなければ、時に失敗に突き進んでしまうこともあるのでしょう。いずれにせよ、目的が完遂すれば、それは消滅するといわれます。
首相が「衝動」に苛まれ、それを抑制しきれずに「盲信」し、それに向かって猛進していないでしょうか。危うさを感じます。
「力による現状変更」に異議を唱えながら、それに力で対抗しようとするのは最たる例なのでしょう。
G7と国際秩序
世界で生じる問題の解決に強いリーダーシップを発揮してきたG7の枠組みも以前のように機能しなくなっているようです。
よく言えば、G7の理念が機能して、それだけ多くの国に機会を提供し、それによって多くの国が力をつけたということなのかもしれません。しかし、その力が増大し、それが現実の脅威となって始めて、自分たちの弱体化に気づいたりするのでしょう。
「時すでに遅し」、弱体化した枠組みを維持、強化しようとの試みに無理があるのかもしれません。
現状を否定し、過去への回帰はありえないのでしょう。既にG7構成国を凌ぐ経済規模を持つ国が存在し、それを自分らの都合で排除しようとするのなら、それはG7の「エゴ」になってしまいます。それでは嫌われるばかりで、リーダーシップの発揮などありえないのでしょう。
岸田首相「G7が結束して国際秩序を守り抜くべく連携を確認」 | NHK | ウクライナ情勢
新たな問題を作るのが政治と感じずにはいられません。国際秩序の現状維持を図ろうとすることに無理があるのかもしれません。現状維持は衰退の始まりといいます。
論語に学ぶ
故(ふる)きを温めて新しきを知る、以って師と為るべし。(「為政第二」11)
「温故知新」、この四字熟語のもとになった言葉です。過去の伝統を冷えきったそのままで固守するのではなく、それを現代の火にかけて新しい味わいを問いなおすと意味します。
「伝統を墨守するのではなく、永遠の真理の今日的意味をさぐる。」そうした知的訓練を重ねることによってのみ、目前の複雑で混沌とした、しかし、私たちにとっても切実な現実を鋭くまた筋道をたててとらえることができる。 (引用:「論語」桑原武夫)
「尚古主義」、古い時代の文物・制度などを尊び、これを模範としてならおうとする考え方のことをいいます。
首相はこの考えに染まっていないでしょうか。古くなったものをそのまま妄信するようでは進歩を遠ざけるようなものです。
「古にして時に乖(そむ)かず、今にして弊に同せず」という古語もあります。古を守りつつも時流から外れない、現代的でありながらも、時弊に染まらないと訳すそうです。
民主主義を守りつつも、台頭してくる新興の力に怯えることがなく、またその弊害に染まることもない。力による解決という悪習を用いず、その力を別の何かに転じさせ、より有用なものしていく、これが現代において求められていることではないでしょうか。
「力による現状変更」、「安全保障環境が厳しさを増している」、首相の問題提起に問題がありそうです。
それよりももっと早く解決しなければならないことが、日本国内に、そして世界に山ほどあるはずです。
米国を妄信するばかりの首相の目がそちらに向くことはあるのでしょうか。
「参考文書」
民主主義の軽視、少子高齢化、ニュース砂漠化…江川紹子が危惧する「今年直面する正念場」