「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

所信表明で何を語るのか、避けるべきは多数派による専制、国会の少数意見こそ世論ではないか

 

 自由闊達な話し合いができれば、意見が対立することもないのでしょうが、なかなかそうできるものではないのでしょうか。多様な意見があって然るべきなのに、その違いを認めあうことは難しいことなのかもしれません。

「闊達」とは、度量が広く、小事にこだわらないさまを意味します。小事もおろそかにすることはできませんが、こだわり過ぎてはならないのかもしれません。

 首相の所信表明で国会の幕が開け、論戦がはじまります。つっこまれるネタを提供するのではなく、理路整然に、秩序回復が明確に伝わる表明から始めて欲しいものです。

 

 

 しかし、そうはならないかもしれません。所信表明の原稿を入手したメディアが、関係者に取材し、早速批判報道を始めています。

岸田首相の臨時国会「所信表明演説」原稿を入手 「聞く」力が「厳しい意見を聞く」に“自虐”変更! | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌]

 世論が割れた国葬について自画自賛し、社会的に問題が指摘されている団体の件と合わせて、「国民の皆様の声を正面から受け止め、説明責任を果たしながら、信頼回復のために各般の取組を進めてまいります」と述べるそうです。

国葬の開催や、旧統一教会問題への対応など、自身の決断が悪いほう、悪いほうへと進んでいるので、かなりピリピリしています。(出所: Smart FLASH

 また、自身の「聞く力」にも言及し、それを「厳しい意見を聞く」に変えるそうです。

 首相自身が「最近、厳しいことしか言われない。これに耐えている姿勢を見せないといけない』と言いはじめ、結局、この文言になりました」」と記事は指摘しています。

 自省し改めていくということなのでしょうが、逆にそれは、これからも意見は聞くが、我も通していくということを暗に言おうとしているようにも受け取れます。

論語に学ぶ

三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず。 「為政第二」4

三十歳に至って独りで立つことができた。やがて四十歳のとき、自信が揺るがず、もう惑うことがなくなった。五十歳を迎え立つとき、天が私に与えた使命を自覚し奮闘することになった。その後、苦難の道を歩んだ経験からか、六十歳ともなると、他人のことばを聞くとその細かい気持ちまで分かるようになった。そして、七十のこの歳、自分のこころの求めるままに行動しても、規定・規範からはずれるというようなことがなくなったと意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 首相もそろそろ、異説を聞いても、それを素直に耳に入れ、わざわざ反撥するようなことのないのようにすべきではないでしょうか。

 対立する意見の中和に努めれば、収まるべきところに自然に収まっていくのでないでしょうか。

 

 

 世界において、民主主義が失速し、強権主義が台頭しているそうです。

「世界の10人に7人が強権国家に住み、民主主義はいまや3人未満」、混迷の背景に強権国家の攻勢に加え、民主主義の劣化とそれに失望した新興国の離反があるといいます。

民主主義国の人口、世界で3割未満に 新興国が離反: 日本経済新聞

 日本経済新聞によると、英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」の調査で、こうした結果がまとまったそうです。

 日本の今日の混乱状況からすれば、合点のいくことではないでしょうか。民主主義の劣化が強権主義を助長し、民主主義自体も強権主義に近づいていったのかもしれません。

 

 

 首相も民主主義にふれますが、自身の政権運営は民主主義に根差していると断言できるのでしょうか。民主主義の劣化に加担しているようなことは断じてないと言い切れるのでしょうか。

 この国会でその姿勢が問われるのでしょう。政治は結果というそうですが、今そのプロセスが注目されているように感じます。

 多数決によって決するのが民主主義の基本なのかもしれませんが、少数意見を無視してよいということではないのでしょう。時に、国会における少数意見が国民の声を如実に反映している場合もあるのでしょう。

「多数決の原則」と「少数意見の尊重」について考える~シルバー民主主義と東京一極集中にどう向き合うべきか~ |ニッセイ基礎研究所

多数派の意見ばかりに基づいて意思決定が行われ、少数派の意見が極めて通りづらくなる「多数派の専制」に陥ることが懸念される。(出所:ニッセイ基礎研究所) 

 こうした国会運営が長く続いていたことを思い出します。

「多数派の専制」の下では、必要な改革がなされず、手遅れとなってしまう可能性も否定できないと記事は指摘し、「多数派の利益を優先することが、将来に渡っても好ましい影響をもたらすとは限らない」といいます。

 自由闊達に話し合い、その違いをどう乗り越えていくのか、その結論を求め、民主的なプロセスで結果を示していくことが求められていそうです。

 

「参考文書」

岸田首相、補正成立に全力 旧統一教会、細田・山際氏に野党照準―臨時国会3日召集:時事ドットコム