「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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大きな喪失感、権威を示し、敬愛されたエリザベス女王逝く

 

 クイーン・エリザベス、英国のエリザベス女王が亡くなられました。在位70年、歴代最長といいます。享年96歳。英国の安定と国民統合の象徴として絶大な人気と尊敬を集めていたそうです。

「権威」とは何かを示された方であったのではないでしょうか。大きな喪失感を感じます。心より哀悼の意を表します。

エリザベス英女王が死去 在位70年、歴代最長 | 共同通信

 新国王には長男のチャールズ皇太子が即位するといいます。「国家的支柱を失った英国は服喪期間に入り、新たな時代を迎える」と共同通信が報じています。

 

 

 ドイツのショルツ首相が、「第2次大戦の戦禍の後、ドイツと英国の和解に尽力した女王の功績が忘れられることはないだろう」と哀悼の意をツイートしたといいます。

 また国連のグテレス事務総長は、長年の公務に敬意を示し「世界は彼女の献身と指導力を長い間、忘れないだろう」と追悼したそうです。

献身と指導力「忘れない」 国連総長、総会で黙とう | 共同通信

女王が品格や威厳で世界中の尊敬を集め、英国などの植民地支配からアフリカやアジアの国々が独立する激動の時代で「心強い存在だった」と振り返った。(出所:共同通信

王冠を欠けた恋と女王の決意

「王冠を賭けた恋」、1936年に起きた英王室で起きた出来事です。その主人公は、後にウィンザー公爵と名乗る、エドワード8世、離婚歴のあるアメリカの平民女性ウォリス・シンプソンと結婚するため、イギリス国王の地位を捨てた人です。歴代最短の在位期間わずか325日でした。

 人間味あふれるドラマだったのかもしれませんが、権威を守ろうとする王室にとっては恥辱にまみれた出来事だったのではないでしょうか。

【王位継承物語】王冠をかけた恋 君主の身勝手がもたらした危機 関東学院大教授・君塚直隆(1/3ページ) - 産経ニュース

 その2代あとがエリザベス女王でした。この事件を機に、英王室の権威はいたく傷き、エリザベス女王が、死ぬまで女王として働く決意をしたのは、この事件からだったそうです。

 エリザベス女王が即位した後も、同様な出来事が続きます。妹君マーガレット王女やダイアナ妃、それらは女王にとっての危機だったといわれます。特に、ダイアナ妃の交通事故後の対応で、女王の権威は失墜したといわれました。

国民の怒りを知った女王は、その後王室の威信回復のため、王室費の削減を決め、パブを突然訪問するなど国民と近づく必死の努力をした。これが実を結び、一時戦後最低となった王室支持率は急上昇、女王の権威は復活した。(出所:毎日新聞

 

 

女王としての権威

 記事は、女王が90年にアイスランドを訪問した際の出来事を紹介しています。

エリザベス女王、若き日の決意「死ぬまで奉仕」 70年の威厳 | 毎日新聞

 蒸気の出る穴を見学した際、風向きが変わって蒸気が女王一行に襲いかかった。逃げ出したお付きのものもいたが、女王は動かず、蒸気が去った後に乗っていた板からゆっくり下りた。女王の落ち着きはらった振る舞いに観衆から拍手が起こった。

「ドント・パニック(うろたえるな)」。

上に立つものが、慌てふためいてはならぬ、との英国教育の教えを体現していた。女王の威厳である。(出所:毎日新聞

 権力を持たない王室にとっての「権威」を示す態度だったということなのでしょうか。

女王は死ぬまで国民に奉仕する、との若いときの決意を見事実現した」といいます。

論語に学ぶ

吾未だ徳を好むこと色を好むが如き者を見ざるなり。(「子罕第九」18)

「色を好む」とは美人を愛することと桑原武夫は読み、美人を愛するほどの熱意をこめて徳を好む人間に、自分はかつてお目にかかったことがないと解します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 道徳と美女を天秤にかえるような大胆な発言と桑原武夫はいいます。しかし、孔子は正義に対すると同じ程度に美に対しても敏感な人であったといいます。みずから美女を追い求めはしなかったにしても、これに無感動であったとは思えない。

「この言葉は道徳が頭脳だけのものでなく、全身的なものでなければならぬという大前提の輝く尖端なのである」と桑原は言います。

 身内の色恋に悩まされ続けた女王、権威を失わなった70年、敬服いたします。権威者としての徳のあり様をお示しいただいたのでしょう。

英エリザベス女王、死去 英王室発表 - BBCニュース

 献身、奉仕、そうした言葉が多くの人たちから寄せられています。

 

 

 日本では昨日、首相が問題の国葬について、国会で答弁し、自民党は問題とされる宗教団体と接点のある議員の人数と名前を公表しました。相変わらず、首相の弁明は何も変わらなかったようです。在位8年ちょっと、大した功績もなかったといわれているようにしか感じません。残念です。所詮、こんなものということなのでしょうか。比較にも値しないのでしょう。

 在位70年、権威を示し続け、国民に敬愛された女王を英国はどのように見送るのでしょうか。

 

「参考文書」

エリザベス女王、英国への「奉仕」にささげた96年 21歳の演説体現 | 毎日新聞

「戦後和解に尽力」 ドイツ首相、英女王を称賛 | 共同通信

「女王は一君主を超えた存在だった」 米大統領夫妻が哀悼 | 毎日新聞

「君主、母の死を悼む」とチャールズ新国王 | 共同通信