「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

マイナポイントは何のため、邪道との指摘も、非人間的に見えるアマゾンの生産追求の凄さ

 

ユニコーンバブルの崩壊」、ソフトバンクグループが3兆円を超す赤字を発表し、孫社長ユニコーン企業の評価がバブル状態だったと反省したといいます。2022年に入り、テクノロジー業界の経済成長が鈍化したといわれているのだから当然の結果ということなのでしょうか。

 そのテクノロジー業界で雇用の縮小が相次ぐ中、「アマゾン」が異彩を放っているといいます。

 英国アマゾンは、4,000人以上の正社員を雇用すると発表、ソフトウェア開発、製品管理、エンジニアリングのほか、フルフィルメントセンターなど多岐にわたる業務で募集するといいます。2021年にも研究開発やAWSを含む業務全体で雇用を創出し、15,000人の正社員を採用していたといいます。

 

 

 ただ、離職率の高さの問題をアマゾンは抱えているといいます。

 米国の倉庫作業員の離職率は毎週3%と高く、年換算では150%に達するそうで、8カ月ごとに人員がそっくり入れ替わる計算になるといいます。

レイオフ続くテック業界、一方で英アマゾンは数千人規模の雇用へ。その理由と隠れた事情とは? | AMP[アンプ] - ビジネスインスピレーションメディア

高すぎる離職率の原因は、過度な生産性追求による厳しい監視や、システマティックな管理体制が指摘される。(出所:AMP)

 AMPによれば、アマゾンの人事管理システムは徹底しており、時にマネジャーの意見よりも優先されるそうです。行き過ぎたシステム化で「人材を無駄遣いしているようなもの」との批判の声もあるといいます。AMPは「人間的」とは言い難い人事システムといいます。

 一方で、アマゾンは人材育成や福利厚生の拡充、賃金アップなどに取り組み、英国では最低時給が9.5ポンドであるのに対し、アマゾンの時給労働者のスタート賃金は1時間あたり10〜11.1ポンドと高い金額に設定されているそうです。この他にも、民間医療保険、生命保険、所得保護、従業員割引を含む福利厚生や企業年金制度もあり、8割近くがこれらを理由にして入社しているといいます。

 良いのか、悪いのか。ただ日本の生産性の低さと低賃金とは真逆にあるということなのでしょうか。

 

 

論語に学ぶ

射は主皮(しゅひ)せず。力を為すや科を同じくせず。古の道なり。(「八佾第三」16)

 礼射は的にあてるだけではなく、五善を求めるといいます。また、人民を労役に使うとき、体力差で分ける。これが古代から行なわれてきた正しい方法と意味します。

dsupplying.hatenadiary.jp

 古代より、礼にしろ、労役にしろ、人間中心だったということでしょうか。

 元来、生産性や効率改善も、人間を中心にして考えられてきました。工業化以前の時代に職人たちの作業の効率化から始まり、それを簡素化し、標準化し、最適な経済システムを設計、改善することにありました。

 経済性の追求と同時に、職人の仕事を楽にし、職場環境が改善されていくという副産物もあったのではないでしょうか。

 ただ、こうした改善も傍目から見れば、人間を機械のようにしているように見え、非人間的な行為に見えるのかもしれません。

 

 

「改善は無限」といいます。

 アマゾンで行われている生産追求にも終わりがなく、今現時点の姿形はゴールではなく、その途上に過ぎないのでしょう。

 高い離職率を問題視するようになれば、高賃金で引き留め工作しようとするのかもしれませんし、さらに次の施策でその率の改善を図ろうとするのかもしれません。

 考え得る理想に近づけたところで、完璧は存在せず、何かしらの問題を内在させているものです。こうしたことを最小化するように仕事を設計にしますが、同じことの繰り返しで、次の改善ネタを見つけていくのです。

 アマゾンの強みはこうした「エンジニアリング」の基本を知っているということなのかもしれません。

 

 

マイナポイントは邪道なのか

 河野デジタル相がテレビに出演し、マイナポイントに言及し、「マイナンバーカードを持つことで世の中が便利になることを示し、みんなでやろうよとしていくのが王道だ」と語ったといいます。

霊感商法「宗教団体の解散も議論」 河野太郎消費者相: 日本経済新聞

 また、マイナポイントについては「若干邪道なところがある」と言明したそうです。

 世の中を便利にするということも、人間中心の考えであって、その便利さを享受するのは人間です。便益を受けるものと提供する側、その双方で成り立って初めて便利さになるのではないでしょうか。

 

 

 便利さを追求することとは、今よりより良い状態を目指すことです。それを「改善」と呼んでもいいのではないでしょうか。

 専門化した業務を簡素化し、標準化、システム化することで、生産性が向上し、効率が改善されていくのです。時にそれが大規模に行われれば「改革」となり、価値観の変容を伴うのなら「変革」になっていくのかもしれません。

「改善」とは「善」を改めていくということなのでしょうか。根源的で、普遍的な「善」を学び探究し、世相・世情を読み、その中から新たな「善」を探求していくことでもあるのかもしれません。 

 行政においても、「改善」マインドを醸成し、科学的アプローチによる効率化を進めるべきなのでしょう。