「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

気になるその発言、非礼ではないか、伝播する悪しき影響

 

 世界の政治リスクを分析する米ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏が、米国の民主主義が手をつけられないほどの状態で、同盟国ががくぜんとするほどひどい状況にあるといいます。

手が付けられぬ米国政治の混乱 イアン・ブレマー氏: 日本経済新聞

 ブレマー氏は、2021年1月6日におきた議会襲撃を調査した下院特別委員会が公表した証拠があるにもかかわらず、トランプ氏や支持者の法的責任追及を確信する人がワシントンにはいないといいます。米国内の分断化が極めて深刻な状況ということでしょうか。

 

 

そんな状況にあってもなお、米国は世界の覇権国を維持しているといいます。

天然資源が豊富で、経済は活力にあふれ、金融システムは強力だ。米国の技術は世界基準になり、大衆文化は世界に刺激を与え、米軍は世界各地に派兵できる。優位性は過去よりも高い。(出所:日本経済新聞

 しかし、G7を中心としたロシア包囲網は広がらず、G20は機能不全に陥っています。

 かつては、西側の民主主義と法の支配はより優れていると誰もが確信していました。当時は、自由で公正な選挙という純粋な競争で指導者が決まる政治システムを望む人の称賛を得ていたといいます。それがソ連崩壊、冷戦終結の主な理由になったとさえいいます。しかし、現在はどうなのでしょうか。米国の開放性と強力な政治体制に疑念が生じていないでしょうか。

 そんな米国との関係を日本は同盟国として重視しています。言葉を変えていえば、依存度が増し、盲目的に追従しているようにさえ見えます。なぜそうなってしまったのでしょうか。冷静に見つめ直す必要があるのかもしれません。

論語に学ぶ

顔淵 仁を問う。子曰わく、己を克ちて礼に復(ふく)するを、仁と為す。一日 己を克ちて礼に復すれば、天下 仁に帰す。仁を為すは己に由(よ)る。人に由らんや、と。

顔淵曰わく、其の目(もく)を請いて問わん、と。

子曰わく、礼に非(あら)ざるもの視ること勿(な)かれ、非礼 聴くこと勿れ、非礼 言うこと勿れ、非礼 動くこと勿れ、と。(「顔淵第十二」1)

 愛弟子 顔淵が「仁」とは何かと質問しました。孔子は「利己を抑え、規範(礼)に立つことが「仁」である。ひとたび利己を抑え、規範を実行するならば、世の人々はみな、「仁」を実践することになるであろう。「仁」人の道を実践するのは、己の覚悟しだいなのであって、他人に頼ってできるものではない」と答えました。

 顔淵が「その実践内容はどのようなものでありましょうか」と尋ねます。すると孔子は「非礼」、礼節さを欠き、規範でないものを視るな、聴くな、言うな、行なうな」と言ったといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 国民の安寧を願えば、「礼」の精神に従えとの孔子のアドバイスで、そのためには非礼にかかわるなということなのでしょうか。

 

 

 残念なことに日本でも「非礼」と言えそうなことが横行していそうです。参議院選挙の街頭演説で山際大臣が「野党の話聞かない」との発言をし、国葬を巡っては、自民党の茂木幹事長が、国葬に反対する野党に反論し、「国民から『国葬はいかがなものか』との指摘があるとは、私は認識していない」と発言したといいます。「野党の主張は聞かないとわからないが、国民の認識とはかなりずれているのではないか」とも述べたそうです。

茂木幹事長「国葬反対は国民の認識とずれている」 野党の一部に反論 | 毎日新聞

 与党や野党間での駆け引きなのでしょうが、現実を歪曲するような茂木幹事長の言葉に誠意を感じることはできません。礼節さを欠いているからもしれません。

 

 

 米国ジョージタウン大学の准教授クリスティーン・ポラス氏が「無礼な人は、まわりを不幸にする」といい、「礼節は大切」と力説しているそうです。今の米国社会を反映した意見なのでしょうか。

「理不尽な上司」「まわりを見下す部下」という現実。中には無礼だが結果を出す人もいる。この「デキるけどイヤな奴(やつ)」という問題。「勝手にしやがれ」ではすまない。新自由主義が骨の髄まで染み付いた社会を生きる私たちが直面する問題だ。(出所:好書好日)

 洋の東西を問わず、「礼節さ」が問われているのかもしれません。

 こうした礼節さに欠けける人たちは、周囲にどんな影響を与えたいのか、周りの人にとってどんな存在でありたいかと考えたことがあるのでしょうか。道徳を悪用するのではなく、徳を学び、「忠恕」なるものを身につけて欲しいものです。

 もっとらしく聞こえる話も実は利己的なものが多く、配慮や思いやりに欠けているのかもしれません。そうした意見が世界中に充満していそうな気がします。

 

「参考文書」

クリスティーン・ポラス「Think CIVILITY」 礼節は大切、コロナ渦で共感|好書好日