「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

スタートアップ投資を始める年金基金は、何を基準に投資先を選ぶのだろうか

 

「市場のクジラ」と呼ばれ、国民年金と厚生年金の保険料を一括して運用する公的機関GPIF 年金積立金管理運用独立行政法人が、国内のスタートアップへの投資に乗り出すそうです。世界最大級の機関投資家が動くことで、遅れているといわれるスタートアップの育成に弾みがつく可能性があるといいます。

GPIF、国内スタートアップ初投資 年金マネーの呼び水に: 日本経済新聞

  独立系VCのグロービス・キャピタル・パートナーズが組成するファンドに数十億円規模で出資するそうです。このファンドはすでに500億円の資金を集め、製造業や医療、建設といった業界の有望企業を探すといいます。

 乱立するファンドとは違う視点で、投資して欲しいものです。

 

 

 評価額が10億ドル(約1350億円)以上の未上場企業「ユニコーン」が米中に比し、日本は極めて低いといわれています。これまでと同じ視点で、同じ対象に出資していては同じ結果になりはしないかと危惧します。

 政府はデジタル社会を標榜し、それを成長戦略としますが、それは単に遅れている領域のキャッチアップ戦略にも解釈できます。米中のユニコーンを模すことなく、未来の日本を支える日本らしい企業が育てるべきのではないでしょうか。

 100年続く企業にも創業期があるものです。

 化学メーカの旭化成の前身「旭絹織」が創業したのが1922年でした。創業者は野口遵氏。

 AERA.dotによれば、1921年に欧州を視察し、当時、最先端であったドイツの人造絹糸レーヨンの製造技術と、イタリアのアンモニア合成技術を見聞きし、これらの技術をもとにした事業は必ず当たると確信したのが始まりといいます。

旭化成は“野武士集団” 住宅からサランラップまでチャレンジ精神(1/2)〈週刊朝日〉 | AERA dot. (アエラドット)

野口の読みどおり、人造絹糸は絹の代替品として価格も安く大人気となる。作れば作るだけ売れ、生産が間に合わないこともあった。もう一つの技術であるアンモニア合成技術も成功し、その後、石油化学につながり、20世紀の工業発展の礎となった。(出所:AERA.dot)

 新たなことに挑戦するのが、旭化成の社風なったのでしょうか。「リチウムイオン電池の開発」でノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんも旭化成に在籍し研究を続けていました。

 自分がやるという意志や情熱を持ち、チャレンジ精神が旺盛なことから、旭化成は「野武士集団」と評されるとAERA.dotはいいます。

 

 

論語に学ぶ

 子貢曰わく、斯(ここ)に美玉有らば、匱(とく)に韜(つつ)みて諸(これ)を蔵(おさ)めんか、善賈(ぜんこ)を求めて諸を沽(う)らんか、と。子曰わく、之を沽らんか、之を沽らんか。我は賈(こ)を待つ者なり、と。(「子罕第九」13)

  弟子の子貢が「ここに美しい玉があるとしましょう、それを箱に入れて倉庫にしまっておきましょうか、それとも、善い買い手を求めて売りましょうか」と孔子に尋ねました。すると、「売ろう、売ろう。私は買い手を待っている」と孔子は答えたそうです。  

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「安民すなわち人民に奉仕する」、それが孔子の目的で、良い仕官の道があれば、喜んで出て経綸を行ないたいという願いがあったといいます。

  荻生徂徠は「賈」を仲買人とし、玉の目利きができる仲介者と解釈したといいます。現代でいえば、これがベンチャーキャピタルの役割ということでしょうか。単にリターンを求めるばかりでは、玉の目利きにはなっていないのでしょう。それも重要な一要素なのでしょうが、投資対象となるスタートアップ経営者たちの人格も忘れてはならない大切な要素なのではないでしょうか。

 

 

旭化成の“旭”は、レーヨンを創業した滋賀県膳所に「旭将軍」木曽義仲の墓があることから、“化成”は「よい方向へ生成、変化、発展する」という意味で、中国の「易経」からつけたものだという。(出所:AERA.dot)

 ソフトバンクグループのビジョン・ファンドが保有する資産価値が、2022年4-6月期(第1四半期)にまた減少した可能性があるといいます。出資する上場企業の株価が大きく下落したためで、ブルームバーグの試算では約2500億円減少しているといいます。

ソフトバンクGファンド、4-6月価値は1兆円超減少か-アナリスト - Bloomberg

4-6月期の出資先上場企業の株価騰落率を見ると、食事宅配の米ドアダッシュは45%安、米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズは43%安、韓国電子商取引のクーパンが28%安と軒並み下落。下落率は世界株式のベンチマークであるMSCIワールド指数の17%を上回った。(出所:ブルームバーグ

  ビジョンファンドは、AIを使ったユニコーン企業には「進化のためのビジョンがある」としているそうです。

 激変する国際社会をどこまで想定してビジョンを描いていたのでしょうか。ただ社会が変わろうと、人々が求めるものの根本は大きな変化がないように思います。ユニコーンたちの進化が気になります。

 

「参考文書」

法人の「人格」を考える: 日本経済新聞