「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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中抜き、多重下請け構造が常識か、公取委が明らかにしたデジタル変革を支えるソフトウェア開発の実態

 

 公正取引委員会が、「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」を公開しました。DX デジタルトランスフォーメーションを支えるソフトウェア業において、多重下請構造型のサプライチェーンが存在し、下請法上の買いたたきや仕様変更への無償対応要求といった違反行為の懸念があることから実態調査したといいます。

(令和4年6月29日)ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書について:公正取引委員会

 自社では作業しないにもかかわらず利益を得る「中抜き」が多く存在することが公取委の調査で明らかになったといいます。

報告書では中抜きをする企業が、下請けが何層にも連なる「多重下請け構造」を悪化させ、独占禁止法違反行為を助長する恐れがあると指摘した。(出所:日本経済新聞

 これでは、デジタル変革、デジタルトランスフォーメーションが適正に進まないのもあって当然なのかもしれません。

 

 

論語に学ぶ

孰(たれ)か微生高(びせいこう)を直と謂う。或るひと醯(けい)を乞いたるに、諸(これ)を其の鄰(となり)に乞いて、之に与えたり。(「公冶長第五」24)

 ある人が微生高という人のところへ酢を借りにいったといいます。自分の家にはあいにく酢はない、すると、彼はわざわざ隣の家から借りてきて融通したといいます。孔子はそういうことが「直」というのかと言ったそうです。

dsupplying.hatenadiary.jp

「微生高は直と世間はいうが、そんなことはない。私の家で彼のところへ酢を借りにいったら、隣の家から借りて来てすぐに用立ててくれた。融通のきくいい男ですよ、世間の貼るレッテルなぞあてにならないさ」と孔子がいったと桑原武夫は解説します。

 酢をまた貸しするのはいいとしても、仕事を転々と外注していくのはどうなのでしょうか。

多くの事業者が不必要な「中抜き」事業者の存在を感じている」。

 中間での介在が一概に問題があるとはいえないものの、買いたたきなどのしわ寄せや情報伝達の混乱を生じやすくさせるおそれがあるといいまます。

このような「中抜き」事業者の存在はいたずらに多重下請構造の多層化を進め、情報伝達の混乱を引き起こしやすくするなど、独占禁止法・下請法違反行為を誘引・助長するおそれがある。(出所:公正取引委員会

ソフト開発「中抜き」、独禁法違反助長の恐れ 公取委: 日本経済新聞

 日本経済新聞によると、こうした実態は「独禁法・下請法違反行為を誘因・助長する恐れがある」とし、公取委は契約内容の明確化やサプライチェーン(供給網)のスリム化を呼びかけたほか、今後は摘発強化に乗り出すとも説明したといいます。

 

 

 ハードウェアに携わっていたとき、社内で生産していてはコストが高くなるといって、なにから何まで外注化し、それが当たり前でした。しかし、納品されてくる品物は不良品が多く、社内を混乱させていました。よくよく調べてみれば、必要な技術や知識、ノウハウがみな外注に流出するばかりで、設計者が作る図面(仕様書)が曖昧なものになっていたことが原因のひとつでした。元々は社内の過負荷を避けるために外注化していたのかもしれませんが、いつしかそれが形骸化し、逆に弊害を多く生み、かえってムダを生じさせてはコスト高にもなっていました。

 ハードウェアとソフトウェアでは違うのかもしれませんが、外注化を止めた方が案外シンプルになり、それによるメリットの方が大きいかもしれません。

 付加価値のない「中抜き」ばかりでは、利益・管理費ばかりが増大するばかりです。それを無理くりつじつま合わせしようとすれば、コンプライアンス違反になっていくのではないでしょうか。

 

「参考文書」

ソフト開発での多重下請、公取委が取り締まり強化へ 「優越Gメン」が立ち入り調査 - ITmedia NEWS