「ウエルビーイング」という言葉にさらに注目が集まるようになっているのでしょうか。日立やPwCまでが、「ウエルビーイング」の企業レポートを発行しています。
「ウェルビーイング」、身体的、精神的、社会的にすべて満たされた状態をいうそうです。「幸福」と訳されることもあるといいます。また、ここ最近においては「幸福学」という研究も進んでいるといいます。
幸福学研究の第一人者の慶應義塾大学大学院の前野隆司教授は、「幸福学」とは、心理学を基礎として、自分が幸福か幸福でないかを一人一人に考えてもらい、統計的にどういう人が幸せなのかを明らかにしていく学問といっているそうです。「幸福」を科学するということなのでしょうか。@Livingによれば、「幸福が一体どんなものかを定義するのは、哲学の範疇」と前野教授は述べているそうです。
「自分の幸せを考えながら、みんなの幸せも同時に考えて、社会全体で持続的な幸せをめざす」、それが「ウエルビーイング」と前野教授はいいます。
また、四つ葉のクローバーのように4つの因子が欠けることなくひとつなぎに関係し合い、これらすべてが満たされているときに人は「幸せを感じる」と定義してるそうです。
「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)、「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)、「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)、「ありのままに!」因子(独立と自分らしさの因子)(出所:PwC)
例えば、ビジネスパーソンであれば、「自身の強みを生かしてやりがいを持ち、人とのつながりに感謝をして、楽観的に前向きにチャレンジし、自分らしい個性を生かす」——これらが同時に達成されたとき、幸せな状態で人は働くことができます。社員みんなが4つの因子を満たすように働ける社風ができると、その会社は良い状態だといえるでしょう。(出所:日立)
一方で、PwCは、こうした流れから「幸福度マーケティング」を提唱しています。さらに、「ウェルビーイングが企業経営においても重要な着眼点となっている現在、さまざまな業種でウェルビーイング、ウェルネス、幸せといった言葉が掲げられているがゆえに、ウェルビーイング単独では差別化されたコンセプトにはなりづらいのだ」と主張します。
どうなのでしょうか、幸福の押し売りではないかと思えてしまいます。それでは、「ウエルビーイング」から離れていくように感じます。
論語に学ぶ
仁 遠からんや。我 仁を欲すれば、斯(すなわ)ち仁に至る。(「述而第七」29)
「仁」は遠い、しかし、それだけにそれを欲求する熱意が強ければ、たちまちに現前するのであるとの意味です。
仁は至難でもなければ安易でもない。それを現前せしめるのは意志の志の問題としていると桑原武夫は解説します。
人は元来「幸福」を希求するのものではないでしょうか。「幸福度マーケティング」という新しい手法によらなくとも、その根本にある「意志」に訴えるべきでいいのかもしれません。小賢しいことは逆に、ミスリーディングになってしまうのではないでしょうか。「幸福」を強調するあまり、そのギャップに苦しむ人も現れそうです。
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今年の梅雨は、史上最短になるとか、そんなニュースを聞けば、何か変だなと不安を感じたりするものです。ここ最近は変なことばかりが起きているようで、ますます不安を募らすことになっていないでしょうか。社会が不安ばかりになれば、幸福感はますます遠退いていきそうです。幸福の反対にある不安をどうやって解消すべきなのでしょうか。もしかして、それは煽る行為を止めさえすればいいのかもしれません。
企業が取り組むべき「ウェルビーイング」とは? 幸福学の第一人者に聞く:社会イノベーション:日立
「参考文書」
「幸福学」研究者に聞く、幸せ格差が広がる時代のコミュニケーション術とは | @Living アットリビング