大型連休中でも世界は動き、より良い方向を探求しているのだろう。米FRBは政策金利を0.5%引き上げることを決め、また、積極的な金融引き締めでインフレを抑制する姿勢を鮮明にしたという。欧州では、EUがロシア産石油の輸入を年内に禁止する方針を打ち出し、原油は6カ月以内に禁輸にするという。
ロシアは岸田首相など政府関係者63名の入国禁止を発表したそうだ。一方、その人たちは外遊し、国際協力などを協議している。
幕末に生き、西南の役で没した西郷南洲は「敬天愛人」という言葉を遺した。
「道は天地自然の物にして、人はこれを行うものなれば、天を敬するを目的とす。天を敬い、人を愛し、天を知り、己を尽くし、人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ねるべし。天は人も我も同一に愛し給ふゆえ、我を愛する心を以て人を愛する也」
史実として、西南の役があり、薩摩軍が敗れ、西郷隆盛は自刃した。ただその時の隆盛の真意、心情は誰も知ることはできず、推測するしかない。
不平士族に担がれただけだったのか、それとも他に何か思いがあったのだろうか。勝算はあったのだろうか、蜂起後の世をどう見ていたのだろうか。隆盛の心根は彼自身のものだが、もしかしたら、敬天愛人に根差し、すべてを天命に委ねたことからだったのだろうか。
論語に学ぶ
「道の将（まさ）に行なわれんとするや、命なり。道の将に廃（すた）れんとするも、命なり。公伯寮 其れ命を如何せん」（「憲問第十四」36）
魯国の実力者季孫氏に仕える公伯寮が、孔子の弟子の子路について事実を曲げ悪しざまに言っていた。ある人が孔子に「季孫氏が子路をすごく憎んでおります。公伯寮を、私の力で処刑し、さらし者にすることができます」と告げたという。
すると孔子は「世に道義が行われますのも、廃（すた）れますのも、ともに天命であります。公伯寮ごときが天命を動かせましょうか」と答えた。
自分の意思で世を思い通りにすることはできない。人それぞれに役割があって、その総意を束ねて世の中は動いていくのだろう。それが天命であり、人ひとりの行動では如何ともしがたいこともあるのだろうか。
孔子は天命を得た以上、暴力によって滅びることはないという自信はあったといわれる。ただ「天道は是か非か」については確定な答えを出していないという。
「天道は是か非か」は、後の司馬遷の言葉で、「天は善人に味方して悪人を滅ぼすなんてことは、本当にあるのだろうか、それともないのだろうか」と悩める心情を吐露したといわれる。歴史を振り返れば、不遇なままにこの世を去った善人や、逆に、悪いことをしながらも罰せられることがなく天寿をまっとうした者たちが、数多く見られたことから、この言葉になったそうだ。
西郷南洲もまた然りなのだろう。敗軍の将で悪人と評されてもおかしくはないが、後世には「仁」の最高の実践者であり、善人として見られ、その銅像は日本各地に残り、逸話も多い。
8か月に及んだ西南の役は、隆盛が自刃したことで終わり、そして、これ以降、日本では内戦がなくなった。
世の中はただ天命に則り、粛々と前へと進んでいくだけなのだろうか。
各々がそれぞれの役割を演ずる。未だ鳴りやまない砲火が終わりを迎えるとき、どんな世界が待っているのだろう。
「参考文書」
