「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

遠ざかる「核なき世界」、大量破壊兵器の使用を阻止できるのか

 

  口論などの諍いは絶えないものだが、それでもそこに一定のルールがあれば、戦争まで発展することはないのだろう。しかし、ルールを逸脱する者はいつの世においても必ずいる。

変わる目標

 ロシア国防省が、ウクライナにおける「軍事作戦」の第一段階はほぼ完了したとし、ウクライナ東部ドンバス地域の完全「解放」に焦点を当てると発表したという。ロシアがより限定された目標に切り替えている可能性があるという。

ロシア、ドンバスに集中と表明 ウクライナでの計画縮小示唆か | ロイター

 高すぎる目標を掲げ、その功があがらないと見るや、目標を下げて、実績作りに精を出すということなのだろうか。

 戦争の長期化、泥沼化が危惧される。また、そのために生物・化学兵器の使用の可能性があるという。何とも怖ろしい話である。ルール、道義を守るという自制心を失ってしまえば、人は何でもできてしまうのだろうか。

 

 

大量破壊兵器の使用を阻止できるか

 条約で禁止されているはずの生物・化学兵器をロシアは過去においても使用したのではないかと疑念がもたれている。一度箍が外れてしまえば、意図も容易く、同じ過ちを繰り返すようになるのかもしれない。嘘と言い訳を伴って。

 人は現実をみて事実を認識し、その事実の中の真実を見極めようとする。ただ真実は思い込みと共に個人の中に宿る。それがみなに理解されようがされまいと。

論語に学ぶ

定公(ていこう)問う、一言にして以て邦を興す可きもの、諸(こ)れ有りや、と。孔子対(こた)えて曰わく、言(げん)は以て是(かく)の若(ごと)くなる可からざるも、其れ幾(ちか)きか。人の言に曰わく、君為(た)ること難(かた)く、臣為ること易(やす)からず、と。如(も)し君為ることの難きを知れば、一言にして邦を興すに幾からずや、と。

曰わく、一言にして邦を喪(うし)うもの、諸れ有りや、と。孔子対えて曰わく、言は以て是の若くなる可からざるも、其れ幾きか。人の言に曰わく、予(よ)君為ることを楽しむ無し。唯だ其れ言いて予に違(たが)う莫(な)し、と。如し其れ善にして、之に違う莫ければ、亦(また)善ならずや。如し不善にして、之に違う莫ければ、一言にして邦を喪うに幾からずや、と。(「子路第十三」15)

 

 

「定公」、魯の君主で、兄昭公が重臣たちに国外に追放された後、擁立されたという。その定公は孔子を大臣に抜擢し、「一言で国家を隆盛にするに足る言葉が有るか」と、孔子に質問し、孔子は「ある人の言葉にこうあります」と前置きし、「君主となることは難しく、臣下とすることもまた易くはない」、「もし、君上が君子たることの難しさをご理解なさるならば、君為る難しが、国家を隆盛にするにぴたりの一言に近くはございませんでしょうか」と答えた。

 さらに定公は「一言で国の滅亡となるにぴたりの言葉があるか」と質問し、孔子はまた「ある人の言葉にこうある」と前置きし、「君主であること自体で楽しいことはないが、自分が発言すれば、誰もそれに逆らわない」、「もしその発言が正しく善いものであり、みなが従いますのならば、結構なことです。しかし、もし正しくなく悪しきものでありましたにもかかわらず、みなが従うといたしますならば、亡国に至るにぴたりの一言に近くはございませんでしょうか」と答えた。

dsupplying.hatenadiary.jp

 孔子は歴史を紐解いて、こう語ったのだろうか。不善を為す国はいずれ滅びると。孔子以降の歴史においても、それはまた同様なのだろう。人が悪とみなすようになれば、時間はかかるかもしれないが、それはいずれ自滅していくのかもしれない。

 

 

遠退く「核なき世界」

 米国は特別チームを設立して、ロシアによる化学兵器の使用などに備えているという。暴挙に備えて、準備しなければならないとはなんとおぞましいことか。しかし、こうした措置がなければ、ロシアを真似ようとするものたちへの抑止にもならないのかもしれない。また、生物・化学兵器にとどまらず、想像もしたくないが、核兵器の使用にも発展してしまうのかもしれない。

「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」(「子路第十三」23)という。

君子は、和合するが雷同しない。知識人は雷同するが和合しないと意味する。

dsupplying.hatenadiary.jp

「雷同」とは、考えもなく他の説に同調することをいう。時して、人は何かに魅せられ、他者の意見を無条件に受け入れ、盲信してしまうことがある。正邪を見分ける良心を育まなければ、世界中が大量破壊兵器で満ち溢れることになりかねない。

 戦争を止めなければならない。「核なき世界」を目指さなければならない。ロシアによって、今それが揺らいでいる。