「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【将来不安と賃上げ】賃上げを請う政府に、企業は応えるのか ~ 炉辺閑話 #95

 

 春闘が始まったそうです。賃上げがクローズアップされる中、今年の春闘は例年とは違う展開となるのでしょうか。

 国内主要企業100社に今年の賃上げについて、春闘がスタートする前に、NHKが実施したアンケート調査では、ベースアップを行うと回答した企業は5社で、その多くはまだ「未定」や「検討中」と、企業の慎重な姿勢が浮き彫りになったといいます。

100社アンケート ことしの賃上げ 企業側の慎重姿勢浮き彫りに | 春闘 | NHKニュース

 NHKによれば、国内景気の現状について「拡大している」とみる企業が65社に上る一方、オミクロン株の感染急拡大や原材料価格の高騰などを懸念する企業も多いといいます。景気回復の先行きが見通し難くなっていることが企業の慎重姿勢の背景になっているようです。

 

 

値上げ、それから賃上げと首相はいうけれど

 国会論戦も始まり、たびたび「賃上げ」が言及されているようです。

物価上昇、「良い悪い」という線引き難しい=岸田首相 | ロイター

 ロイターによれば、首相は、高騰している原材料価格の転嫁が足踏みして、賃上げが行われない悪循環は脱しなければならないとの考えも述べたそうです。その上で、「価格転嫁の施策パッケージを用意し、関係者が努力することで(転嫁が)行われるよう進め、そのうえで賃上げが行えるよう税制などで賃上げの雰囲気を作りたい」と答弁したそうです。

 正論のように聞こえますが、その通りのステップで進めて、賃上げにつながるのでしょうか。そうできない事情や動機が企業側にあるのではないでしょうか。もう少し答弁に工夫があってもよさそうです。

論語に学ぶ

「憤せずんば啓(ひら)かず、悱(ひ)せざれば発さず。一隅を挙げて、三隅を以て反せずんば、則(すなわ)ち復(ふたた)びせず」と、「述而第七」8にあります。

 孔子の教育の方針を表明した章といわれます。詰め込み反対、被教育者の内発性の必要性を説いているといいます。

「憤する」とは、いきどおることではなく、心がいっぱいに膨れ上がることを意味し、そうなって悩んでいるときに始めて「啓く」、つまり導いてやる。

「悱」とは、いいたいことが口に出かかっていて出ないこと、そのときになって始めて「発する」、つまり教えてやる。(出所:論語 桑原武夫

 

 

 桑原武夫によれば、「ものには四つの隅があるそうですが、その一つだけを示してやると、あとの三つの隅にも反応して答えてくるはずだが、もしそうならない場合は、相手がこちらの教示をまとまって受け取る準備ができていないのだから、しばらく見捨てて、同じ教えを繰り返しはしない」との意味だといいます。

dsupplying.hatenadiary.jp

 さらに、「のどのかわいていない馬に水を飲ますことはできない」、「問題を持たないものに、問題の解き方を教えることはできない」といいます。

「将来不安」をどう解消するのか

 原材料費など物価が上昇、企業での負担は増えコスト高が強いられる、その上、さらに人件費を上げでは荷が重すぎる。背中を強く押してくれる誘因があればいいのでしょうが、賃上げ税制による法人税減税ではどうにも賃上げのモチベーションにまでは至らない。それよりは、値上げしたとき、消費者や取引先が先々を含め認めてくれるのか一抹の不安がよぎる。まして、個社で対応したところで、多くの企業もそうしなければ、景気は回復せずに、重荷だけが残る。

 NHKによれば、専門家は「物価が上がっている中、それに合わせる形で賃金が上がらなければ家計の実質的な購買力は下がってしまう。このタイミングでの賃上げは景気回復のために非常に重要なポイントだ」と指摘しているといいます。

 

 

 「憤せずんば啓(ひら)かず、悱(ひ)せざれば発さず

 孔子の言葉ではないですが、正論ばかり主張するのでなく、政府が的確に導くことができれば、いいのかもしれません。

「将来不安」が常に奥底にあり、それが足枷と長く言われています。「この先どうみても、景気は持続的によくなっていく」とみながそう思えるようになれば、不安は解消していくのではないでしょうか。値上げ在りきなのでしょうか。