「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

世界10大リスクと米中対立、対立は激化しないとはいうけれども

 著名な国際政治学者イアン・ブレマー氏が率いる米調査会社のユーラシア・グループが年頭、2022年の「世界の10大リスク」を発表した。

 1位に中国における「No zero Covid」(ゼロコロナ政策の失敗)を挙げ、それによって世界経済が混乱に陥る事態になると予測、2位には、「テクノポーラーの世界」、巨大ハイテク企業による経済・社会の支配があがり、偏ったアルゴリズムが混乱や暴動を引き起こし、株式市場に影響を与え、何十億人もの人々が陰謀論に振り回されると指摘したそうだ。

新型コロナ: 22年の10大リスク、「中国のゼロコロナ失敗」が首位: 日本経済新聞

 日本経済新聞によれば、報告書は冒頭、米中という2つの大国がそれぞれの内政事情から内向き志向を一段と強めると予測、戦争の可能性は低下する一方で、世界の課題対処への指導力や協調の欠如につながると指摘しているそうだ。

 

 

 そうはいえども、米中対立は激化の一途をたどっていないだろうか。

 かつて米ソが激しく対立する冷戦時代があった。価値観を共有する西側諸国が、共産圏への技術流出を防止するため、ココム(対共産圏輸出統制委員会)という貿易規制を設けた。冷戦が終結し、この組織は94年に解散したが、再び同じような動きがあるようだ。

【独自】対中国「現代版ココム」に発展も…先端技術の輸出規制で日米が新たな枠組み検討 : 経済 : ニュース : 読売新聞オンライン

 読売新聞によれば、中国が他国から輸入した製品などを自国の技術開発に生かし、経済力や軍事力を強化することを警戒しているという。米国の半導体設計ソフトが中国の兵器開発に利用されていると米議会が批判し、日本やオランダからの半導体製造装置の輸出が、中国の生産力強化につながっているとの見方もあるという。

 冷戦時代は、資本主義 vs 共産主義というようなイデオロギー対立であったが、今回の対立の背景は何なのだろうか。

 米中どちらが世界No.1になるのか、その雌雄を決する争いのようにも見える。それをまた民主主義と権威主義の対立に置き換えていないだろうか。

 

 

 ベルリンの壁が崩壊し、資本主義が勝利宣言した。しかし、その後の世界ではグローバル化の進展とともに、格差が拡大、生態系が破壊されていった。格差拡大は分断・対立を助長し、保護主義、一国主義の台頭を許した。一方、中国はグローバル化の中で世界の工場となり、大きく成長した。そして今、その米中が貿易で、先端技術で対立するようになった。しかし、世界経済は密接に結びつくようになり、現実問題として、中国抜きの世界は考えられなくなっている。

「世界は中国なしでは生きられないし、中国も世界なしでは生きられない」

と、経団連はいう。そして、対中関係の要諦は「競争と協調」にあると指摘する。経団連が願う理想に向かうことはあるのだろうか。

論語の教え

「仁 遠からんや。我 仁を欲すれば、斯(すなわ)ち仁に至る」と、「述而第七」29にある。  

 「仁」は最高の徳、だからといって決して高遠無比、手の届かないところにあるものではない。自分が本気でそれを欲求しさえすれば、「仁」はたちまちここに現前すると、意味する。

dsupplying.hatenadiary.jp

  孔子が生きた春秋戦国の世にあって、弟子を励まして、「仁」に至らしめようとした名文句であると、桑原武夫が解説する。

 論語においては「仁」を最高の徳とする。「仁」に根差せば、戦国の世もやがて収まっていくと、孔子は考えたのだろうか。

「仁」は、至難でもなければ安易でもない。それを現前せしめるのは意志の志の問題だとする。

「仁は遠い、しかし、それだけにそれを欲求する熱意が強ければ、たちまちに現前するのである」。

 世界の為政者はどれだけ「仁」の徳を身についているのだろうか。

 かつて米ソは欧州を挟んで対立した。どこか遠い世界での出来事に思えた。今は米中が対立する。どうみても、日本を挟んでの対立のように見えてしまう。どちらか一方に組することがいいことなのだろうか。兎に角、これ以上対立すべきではないのだろう。安易な選択をして欲しくないと願うばかりだ。