「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

いつまでも利益第一優先のままでいいのだろうか、ある会社の社長年頭あいさつから ~ 炉辺閑話 #87

 2022年が始まり10日あまりが過ぎました。オミクロン株がもの凄い勢いで拡大し、少々心配にもなります。

 この波を越えれば、社会全体が良い方向に向かうのでしょうか。

 2022年、良い方向に向かうという予測がある一方で、危機的な状況を迎えるとの予測もあるようです。脱炭素を巡る競争が激化し、それとともに技術競争もまた激しさを増しているようです。ここ最近では、化石燃料から投資資金を引き上げるダイベストメント(投資撤退)の動きも拡大し、この5年で2倍になっているそうです。こうした環境が、もしかして危機的な状況を生み出すことになるのでしょうか。乗り遅れてしまったら、たいへんなことになりそうです。

 

 

 日本製鉄の橋本社長が、社内向けの年頭挨拶で、「総合力世界No.1へ復権し、社会から信頼され、活力と創造性にあふれる、真に強い会社へ発展していくことを、将来ビジョンとして掲げたい」との考えを示しました。

代表取締役社長 橋本 英二 2022年 年頭挨拶(社員向けトップメッセージ) 本年を力強い発展のスタートの年としよう!

 そのためには、2つのことを実現していかなくてはならないといいます。

「2025年に向けて、連結事業利益6,000億円を確実に出す収益力を確立し、長期的には、「グローバル粗鋼1億トン、連結事業利益1兆円」の体制を構築し、また、「ゼロカーボン・スチールで世界をリードすることによって、新しい時代におけるトップメーカーとしての確固たる地位を確立する」ことをあげています。

 特に利益の上積みについて、強い意志を示し、「安定生産、設備エンジニアリング力・設備管理力の強化、ひも付き価格のもう一段の是正、そして、構造改革の断行により、実現を図っていく」と述べています。

 社内に対する年頭挨拶、目標の与え方としてどうなのでしょうか。社会の流れと合致しているのでしょうか。

 

 

 顧客から利益をむさぼるのでなく、生産性、効率性を競い、それを原資として、顧客に低価格を提供するのが本来であって、橋本社長が述べられた「ひも付き価格のもう一段の是正」と対立するように聞こえます。

 最近の社会の風潮なのかもしれませんが、いかに独占的な利益を得ることが目的となり、イノベーションの名の下、結局、覇権争いをしているようにしか見えないところがあるように感じてしまいます。

 本心は計りかねます。世界で求められているカーボンニュートラル実現のためには、「ゼロカーボン・スチール」から逃れることはできないことを理解したうえで、その膨大な開発費を捻出したいのが本音で、それが社員向けのメッセージでは違う表現になったのでしょうか。

論語の教え

「其の以(もち)うる所を視、その由(よ)る所を観、其の安んずる所を察すれば、人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや、人焉んぞ廋さんや」と、「為政第二」10にあります。

「ある人を知るためには、その言動に注目し、次にその原因、動機を観察し、さらにその行動によって、その人の心のあり方がどのように落ち着くかを洞察するのがよい。そうすれば、当の本人が蔽い隠そうと思ったところで、隠しおおせることなどできない」との意味です。

dsupplying.hatenadiary.jp

 日本製鉄の社長の言動からはどんことが推察できるのでしょうか。

「利に放(よ)りて行えば、怨み多し」(「里仁第四」12)といいます。

「利」を「放(放縦)」ほしいままにすると怨まれることが多くなるとの意味です。そのためには、「利」を元来の意味である、公益、公利 (国家、社会のため)に使っていかなければならないとのことなのでしょう。私利私欲であってはならないのです。

 また、「利は義の和なり」ともいい、「義」、正しき道の総和が利益になるということでしょうか。「義」とは、正しきことを実践していく過程、プロセスのことをいいます。その時代時代に求められていることを正しく実践していくことなのでしょう。

 

 

 日本製鉄はこれまでに優れた技術を数々開発し、保有している会社ではないでしょうか。技術をさらに進化させ、本業の製鉄業の工法をさらに効率化させていく技術力もあるのでしょう。 そうすることで価格低減の原資も確保できるのではないでしょうか。

 また、保有する様々な環境技術を使い、横へと展開していけば、様々な産業での環境改善が進み、社会貢献し、そこから利益を得ることもできそうです。

 本業を大事にする会社であると同時に、保有するすべての技術を有効活用、事業化できる会社でもあって欲しいと感じます。