米アップルの時価総額が一時、3兆ドル(約340兆円)を突破し、東証1部全体の時価総額の半分に迫ったといいます。そのスピードにも驚きます。それだけ信頼を得ているということなのでしょうか。
IT、ハイテク分野でリスキーでありながら、経営の安定性があって、なおかつ着実な成長が見込めるということなのでしょうか。それにしても、アップル1社で東証1部全体の半分の価値には驚愕です。日本企業のだらしなさが際立ってしまいます。
Apple時価総額、一時初の3兆ドル 東証1部の半分に迫る: 日本経済新聞
アップルの成長力を重視する投資家は、世界で10億台以上稼働する「iPhone」の動向に注目する。利益率の高い高機能端末への買い替えを促しつつ、音楽配信など端末利用者向けサービスで稼ぐ事業モデルが評価されてきた。ここに新たな成長ストーリーが加えられようとしている。水面下で開発中と噂される拡張現実(AR)や仮想現実(VR)端末、自動運転EVだ。(出所:日本経済新聞)
日本の日本のハイテク企業が躓き成長路線を歩めないのを尻目に、アップルは安定性をも手に入れ評価される。経営の差ということなのでしょうか。
不正、信頼を築けない日本企業
国内では、東芝が原子力で躓き、不正会計に揺れ、未だ経営再建への道筋を描き切れていないようです。三菱電機も品質不正が発覚、再建はこれからというところでしょうか。同じく電機のパナソニックもかつての輝きを失い、成長路線を模索し続けています。
国にあっては、デジタル化が全く進まずに統計データでミスを犯すような始末です。そればかりでなく、あれだけの大事故を起こした原発問題も解決に至っていません。
問題解決力の乏しさ、不正に手を染めてしまう体質、こんなことが露呈するばかりではとても信用を得ることはできません。
論語の教え
「曾子曰く、吾 日に吾が身を三省す。人の為に謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしか」と、「学而第一」4にあります。
「人の為に忠実、まごころを尽くし、また友人には信義を尽くし、聖人の道を修めるに汲々としてさえ居れば、人は怨みに遠ざかることができ、決して他より怨まれるものでは無い」と渋沢栄一は、この章の意味を解説します。
「習わざるを伝えしか」を栄一は、「伝えて習わざるか」と読み、「まだ十分に学習していないことを他人に伝えていないか」と意味する古注に従わず、「他より教えられていながら、ただ聞くのみで、学習を怠たり、実行しているようなことは無かろうか」と解釈します。
「一日に三度我が身を省みるというほどまでには参らなくても、人の為に忠実に謀ってやらねばならず、友人に対しては信義を尽くさねばならず、また孔子より教えられた道を閑却せず、常に修めて行かねばならぬものであるといふ事を忘れずに心懸けて居る」と栄一はいいます。
かつての日本を学習した米国
かつて日本に追い抜かれる危機に瀕した米国は、日本企業の経営手法を徹底的に学んだといわれています。トヨタの生産方式からリーン方式などの経営手法を編み出し、今ではGAFAM、テスラのCEOたちは一様にそうした知識を身につけ、応用しているといわれます。
EC書店であったアマゾンは、クラウドサービスや物流を手がけるようになり、今では次々に新しいハードウェアを生み出しては新たなサービスを模索しています。OS企業だったマイクロソフトはいまではPCなどハードウェアも手がけるようになり、一方で脱炭素の研究を重ねて、そこから新たなサービスを始めようとしています。アップルは、アップルウオッチでヘルスケア産業にも触手し、そればかりでなくEVにも進出しようと慎重に検討しているようです。
一方、日本はそうした米国の成功事例を模倣するばかりで、そこに学び、学習することがなく、ただものまねをするだけに終わっているのかもしれません。すぐに躓いてしまうことになってしまう当然なことなのでしょう。経営者の差ということなのかもしれません。
ミスを活かしたジョンソンエンドジョンソン
「君子 重からざれば、則ち威あらず。学びて則ち固ならず。忠信を主とし、己の如かざる者を友とする無かれ。過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」と、「学而第一」8にあります。
ジョンソンエンドジョンソンは1982年、第三者がタイレノール(解熱鎮痛薬)に毒物(シアン化合物)を混入し、7人が死亡するという事件に巻き込まれました。
同社はすぐにアメリカ全土から全てのタイレノールを回収し、容易に開封できない容器に改良したそうです。回収には2,500人の従業員を動員し、1億ドルの費用を掛けたといいます。
「J&Jは費用を度外視して、正しいことを自発的に行う企業だというイメージを確立することに成功した」と、ワシントン・ポストが論評したそうです。そして、今もまたジョンソンエンドジョンソンは、アップル、マイクロソフトと並んで、S&P500構成銘柄で最高位の格付けを付与されているといいます。
「学びて則ち固ならず。忠信を主とし、己の如かざる者を友とする無かれ。過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」
考えが固定化しないように常に学習し、顧客に対してはまごころを第一に接し、約束を違えず、自分より劣ることは教訓とし参考にしない。過ちを犯したなら、ミスはミスとして素直に改心して改めるというのが現代的な解釈でしょうか。
ミスを犯し成長できない企業はこれと真逆のことをやっているように見えてしまいます。流行りのマネジメント手法ばかりでなく、「道理」も学んだ方が良さそうです。実際はどうなのでしょうか。