「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

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「あまりにも怠慢」、「ものが言えない風土」の三菱電機の再生はあるのか ~ 炉辺閑話 #78

 

  三菱電機が、発覚した検査不正などを検証する外部委員会の「調査報告書」を公表した。その要約版について確認したが、その内容に驚く。朝日新聞によれば、委員長の山口利昭弁護士が「日本のものづくりへの信頼を揺るがす問題だ」と指摘したという。

 こうした報告書においては、問題点を強調して書かれることが常なのだろうが、それにしても指摘内容があまりにも基本的なことを糾弾しており、問題の根深さ、大きさを感じとれる。また、萩生田経産相は「やるべき検査をしていなかったのはあまりにも怠慢」と厳しく指摘し、原因究明や組織改革を進め、信頼回復に取り組むよう求めたという。

三菱電機の検証委、悪質と指摘 「日本のものづくりの信頼揺るがす」:朝日新聞デジタル

報告書で「管理職レベルの社員が長期間にわたって品質不正行為を自ら実行、または黙認していた極めて悪質かつ反倫理的な事案」だと断じた。

経営責任については、3回の「総点検」があったにもかかわらず不正を見つけられなかった2016年以降の歴代社長ら14人について認定した。山口氏は「品質不正の問題が会社自身の信用を毀損(きそん)する重大な問題に発展するリスクだという認識が甘かった」ことなどを理由に挙げた。(出所:朝日新聞

 

 

「ものが言えない風土」、倫理観や規範意識の低下

 三菱電機が公表した報告書(要約版)には信じ難い文言が並ぶ。「規定された手続により品質を証明する姿勢の欠如と「品質に実質的に問題がなければよい」という正当化、誤った正当化が横行していた背景には、顧客との約束を守る、法令や規格を遵守するといった、ビジネスの根幹に関わる倫理観や規範意識が低下していたという事実も存在していた」。

「長崎製作所の上層部は、帳尻合わせや自己保身に走る人しかいなかった」。少なくとも言えることは、長崎製作所の管理職層と担当者との間で信頼関係が成立していなかったということであり、そのような状態では、管理職が現場の問題を把握することができないことは明らかである。

三菱電機においては、歴代の執行役社長が拠点を定期的に巡回して従業員と直接対話を行うこと等に取り組んでいるが、「ものが言えない風土」を是正しない限り、「ものが言えない」と考えている多くの従業員の声を拾い上げることはできないことに留意して、経営陣が、その本気度を示して、組織風土の改革を推進していく必要がある」。

 同じく三菱電機から公表されて再発防止策について目を通してみる。実態が正確に分かっていないので何とも言い難いが、まだ一抹の不安も感じる。この先の経過を見ていくしかないのだろう。

 一時は大手電機メーカに身を置き、その競合がこんな実態であったかと知ると、残念でならない。たまたま扱った製品の顧客が海外のPCメーカで、製造現場が品質システムに従い正しく運営されているかを定期的に監査する仕組みがあり、洗いざらいにチェックを受け、不正とみなされれば、そこで取引が終わるというこうとで常に緊張を強いられていたことを思い出す。一方、取引のあった日本の電機メーカ(三菱とは取引はなかった)はそこまで厳しいチェックがない。文化の差なのかもしれない。もしかしたら、そこから甘えが生じたりするのだろうか。

論語の教え

子路曰わく、仕えざれば義無し。長幼(ちょうよう)の節は、廃す可からず。 君臣の義は、之を如何ぞ其れ之を廃せん。其の身を絜(いさぎよ)くせんと欲して、大倫(たいりん)を乱る。君子の仕うるや、其の義を行なう。道の行なわれざるは、已 (すで)に之を知れり」と、「微子第十八」7 にある。

 弟子の子路孔子のお供をしていて遅れ、隠者に出会い、その隠者の子息に語った言葉である。

「主君に仕えないと、君臣の契りがなく、君と臣とが守る倫理が生まれないで終わる。長と幼とが守る礼節はなくてはならないものである。君臣の倫理、これをどうしてよいものであろうか。乱世に身を汚さないという小倫理を守ろうとするのは、君臣の大倫理を乱すこととなる。君子 教養人が出仕しようとするのは、この大倫理を行なわんがためである。乱世のため道義が行われていないことは、重々承知の上である」との意味。

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 こうした道徳の言からしても、「ものが言えない風土」、如何に三菱電機の倫理が乱れていたかが理解できる。

 米系PCメーカとの取引ではある意味、品質にコスト、納期と、常に「監視」されている状況でもあった。しかし、それはコミュニケーションの起点でもあり、より良い「品質」「コスト」「納期」を協力して作り上げていくこと活動にもつながっていたと思われる。さらけだすことは恥かもしれないが、さらけだすことで良い方向に向かうこともある。

「忠恕」、自己の良心に誠実になり、顧客に対し思いやりを持って接する、それが基本なのであろう。地に落ちれば、あとは上昇があるはずである。早期の再生を願うばかりである。