「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

なぜ5000トンも廃棄しなければならないのか、首相までが呼び掛ける生乳廃棄問題 ~ 炉辺閑話 #77

 

 生乳が5000トン廃棄されるの可能性があるといい、首相が「牛乳をいつもより1杯多く飲んでいただく、料理に乳製品を活用いただくなど、国民の皆さんの御協力をお願いいたします」呼び掛けた。

 ローソンが年末年始の2日間、ホットミルクを半額の65円で販売、この他にも生乳大量廃棄回避のために協力する動きが見られる。ただ廃棄してしまうのであれば、こうして協力し、廃棄を少なくしようとすることはいいことなのだろう。

 協力を呼び掛けた業界団体Jミルクはこの協力の申し出に、どう返礼するのだろうか。乳製品は関税で保護されている産品であり、そのことを忘れてはならないのだろう。

 

 

 渋沢栄一が明治期、米価の動きを批判していた。

米価が下落した――これでは農民も地主も困るからとして、釣上げ策やら調節策に苦心して切り騒ぐ。そうこうしているうちに、今度は米価が反対に高騰して高くなる――これでは一般が生活難に追われるからとて、米価の引下げ策を講ずる。(中略)

政府の無理な干渉は却て米価自然の調節力を損なう。米価のみならず何事に対しても、あまり不自然の措置を取る事は益が無いのみか却て害になる。政府の力を以てさえすれば、如何に不自然な事でもこれを為し遂げ得らるるものだと思つたら、それは飛んでも無い料簡違いである。(参考:「実験論語処世談」 渋沢栄一記念財団

 過去に生じたバター不足を端にして、生産量を増やしてきたことが、今回の廃棄の一因であるという。また、それに加え、このコロナ禍と冬休みが重なり、この事態だという。需要予測がそれなりにされていれば、もっと早い時期からそれなりの対処方法もあったのではないかと邪推する。困ったことが起きてから、助けを請うのでは多少虫が良すぎるような気もする。それでも助けていただいたなら、それは何かの形でお返しをしないと「礼」に反するような気がする。

論語の教え

「巧言は徳を乱る。小 忍ばざれば、則ち大謀(たいぼう)を乱る」と、「衛霊公第十五」27 にある。

 さわやかな弁舌に引っかかって道徳心を乱すことがある。小さな正義に乗ってしまうと、大望を遂げることはできないと、意味する。

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 関税で保護されているということを忘れてはならないのだろう。自分たちの業界が利することだけではなく、みながその便益を享受できるようにするのが本来の業界団体の役割ではなかろうか。

 

 

「法語(ほうご)の言(げん)は、能(よ)く従う無からんや。之を改むるを貴しと為す。巽与(そんよ)の言、能く説(よろこ)ぶこと無からんや。之を繹(たず)ぬるを貴しと為す。説こびて繹ねず、従って改めず。吾 之を如何ともする末(な)きのみ」と、「子罕第九」24 にある。

 栄一によれば、この章は、いたずらに人の言を聞くのみにて、自ら省みるところがなかったならば、何にもならぬと戒めたもので、人を教えるには正面から真直に理窟を以て説くのと婉曲に説くのとの二種があるということを意味する。

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 この生乳問題に対する協力は、婉曲的には業界の問題を指摘しているといっていいのだろう。その意を推し量って、業界自ら省るべきということなのだろう。

 値崩れ防止のためには廃棄するしかないと考えるのも自然なことかもしれない。廃棄するくらいなら、何かに役立てようと考えるくらいの気持ちがあってもいいのではなかろうか。その選択次第で、未来が大きく変わることにならないだろうか。