「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

【焉んぞ佞を用いん】9年にもわたって務めた財務相と短命に終わった首相

 

「戦後最長の約9年にわたり財務相を務めてきた麻生太郎氏が、自民党岸田文雄総裁による新内閣発足を機に退任する見通しとなった。首相経験者の麻生氏は国際舞台でも存在感を発揮してきたが、懸案の財政再建はコロナ禍などの影響で進まず、後任に託された」とブルームバーグが伝える。

戦後最長の麻生財務相が退任へ、国際舞台で存在感も財政再建進まず - Bloomberg

日銀の異次元緩和は政府の利払いコストと大規模な財政出動のハードルを引き下げた面もあるが、麻生氏は経済再生と財政健全化の両立を常に主張してきた。

自国通貨建て国債はデフォルト(債務不履行)しないとする現代貨幣理論(MMT)については、「日本をMMTの実験場にするつもりはない」と放漫財政を戒めた。 (出所:ブルームバーグ

 また、麻生氏は国際金融分野で確かな足跡を残してきたとブルームバーグはいう。

 口は禍の元、独特のしゃべり口での発言は時として失言となった。それでも9年間、財務相を続けることができたのはなぜなのだろうか。

 

 

論語の教え

「焉(いずく)んぞ佞を用いん。人に禦(あた)るに口給(こうきゅう)を以てすれば、屡々(しばしば)人に憎まる」と、論語「公冶長第五」5 にある。

 どうして弁才が必要であろうか。他人と交わるとき、弁舌にまかせると、ややもすると憎まれるとの意味です。

「佞」とは、弁才、口才のあること、この言葉自体に悪い意味はない。善佞もあれば悪佞もあるという。

「口給」は「口才」と同じ意味。

dsupplying.hatenadiary.jp

 乱世で権謀術数がさかんな当時の社会では「佞」すなわち「弁舌」のたくみさということは必要な武器で、高く評価されていたのであろうと桑原武夫は解説する。

 

 

 乱世に生きた孔子は、誠意を伴わない口先だけのリップサービスに強い反感を持っていたという。

「弁舌などというものが、何の役に立つのか。口先だけで人を言いくるめようとすると、人に憎まれることが多い」

 今のこの時代も孔子が生きた古代と同じように「佞」が求めれられているのかもしれない。時して失言にもつながったが、その「弁舌」が麻生氏の9年につながったのだろうか。そういう意味で、麻生氏と菅氏は好対照だった。

 この論語にある言葉は、「或(ある)ひと曰わく、雍(よう)や仁なるも佞(ねい)ならず」との問いかけから始まる。

 「雍」、姓は「冉」、名が「雍」、字名は「仲弓」、孔門十哲の一人と言われる。卑しい階級の出身であったが、人柄がよいので孔子に愛され、「雍や南面せしむ可し」(「雍也第六」1)と、君主の地位を与えてもよい人物とまで評価されていた。実際、季氏の宰相になっている。

 菅氏はどんな評価になるのだろうか。「不佞」が命取りだったのかもしれないが、「仁」だったのかは判然としない。ただ、もう少し「佞」があれば長続きしたのかもしれない。